「自殺予防総合対策センター」の前に立つ竹島センター長(撮影:徳永裕介)

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自殺に関する報道が過熱化する中、国の機関「自殺予防総合対策センター」(竹島正センター長)は先ごろ、ホームページでWHO(世界保健機関)の自殺報道ガイドラインを紹介し、メディアに注意を喚起した。同センターの竹島センター長は、「年3万人が自殺する時代に、今のように報道をするのがいいのか。もっと別の報道があってもいいのではないか。精神保健の専門家や遺族・NPOなどの当事者の見方を含めて、メディアで研究してもらいたい」とライブドア・ニュースの取材に答えている。

 WHOは2000年に「自殺予防のために マスメディアのための手引き(PREVENTING SUICIDE A RESOURCE FOR MEDIA PROFESSIONALS)」をまとめた。自殺報道により連鎖的に自殺が増えることがあるとする一方で、適切な方法で報道するならば自殺予防に役立つともし、<ぜひすべきこと><してはならないこと>それぞれの原則を提示した。


<ぜひすべきこと>

・事実を報道する前に、精神保健の専門家と緊密に連絡を取る。

・自殺に関して「既遂」(completed)という言葉を用いる。「成功」(successful)という言葉は用いない。

・自殺に関連した事実のみを扱う。一面では掲載しない。

・自殺以外の他の解決法に焦点を当てる。

・電話相談や他の地域の援助機関に関する情報を提供する。

・自殺の危険因子や警戒兆候に関する情報を伝える。


<してはならないこと>

・遺体や遺書の写真を掲載する。

・自殺方法を詳しく報道する。

・単純化した原因を報道する。

・自殺を美化したり、センセーショナルに報道する。

・宗教的・文化的な固定観念に当てはめる。

・自殺を非難する。


 この時期にWHOのガイドラインを紹介した理由について、竹島センター長は3点挙げられるとした上で「自殺に関する報道が一時期に集中しすぎているのではないか。原因を単純化し過ぎていないか。『いじめ自殺』という表現が他の自殺を招いてしまわないか。非常に追い詰められた子どもが、自分が追い詰められている状況を人に伝える方法として自殺を選んでしまうリスクはないのかどうか、心配だった」と話す。

 自殺者数が8年連続で年3万人を超える状況下で、単純化された形で繰り返し自殺報道が行われてることや、子どもの自殺に焦点が当たっていることについても「脆弱(ぜいじゃく)性の高い人たちを痛めつけていないか」と疑問を呈する。

 その上で竹島センター長は「自殺報道によってどのような影響があるか我々も分析しなければいけないが、メディアも考えてもらいたい。メディア・専門家・当事者(遺族・NPOなど)で共同の話し合いを持つことが大事」と話している。【了】

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