今年は昨年から続くステイホームなどで運動量が減ったことが影響し、ダイエットに意識を向ける人も増えてきました。ところが、効果が出ないというお悩みもちらほら聞かれます。

そこで、美容家の神崎恵さんや女優の谷まりあさんなど、数多くの著名人を手がける人気パーソナルトレーナーの星野由香さんに、悩めるESSEonline読者がダイエットを成功させる秘けつについて教えてもらいました。


パーソナルトレーナーの星野由香さん

やせられない理由は睡眠不足と、間違った考え方。プロが指摘



年が明けるたびダイエットを決意するものの、効果が出ない、もしくはいつのまにかリバウンドしてしまっているアラフォー編集者のMが星野さんに正直に教えてもらいました。

●やせられない人に共通するのは「睡眠不足」。ダイエットする前にまず睡眠から



――コロナ禍でダイエットは、ある意味だれもがチャレンジしていることかなと思います。みんな、食事に気を使っていたり、運動にも挑戦していたりする。でもどうにも成果が見られないという人に共通することってあるのでしょうか?

星野 この1年でよく聞くのが、家にいる時間が長くなって子どもや家族との時間が増えた分、自分のことを考える余裕がなくなっていることですね。これまでのように外でマッサージなどのメンテナンスもできなくなってきたため、自分でどうにかしなきゃいけなくなった。
おまけにストレスも増えて、体に必要な栄養素も奪われてしまいます。発散ができていないから、甘いものを食べる機会が増えてしまって辛いという声はよく聞きます。

なので、まずこういう状況からでもできることは、「睡眠」と答えています。ダイエットで結果が出ない人のほとんどは、睡眠不足だったりします。
人間の三大欲求で一番満たしやすいのは睡眠欲です。この睡眠欲をしっかり満たしてあげることで、食欲が抑えられます。そこから始めるのがいちばん近道なんですね。

――ダイエットを始める前に、まずは睡眠時間を確保するということなんですね。

星野 ほとんどの方は、ダイエットを始めるにあたって、新しいトレーニング器具などを買ったり、流行りのエクササイズを始めがち。でも、続けていくには、まずは今の自分ができることから始めるのが大切です。
たとえば、夜にSNSで「みんな細いな」「なんで私は太っちゃったんだろう」とついつい情報収集の時間に使ってしまうんですが、そこにエネルギーを使ってはもったいない。

気のエネルギーは、1日使える量が決まっていて、年齢を重ねるごとに使える量は減ってしまうもの。さっさと眠って、そんな限られたエネルギーを睡眠に使ってほしいのです。寝ている時間は体のリカバリー、それは食べたものの消化や筋肉の補修などダイエットには欠かせないことを体がしているのです! そのくらい人間にとって睡眠はすごく重要。太ってしまったときこそ、まずは体のリズムを整えていただきたいです。

――SNSなどでダイエットに成功した人やきれいになった人の投稿を見ると、余計に今の自分がみじめに感じてしまいます。たとえば、産後に太ってしまったことで、「戻さなきゃ」と躍起になっている人もいると思います。

星野 産後のママは、出産したときにすごくエネルギーを使っています。出産前の体形にすぐ戻りたいって気持ちはとてもよくわかりますが、出産したという事実は変わりません。出産を経験している人としていない人とでは違います。産前の時間軸に戻る、というのではなく産後である自分の体をどう活かしていけるかを考えていきましょう。そこを自分のなかで整理することが第一歩で、これからは産後からの自分を比べてみてほしい。比べる先を変えることで、長い目で見たときに産前よりきれいになっている人もたくさんいるんです。

●ほぐしながらインナーマッスルを鍛える人気の「ほぐピラ」で理想のボディに



――星野さんは『ほぐピラWORKOUT 「ほぐす」+「ピラティス」がいちばん痩せる!
』(講談社刊)という本を上梓されました。このほぐピラとは、ピラティスの理論に基づいて、体を「ほぐしながら」「鍛えていく」エクササイズなんですね。神崎恵さんをはじめとした著名人の方もこのメソッドを実践して、美しいボディラインをキープされているそうですね。

星野 はい。もともとピラティスというのは、病気やケガによって体の再構築を目指す人のためのリハビリから生まれたものです。ほぐピラは全身のさまざまなエクササイズがありますが、とくに人気なのが「背中ほぐピラ」です。突起のあるローラーなどを使って背中をほぐしながら、さまざまな箇所でそらせたり、丸めたり、捻ったり、横に動かしたりします。
ここで大切なのは、ただ体をほぐすことだけに意識を向けるのではなく、きちんと筋肉も動かして鍛えてあげること。人によってはキツい動きもありますが、動かなくなっている場所に気づくことこそほぐピラの目的です。しかも、背中には自律神経が通っていて、しっかり動きをよくすることによって交感神経と副交感神経のリセットにつながり、いい眠りにもつながるのです。


ほぐピラは、突起のあるものをだけでなく手づりのフォームローラーでもOKです!

――体を鍛えることによって、先ほどおっしゃっていた「いい眠り」も導くんですね。

星野 体からアプローチすることで心も変わっていくのが重要ですね。しっかり体を鍛えていくことで、活動代謝も上がっていきます。たった1回だけでも効果はあって、終わった後に体が動かしやすくなったり、姿勢がよくなったり、ちょっとした変化も実感できるようになるはずです。

――自分の体の変化に気づいていくことが大切なんですね。

星野 エクササイズの回数や、どのくらいやればやせるといったわかりやすいメソッドを、ダイエット界でよく見ると思うのですが、筋肉をどのくらい使えていて、あと何秒できそうか、といった感覚は、プロが見て評価するよりもご自身の感覚が正解なこともあるのです。本人がどれだけ自分の体を認識できているかという感度を高めるのが「ほぐピラ」なんです。実践していけば、自分が動かしづらかった体の箇所がわかるようになっていって、それがどれほど変わってきたかも実感できると思います。

●自分自身に目を向けると1回でも感じられる変化があるはず、それを積み重ねましょう



――ダイエットにおいてはどうしても、体重や体脂肪を減らすことに注力してしまうのですが、そもそもそういった考え方を変えたほうがいいんですね。

星野 数字は一つの指標にはなりますが、あくまで指標だということを忘れて、数字にとらわれてしまっている人は少なくないのかな、と思うんですよね。私がお伝えしているのは、数字にとらわれるのではなく、体のラインや調子にも意識を向けて、自分の中での変化を楽しんでいただきたいということ。
肩が軽くなった、今までできなかった動きができる、といった小さな変化がやる度に出ていると思うんです。その気づきを大切にしていただきたいです。

――とはいえ、どのくらいの期間がんばればいいのか、ある程度の目安がわかるといいのですが…。

星野 女性の体の変化が起きやすいのは7の倍数と言われているので、目安はまず1週間、その先さらに2週間、3週間ごとに変化は起きているはずです。たとえば、おすすめは自分のボディラインの写真、洋服を着た写真を節目節目で記録して比べてみること。特に、ほぐピラをやっていくとその効果の過程がおもしろいんです。

ほぐピラによってインナーマッスルが鍛えられると、途中の過程でアウターマッスルが外側に広がっていくんです。途中の経過で余分な脂肪が目立つことがあります。いったんおなかがぷよっとして見えるんです。でもそれは一時的なもので、さらにインナーマッスルが鍛えられると、徐々にフォルムが変わり、余分な脂肪や老廃物が流れるのに時間がかかるので後からおなかがシュッとするわけです。

変化は全部細かいプロセスの過程です。私はインスタグラムなどで、直近の変化とスタート時との長い期間での変化とを出すことがあります。そして、プロセスが知りたいというクライアントのためには3つ以上の時間軸での経過を紹介します。1日1日の変化を点で例えるなら、点で見ることも大切ですが、時に俯瞰して線となっていることに気づいてもらうこと、そのどちらの視点もダイエットにおいては大事なんです。点を追求することも大切ですが、時に線で見たらおおよそ続けられている、そんなご自分をしっかりと認めてあげることで体はどんどん変わっていきます。

――それは、神崎さんや美ボディをキープされている方も意識されているんですね。

星野 皆さん、日々の体に対する感度は高いですね。神崎さんも「今日は肩かな、体が硬い気がするかな、むくんでいるかな」とご本人なりの感覚をお話しくださいます。自分ではどう感じられるか、いまどこまで感じられてるかな、とボディスキャンも楽しんで行ってください。
分からない! 感じられてない!、とジャッジメントしてしまうと感じ取ることも制限してしまうので、「今はこんな感じ」を積み重ねるために、まずご自分を労りながらほぐピラを実践して、徐々に慈しむような方が増えることを私は願っています。

<取材・文/ESSEonline編集部>

●教えてくれた人
【星野由香さん】



パーソナルトレーナー。学生時代より、人が健康で美しくいるいるための人体構造に興味をもち、西洋医学、東洋医学の両面から体の仕組みを探求。その理論とパーソナルトレーナーとしての実戦経験をもとに、ほぐしとピラティスのムーブメントを融合した独自のメソッド「ほぐピラ」を考案。多くのモデル、女優など著名人のボディを要望通りに変える、今もっとも予約の取れないカリスマトレーナーとしてメディアに引っ張りだこに。