男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

-あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?

誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。

さて、今週の質問【Q】は?

▶前回:ヒールで歩かせない、車道側を歩く…デートの基本を忠実に守る男が見落としていた、重要事項




「太郎ちゃん、私たち本当に結婚するのかな?」

それは、籍を入れる1週間前のことだった。婚約者である綾奈が深刻な顔で、僕を見てきた。

「ん?どういう意味?」
「太郎ちゃんと結婚して、うまくいくのが自信がなくなってきちゃって…正直、籍を入れること、迷ってる」
「え?なんでなんで?」

頭の中はクエッションマークでいっぱいだ。

3年の交際期間を経て、3ヶ月前にようやく婚約したばかり。一度別れたことはあったものの、僕たちはとてもうまくやっていた。

それなのに突然ここへきて「迷っている」なんて言い出した綾奈に、僕は絶望的な気持ちになった。

― マリッジブルーってやつか?

最初はそう思っていた。だが事態は僕の想像以上に深刻だったようで、結局僕たちの入籍は“延期”になってしまったのだ。


「この人でいいのかな…」女が不安になる瞬間とは


Q1:女が婚約直後に抱いていた感情は?


綾奈と出会ったのは、食事会だった。

小柄で華奢な彼女はとても女の子らしい見た目なのに、少し気が強いところが可愛くて、僕から交際を申し込んだ。

この時、綾奈は26歳で僕は29歳。

そして付き合って3年を過ぎた頃。僕は彼女との結婚の意思を固め、プロポーズしたのだ。

「綾奈、結婚して欲しい」
「うん…!!」

2人の行きつけのお店で、シェフや他のお店の人にも協力してもらって成功させたプロポーズ。あのとき嬉し涙を流した綾奈の顔を、僕は一生忘れないと思う。




無事にYESという返事をもらえたので、僕たちは一気に結婚に向けて動き出した。

「綾奈のご両親に、ご挨拶に行かないとねぇ」

綾奈の実家は京都で、僕の実家は都内にある。

「そうだね。いつがいいか聞いておくね。太郎ちゃんのご両親には、いつご挨拶に行けばいいかな?」
「来週とかどう?」
「急だね(笑)。わかった、ちゃんとした服装でいかないとなぁ」

こうしてそれぞれの実家へ挨拶に行き、無事結婚の許しを得て、僕たちは正式に婚約したのだ。

僕の親も綾奈のことをとても気に入り、可愛がってくれた。

「綾奈、今週末忙しい?両親が綾奈とランチしたいんだって」
「私と?もちろん!太郎ちゃんも来るんだよね?」
「うん、行くよ〜」

僕の実家は家族仲が良く、コロナになる前は頻繁に集まってランチやディナーをしていた。今僕は恵比寿に住んでいるが、実家は自由が丘にあるため、夜だけ実家へ食事をしに帰ることもあった。

「実家が近くて羨ましいなぁ。京都だと、帰ろうと思っても新幹線に乗らないといけないし」
「そうだよね」

実家が近いのが当たり前なので、「羨ましい」という感覚がいまいちわからない。ただ、ありがたいことのほうが多いとは思っていた。

「手土産、何がいいかな?」
「なんでもいいよ。強いていうなら、親父は和菓子が好きかな」
「わかった!いい和菓子探して、買っていくね」

自分で言うのもなんだが、僕の両親はいい人たちだ。だから綾奈の手土産がどんな物であれ、気にしないだろうなと思っていた。

実際会ったとき、綾奈が手土産を渡すと母親はとても嬉しそうにしていた。

「綾奈さん、ありがとう。気を使わなくていいのに」
「いえいえ、ほんの気持ちばかりですが」
「この子、掃除とかちゃんとできてる?まったく家事ができないから、よく家に行って手伝ってあげていたんだけど…。綾奈さんがいてくれて、安心だわ」
「いえ、太郎さんはよくやってくれていますよ!」

嘘だった。実は家事はほとんど綾奈がやってくれている。

「綾奈さんさえよければ、いつでも遊びにいらしてね。太郎なんて、毎週末ご飯だけ食べに帰ってきてるから」
「ありがとうございます!」

母親と綾奈が話す様子を見て、僕は幸せな気持ちになった。

― 家族になるって、いいな。

そんなことを思いながら…。


女が結婚に迷い始めた本当の理由は?


Q2:両家の顔合わせをしていないのが問題だった?


だが1つだけ懸念事項もあった。

「太郎ちゃん。両家の顔合わせ、いつにする?」

実はコロナの影響もあって、両家の顔合わせができていなかった。

「そうだよね…。どうしよう。もう少し状況が落ち着かないとできないよね」

最近結婚した友人たちからも、「顔合わせが済んでいない」という話をよく聞いていた。

「そっか。でも結婚するわけだし、うちの両親がちゃんと挨拶がしたいって言っていて」
「そうだよね。でも僕の両親が結構コロナ気にしてるから、東京からは動けないかも。だから顔合わせをするなら、綾奈のご両親に来てもらうしかないよね」
「そっか…。聞いてみるね」

東京に住む僕の両親と、京都に住む綾奈のご両親。僕も綾奈も東京にいるので、来てもらったほうが助かるとは思っていた。

そして両親に聞いてみても、やはり“来てもらいたい”とのことだった。

「やっぱり、うちの両親も東京がいいって。綾奈のご両親、来てくれそうかな?」
「うん、結婚なんだしちゃんと挨拶に行くって」

しかし変異株のニュースが飛び込み、結局顔合わせは延期になってしまった。




「顔合わせは延期になっちゃったけど、仕方ないね。ちなみに太郎ちゃん、結婚式はどうする?いつがいいかな」

結婚といえば、結婚式である。ただこんな時期だし、僕はしなくてもいいかなとも思っていた。

「う〜ん。結婚式、必要かな?時期的な問題もあるし、式はしなくてもいいかなと思ってる」
「え、そうなの?」
「綾奈は式やりたいの?」
「そりゃウエディングドレス着たいもん。私がしたいということもあるけど、親のためにやってあげたいかな」
「親のためだったら必要ないんじゃない?僕たちの結婚なんだし」
「まぁね…。でもせっかくだったら、小さくてもいいから挙げたいな」

正直、面倒なことは否めない。結婚式を進んでやりたがる男性は、どれくらいいるのだろうか。たぶん、あれは女性のためにあるものだと思っている。

「でもお金もかかるしね。綾奈がやりたいなら、もちろんするけど」
「そんな無理にはしなくてもいいけど…」
「一旦、親にも確認してみるね」

たぶん、うちの親は“どっちでもいい”と言うと思っていた。しかし意外にも「結婚式はしてほしい」とのことだった。

「綾奈。やっぱり結婚式やろうか。うちの親がやってほしいんだって」

それを伝えると、綾奈も驚いていた。

「そうなの?じゃあ太郎ちゃんも結婚式する気になった?」
「まぁ親が言うなら仕方ないよね。とりあえず、来年の春くらいで考える?」
「うん、そうしよう!」

結婚式の話までして、ちゃんとコトは進んでいた。

それなのに、綾奈はなぜ結婚に躊躇し始めたのだろうか…?

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女が男に不安を抱いた理由は?