松井と横浜をつなぐのはこのウルトラC契約だけではない。側近としてメジャー入り後から松井を支え、ヤンキース、エンゼルス、アスレチックスで常に行動を共にしている広岡勲広報と中畑監督の「接点」である。前出・デスクが話す。

「広岡氏が松井とともにヤンキースに行く時、東京の自宅を引き払っている。日本での住所は、親の実家がある福島県に移しました。中畑監督も福島県出身。実は広岡氏が(スポーツ紙の)巨人担当記者だった頃から、2人は非常に仲がいい。中畑監督は松井が欲しい場合、まず広岡氏に話します」

 ひそかなホットライン。松井が全幅の信頼を置く広岡氏が横浜移籍を提案したら‥‥。シナリオを書くのはやはり、広岡氏しかいないという。前出・メジャー球団関係者が語る。

「松井は常々、『自分を必要としてくれるところでプレーしたい』と言っているわけで、広岡氏は松井に『もうメジャーではオファーがない。必要としてくれたのは横浜DeNAでした』と言わせればいい」

 過去、松井が移籍する際にはいつも、それらしい「理屈」が持ち出された経緯もある。メジャー関係者が続けて言う。

「ヤンキースからエンゼルスに移る時は、『ヤンキースでは(レフトを)守らせてくれなかった。エンゼルスはOKだと言ってくれている』。そしてアスレチックスに行く際には、『初めてメジャーで憧れた球団だった』と(笑)。そういうシナリオで、『中畑さんから熱心に誘っていただいた』と言えばいいんですよ」

 そして、満を持して登場するのが、松井の恩師でもあるミスタープロ野球、巨人軍・長嶋茂雄終身名誉監督(76)なのである。

「いよいよという段になったら、中畑監督と高田GMの2人で必ずミスターを担ぎ出す。『一度戻ってきて、日本球界のために一肌脱いではどうか』と後押ししてもらうんですよ」(前出・デスク)

 たとえ横浜に入団したとしても、「腰かけ」でかまわないのだ。ミスターにまでそう言われたら、松井の心も動かぬはずはない。

 松井はメジャーで10年間プレーすることに強いこだわりを持っているという。一つのステータスであり、

「10年の在籍で、満額の年間約2000万円というメジャー年金を受け取ることができる。あと1年です」(前出・メジャー担当記者)

 その悲願のためにも、「横浜経由メジャー帰還」は有効な秘策だろう。前出・米紙関係者は言う。

「アメリカでは現実的に、マイナー契約を飲むか、代打要員になるかの選択肢しかない。一度アメリカでやると決めた松井は頑固ですが、以前は『日本復帰は絶対にない』と言っていたのが、昨年から『今はわからないかな』と変わってきているのが気になります」

 日本球界での松井のユニホーム姿。人気低迷が叫ばれる今、救世主となるのは間違いない。