日本代表の、コパ・アメリカへの参加が決まった。正確にはJFAが参加の方針を示し、南米サッカー連盟が海外組所属クラブの説得に成功したらという条件付きだが。

ひとまず慶賀すべきことだとは思う。僕はサンフレッチェ広島のファンなので、西川周作や森脇良太や李忠成がコパ・アメリカに行けるのなら嬉しくないはずはない。アルゼンチンとガチンコでやれる機会など、サッカー人生通じてそうあるものではない。

いや、機会そのものは何度かあるとしても、その際に自分の実力・年齢・コンディションが伴っているかはわからない。所属チームによっても左右されうるだろう。代表におけるチャンスというのは、それらの要素を掛け合わせれば非常に小さなものだ。ゆえに代表に懸ける選手の気持ちは、十分に汲みたい。今回は海外組が主体となるが、



http://sankei.jp.msn.com/sports/news/110415/scr11041517240003-n1.htm
＞　南米サッカー連盟は１４日、公式ホームページで７月にアルゼンチンで開催される南米選手権（コパ・アメリカ）への日本の参加を発表した。

＞　日本サッカー協会からの文書によると、日本は海外クラブ所属の１５選手以上の招集を出場の条件に挙げている。日本は海外組主体でチームを編成する方針で、招集には南米連盟が協力する。（共同）


15選手以上の招集とあり、コパ・アメリカの登録人数は22名と記憶しているので、最多でも7選手程度はJリーガーが選ばれるのだと思っている。GKの海外組は川島永嗣と林彰洋だが、林はザッケローニになってから招集経験がない。よって、広島は西川周作を貸し出すことになるだろう。

ご承知のとおり、震災の影響でJリーグは7月にも開催され、コパ・アメリカの日程ともろにバッティングする。最大で5試合の欠場が見込まれる。

そしてこれもご承知のとおりだが、Jリーグが開催されなかった期間も選手・スタッフ・職員・役員への給与支払いは生じるし、オフィシャルショップの運営費やスタッフ人件費、事務所のテナント料や光熱水費や雑費もろもろはすべて発生しており、これらは今のところすべてクラブが負担していると理解する（Jリーグが何らかの補償をする可能性もあり、http://eag.ly/y/AxKRX こういうニュースもある）。

この状況でJクラブに、目玉選手の不在を負担を強いるということは、さらなる経営の悪化に直結するのは確実だ。代表選手はチームの主力なので、その間の収益減や戦力ダウン、勝ち点の損失は確実視される。補償されるとしても、ごく小さい幅にとどまるだろう。

ツイッター上で、「なぜJリーグは代表選手供出に難色を示すのか」という意見が散見された。確かにJリーグ規約5章第88条[履行義務]に、

http://www.j-league.or.jp/aboutj/2009pdf/04.pdf
＞(7)協会から、各カテゴリーの日本代表選手に選出された場合のトレーニング、合宿、および試合への参加


とあり、Jリーグ側に貸し出し義務は存在する。しかし、規約を参照してしゃべっている方は少ないだろう。ほとんどが「見たい選手が見られないから」という視点であるはずだ。

もちろん、Jクラブはバカではない。代表チームがコパ・アメリカに出る意義は大きいことは、理解しているはずだ。とりわけ最も大きいのは、海外における風評被害の払拭である。日本国内にいるだけでは実感しにくいが、すでにこうした事態が進行しつつある。


http://www.asahi.com/national/update/0412/TKY201104120501.html
＞　外務省は１２日、福島第一原発の事故を受け、日本産食品の輸入を規制する国が約５０カ国・地域に上ることを明らかにした。海外での風評被害を抑えるため、冷静な措置をとるよう働きかけている。規制内容の詳細は同省ホームページに掲載している。


信頼できる友人から聞いた話では、スペインの片田舎にある日本料理屋の売上が急減し、「日本産の魚を使っているのか」という問い合わせが多く鳴るという。シンガポールでも多くの日本料理店が危機的状況にある。僕が住む広島でも、あるホテルでは団体客宿泊・宴会キャンセルが相次いでおり、うち3分の2が外国人団体、3分の1が国内の団体による自粛である。ついでにいえば、広島が前泊するホテルも、広島が宿泊キャンセルした分の収益減はしているだろう。

自粛はそのうち元に戻るとしても、外国人の足を戻すのは簡単ではない。日本代表チームがコパ・アメリカに出場し、運営委員会がかつてないほどバックアップしてくれるならば、風評被害払拭に大きく役立つはずだ。「日本の大部分では普通に日常生活が送られている」というアピールになるはずである。

しかし、それとクラブ経営を引換えにはできない。経営判断によって特定のJクラブが代表招集を拒否したとして、その結果としてコパ・アメリカ参戦が霧消しても、それは誰の責任でもない。大震災が悪いのだ。

どうかJクラブを責めないでほしい。いや、おとなしい言い方は止めよう。仮に責めるのなら、「お前のクラブは潰れていい」とハッキリ明言するべきだ。「リーグ開催期間中に代表選手を引き抜く」とはそういうことなのだから。

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