知らなかった! 手取り額を増やす方法5つ

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年収と実際に口座に振り込まれる金額には差があり、実際に振り込まれた金額が「手取り」となることはご存じの方も多いと思います。年収から各種税金や社会保険料が差し引かれた手取り額は、どのようにして計算することができるのでしょうか? ここでは、ファイナンシャルプランナーの根本寛朗さんに、年収からの手取り額をはじめ、社会保険料や各種税金の計算方法について解説してもらいました。また、控除制度を活用して、手取り額を増やす方法についても見ていきましょう。

■年収と手取りの違いと計算方法は?

年収とは、社会保険料や源泉所得税、その他の控除(住民税や積立金など)の金額が引かれる前の「総支給額」のことをいいます。一方、手取りとは、年収からこれらの金額を引いた額を指します。ここでは、年収別に、社会保険料・所得税・住民税・手取り額の計算方法をシミュレーション。また、各年収に占める手取額割合についても解説します。

◇年収別の手取り額の計算方法

各シミュレーションは、以下の想定の基に計算しています。

・東京都在住で、一般の事業会社に勤めている独身の方
・年収のうち、賞与は年2回支給(1回が2ヵ月分、4〜6月以外支給 )

☆年収300万円の場合(社会保険料・所得税・住民税・手取り・年収に占める手取額割合)

年収300万円の場合、差し引かれるのは−43万3,974円(社会保険料)、−5万6,400円(所得税・復興特別所得税)、−11万8,000円(住民税)。手取り額は239万1,626円。 年収に占める手取り額の割合は、79.72%となります。

☆年収400万円の場合(社会保険料・所得税・住民税・手取り・年収に占める手取額割合)

年収400万円の場合、差し引かれるのは−58万9,920円(社会保険料、−8万6,200円(所得税・復興特別所得税)、−17万6,500円(住民税)。手取り額は314万7,380円。年収に占める手取り額の割合 78.68%なります。

☆年収500万円の場合(社会保険料・所得税・住民税・手取り・年収に占める手取額割合)

年収500万円の場合、差し引かれるのは−72万8,934円(社会保険料)、−14万400円(所得税・復興特別所得税)、−24万2,500円(住民税)。手取り額は388万8,166円。年収に占める手取り額の割合は、77.76%になります。

☆年収600万円の場合(社会保険料・所得税・住民税・手取り・年収に占める手取額割合)

年収600万円の場合、差し引かれるのは−86万7,960円(社会保険料)、−20万7,900円(所得税・復興特別所得税)、−30万8,600円(住民税)。手取り額は461万5,540円。年収に占める手取り額の割合は、76.93%になります。

☆年収700万円の場合(社会保険料・所得税・住民税・手取り・年収に占める手取額割合)

年収700万円の場合、差し引かれるのは−100万6,974円(社会保険料)、−32万1,700円(所得税・復興特別所得税)、−37万8,700円(住民税)。手取り額は529万2,626円。年収に占める手取り額の割合は、75.61%になります。

■転職で年収を聞かれたら?

転職における年収に関する質問では、「手取り額」ではなく「総支給額」を答えましょう。手取り額は、控除される税金の税率が地域によって異なる上、通勤交通費なども含まれます。そのため、会社ごとの給与規定と比較しにくいのです。

◇手取りを増やすための方法は?

最後に、年収はそのままに手取りを増やすことができる、5つの控除をご紹介します。

☆ふるさと納税

自治体に寄付をすることで、寄付金額の一部が所得税および住民税から控除されます。原則として自己負担額の2,000円を除いた全額が控除の対象となります。確定申告が必要となりますが、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の申請をすることで、年間の寄付先が「5自治体」までであれば、確定申告をしなくても控除上限額内で寄付した合計寄付額のうち、自己負担額の2,000円を差し引いた額が、翌年度の住民税から全額控除されます。

☆配偶者控除

配偶者がいる場合、配偶者控除を受けることができます。配偶者控除は配偶者の合計所得金額38万円以下(給与の年収で103万円以下)が対象。また、配偶者の合計所得金額が38万円超123万円以下(給与の年収で103万円超201万円以下)の場合は、配偶者特別控除を受けることができます。

☆住宅ローン控除

住宅ローン控除の正式名称は「住宅借入金等特別控除」。住宅の購入や新築、増改築などをして、2021年12月31日までにその住宅へ入居(居住を開始)した人が、住宅ローン控除の対象となります。マイホームを一定の条件のローンを組んで購入したり、省エネやバリアフリーなど特定の改修工事をしたりすると、年末のローンの残高に応じて税額控除されるのです。

この制度の適用を受けるためには、
・所得が3,000万円以下である
・返済期間が10年以上の住宅ローンである
といった要件がありますが、これらにあてはまる場合、10年間、ローン残高の1%にあたる税金が返ってきます。最大控除額(総額)は400万円です(認定住宅は500万円)。

☆医療費控除

1月1日から12月31日までのあいだに、本人または本人と生計を一にする配偶者やそのほかの親族のために医療費を支払った場合、支払った医療費が一定額を超えると所得控除を受けることができます。医療費控除の金額は最大で200万円。控除の対象となる金額は、実際に支払った医療費の合計額から保険金などで補填される金額と、10万円(その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額)を差し引いた金額となります。

☆生命保険控除

生命保険料控除は、払い込んだ保険料を申告すると、払い込んだ一定の金額が所得から差し引かれ、所得税や住民税の負担が軽減されるというものです。会社員の場合、勤務先に「生命保険料控除証明書」を添付した「給与所得者の保険料控除等申告書」を提出すれば、年末調整で控除を受けられます。一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除、それぞれの年間支払保険料に対して所得控除が受けられます。新制度での生命保険料控除額は、所得税は最大で年間支払保険料8万円超で4万円所得控除され、住民税の控除額は最大で年間支払保険料5万6,000円超に対して、2万8,000円所得控除されます。

■これからの人生設計のためにも手取り額を把握しよう

年収からの手取りの計算方法や、手取りを増やすための控除制度についてご紹介しました。人生設計のためには、年収だけでなく正確な手取りも把握することが大切です。節税を意識し、活用できる控除制度がないかどうかも確認してみましょう。

(文:根本寛朗、構成:Hatsumi)

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