cpn

写真拡大 (全4枚)

パリの東、北はベルギー国境、南はブルゴーニュ地方にかけて広がるシャンパーニュ地方(正式には、シャンパーニュ・アルデンヌ地方)。ワイン畑の広がる丘陵、中世からの街並、緑に囲まれた美しい村々のあるシャンパーニュ地方へは、実はパリから1時間もかけずに行くことができる。ご存知の通り、美しい泡が立ち上る“シャンパーニュ”を名乗れるのは、このシャンパーニュ地方で造られる発泡ワインだけ。だがワイナリー巡りに限らず、風光明媚で美しいシャンパーニュ地方の魅力は、田園に佇む小さな村々の中に、まるで小さな宝石が散りばめられているかのように、其処ここに見つけられるのだ。その一つには、芸術家との深いつながりがあり、あまたの逸話が各地に残っている。

ブルゴーニュと接する風光明媚なエッソワ村は、印象派の画家ルノワールゆかりの地。18歳年下の妻アリーヌの故郷で、挙式を上げた村でもある。ここにアトリエを建てて夏を過ごしたという家が、2017年夏から一般公開になった。ルノワール・ミュージアムや、アトリエ、彼が眠る墓もある。

写真左)エッソワ村c CRTCA

一方、エコール・ド・パリの代表的な画家である藤田嗣治ゆかりの地は、シャンパーニュ地方のランス。ランスへは、パリから高速鉄道TGVで約45分、シャルル・ド・ゴール空港からはなんと約30分で着く。ここは歴代のフランス国王25人が戴冠の儀を行った町であり、フランス・ゴシック建築の至宝と言われるノートルダム大聖堂はじめ、ユネスコの世界遺産が3つある。ランスからブドウ畑のまん中、エペルネにはシャンパン街道があり、世界的に有名なグラン・メゾンはもちろん、小さな家族経営まで入れるとなんと5,000軒ものシャンパーニュ・メーカーが集まっている。これらの美しい丘陵と白亜(チョーク)カーヴが、2017年に新たにユネスコの世界遺産にも登録された。藤田は、このランスを1959年に訪れ、サン・レミ・バジリカ聖堂(世界遺産)で、光に包まれるというミステリアスな体験をし、同年、ノートルダム大聖堂でカトリックの洗礼を受け、レオナール・フジタとなった。

シャンパーニュ「マム」の社主ルネ・ラルーの協力で、マムの敷地内に建てるノートルダム・ド・ラペ礼拝堂の設計をしたのも藤田で、フレスコ画やステンドグラスなども手がけている。彼の繊細なアートが美しく飾る礼拝堂は、1966年に聖別を受けて、聖なるものとなった。もしここを訪れるなら、5月〜10月は、日本語での案内も受けられるのでおすすめだ。

写真右)ノートルダム・ド・ラペ礼拝堂内藤田が描いたフレスコ画c Carmen Moya

美しき泡のお酒シャンパーニュの故郷は、芸術家にも愛される美しき村々でもあった。

■シャンパーニュ地方観光局 http://www.champagne-ardenne-tourism.co.uk/

取材・文/小野アムスデン道子

<小野アムスデン道子 プロフィール>
世界有数のトラベルガイドブック「ロンリープラネット日本語版」の編集を経て、フリーランスへ。東京とポートランドを行き来しつつ、世界あちこちにも飛ぶ、旅の楽しみ方を中心に食・文化・アートなどについて執筆、編集、プロデュース多数。日本旅行作家協会会員。