新型コロナウイルスの影響で、1年前とはすっかり変わってしまった世の中。「コロナのバカやろう！」と思っている人は多いはず。そこで今回は、コロナのせいですっかり人生を狂わされたという人のリアルをご紹介します。退職、別居、0歳・3歳・6歳の子供をワンオペ育児、そしてコロナ鬱…旦那の単身渡米で一家がバラバラになってしまった美樹さん（33歳）のお話です。

2020年3月、夫の駐在を機にアメリカに移住予定だった美樹さん。1月末で10年近く勤めていた会社を辞め、1か月の引っ越し準備を終えて、3月から渡米予定だったのですが……。

美樹さん「主人の会社では海外赴任が決まると、本人が先に赴任先に行き、家族は3か月後に帯同するのが恒例。そこで主人は12月末に渡米し、私たち家族を迎え入れるための準備をしていました。家を決めて、家具を揃え、幼稚園や小学校の手続きも済ませて、あとは私たちが来るのを待つだけという状態でした。私は、主人が渡米後、0歳・3歳・6歳の子供のワンオペ育児をしつつ、幼稚園の卒園式の準備をして、職場の引継ぎをして、引越しの準備をするという超多忙な日々を過ごしていました。でもこれも3か月の辛抱だと思っていたのです」

渡米3日前に人生が白紙に…

日本より感染者の広まりが遅かったアメリカ。2月末時点ではそれほど感染者が多くなかったため、渡米はそのままできると思っていた美樹さん。海外引越し用の船便荷物（家具一式）も発送が完了し、あとは自分たちが手荷物で持ち込むものを持ち、約２週間ほど静岡の実家に行き、その後アメリカに出発する予定だったそうです。

美樹さん「家を引き払い、いよいよ渡米。その前に実家でゆっくりしようと思っていました。私たちは必要最低限の荷物を持って、実家での仮住まいを開始。3月頭には主人が一時帰国し、家族みんなでアメリカに渡る予定でした。ところが出入国制限が出始めた関係で主人の一時帰国が中止に。それでも私たちはビザをすでに取っていたので渡米できる状態でした。ワンオペでの渡米はかなりハードなので、実家滞在を短縮して空港近くのホテルに移動。そこから余裕をもって渡米することにしたのです」

ところが渡米3日前に突然会社側から駐在員の家族帯同を中止するという通達が。まさかの渡航キャンセルになりました。

美樹さん「えっ!?ウソでしょ!?とにかく何度も主人の電話で聞き返しました。家もないし、荷物も全部アメリカに送っているんだけど！何度言っても、主人はこの異例の事態での措置だからどうしようもないと言うだけ。今後の目途も立たないから、とにかく自分は単身で赴任になると……。私は不安と怒りと悲しみで、目の前が真っ暗になり、どうしていいかわかりませんでした」

「ひと足先にアメリカ行ってるね」と言って別れた主人とは、もう8か月以上会っていない。

家具がないマンションでワンオペ育児スタート

いきなり先の予定が全く見えなくなってしまった美樹さん。実家に戻ることも考えましたが、祖母の介護をしているし、赤ちゃんがいる3人の子連れで戻るのは迷惑だと考え断念。とりあえず1週間ほど、空港近くのホテルに滞在することにしたそうです。

美樹「アメリカはその後ものすごい勢いで感染者が拡大し、緊急事態宣言が出され、現実的に私たちの渡米は不可能になりました。こうなったら、何とか日本の生活を再構築しなければいけません。とはいえ、家具は船の中、家は退去し、持っている自分の荷物はスーツケース4つ分のみ。もちろん単身で、感染者急増地にいる主人も心配でなりません。もうとにかく今後どうしていいかわからず、毎日夜になると何も手に着かず、子どもが寝静まるとただただ泣いて過ごしました。2〜3日は本当に何もする気になれず。その後、とにかく何か動き出さないとと思い、家探しから始めたのです」

まず、今まで住んでいた八王子駅周辺に小さめのマンションを見つけて引越。6歳の長男を小学校に入れる手続きをして、長女は保育園に一時保育を頼んだそうです。一度発送してしまった船便の家具は、通常3か月かけてアメリカに到着。それを取り戻すとなると、さらに倍近い時間がかかると言われたようで、仕方なく必要最低限の家具や生活用品、衣類もそろえ始めたのです。

美樹「唯一の救いは、0歳の次女が比較的手がかからない子だったこと。それでも3児の育児は目が回る忙しさ。相談相手は昼夜逆転生活をしている主人との電話のみ。引越し先に知り合いはいましたが、外出自粛期間中なので気軽に会うこともできず、息抜きはほとんどありませんでした。もちろんコロナ禍のピリピリした社会の緊張感が私のストレスを加速させました。そして次第にイライラが募り、子供たちにあたる日が増えてしまったのです」

緊急事態宣言で外出自粛、慣れない環境でのワンオペ育児に落ち込みが加速する美樹さん……〜その2〜に続きます。