「WBCでもっとも汚い選手」という衝撃的な書き出しで、ニューヨーク・タイムズ紙が千葉ロッテ・マリーンズのサブマリン投手、渡辺俊介を紹介している(3月15日付電子版)。「汚い」というのは、もちろん、1球を投げただけでヒザから下がマウンドの土で汚れることをさしている。

 アメリカにもサブマリン投手はいるが、タンパベイ・レイズのチャド・ブラッドフォードに代表されるように、ほとんどがリリーフで、渡辺のような先発は珍しいという。

 日本代表のもうひとりのサブマリン投手、山田久志投手コーチについても阪急ブレーブスのエースで284勝を挙げ、3年連続でパリーグMVPに選ばれたと経歴を紹介。

 渡辺は、まだ自分のスタイルを模索していたときに、山田の投球を見て「優雅で、息をのむほど美しかった。あれを目指そうと思った」という。同紙は、山田と渡辺がサブマリン投手でありながら先発として成功したのは、若くからこの投法を取り入れ、スタイルを完成させたからだと分析している。

 ロッテ・マリーンズのボビー・バレンタイン監督も「投球モーションが非常に遅いため、球速130キロそこそこでも打者が空振りする。身体のバランスがよく、体幹がしっかりしているからできることだ」と渡辺を高く評価している。

 山田コーチは「俊介の特徴は遅いカーブ。あれはだれにもマネできない」といい、力投型ピッチャーのあとに投げさせたくて代表に選んだという。渡辺は「スピードガンの数字よりも、打者の反応を楽しんでいる。予想以上に速いと思わせて、途中で球が止まるように見えるはず」という。

 しかし、先発としてのサブマリン投手は渡辺が最後かもしれないと山田コーチ。「昔は投手に役割分担がなく、全員が先発で、肩を痛めたりコントロールの悪い投手にサブマリンを教えていた。今はリリーフ専門がいて、スポーツ医学も発達した。なにより、サブマリンを教えられる指導者がいない」