鈴木浩介「舞台上で役として自由に生活できるように一生懸命に稽古したい」
放送中のドラマ『スカイキャッスル』で比嘉愛未さん演じる杏子の夫でエリート医師の二階堂を演じている鈴木浩介さん。そこでは俺様夫役だが、コミカルな役から情けない役まで硬軟巧みに演じ分ける名バイプレイヤー。しかし、ご本人は「巧み度0です」と申し訳なさそうな様子。
そこでちゃんと生活している感じが出せたらなと。
「河内弁をしゃべるシーンがあるんですけれど、難しいんです。関西弁のニュアンスに気を取られて相手のことが見えなくなって、目でのやり取りだったり言葉を聞くというような、通常やっている芝居が流れてしまって…反省しているところです」
いま取り組んでいるのは、織田作之助の『夫婦善哉(めおとぜんざい)』から着想を得て劇作家の北村想(そう)さんが新たに書き下ろした舞台『夫婦パラダイス』。演じるのは川辺にあるスナックを切り盛りするママ・信子の、失踪中の夫・藤吉だ。
「生意気だけど姉さん女房の信子さんに頼って生きているような中途半端な人ですが、失踪後は腰が低くなっているし、言葉遣いも変わっていて、キャラクターがまるで違う。失踪前の、そこにちゃんと居て生活している感じと、失踪後に現れたときの不思議な空気感の演じ分けをちゃんとできたらいいなと思っています。(尾上)松也さんや段田(安則)さん、(高田)聖子さんは初日の立ち稽古から、まるでここで暮らしていたかのように居られていて驚愕しました。それってできそうでなかなかできないことだから」
失踪して180度キャラクターが変わった藤吉の身に何があったのか。物語は不可思議な方向へと転がり、ヒヤッとしたり笑えたり。
「まだ理解できていないことが多いですが、まずはやってみるという感じです。そもそも普段から作品や役に対する答えみたいなものって探してないかもしれないです。幕が開いてお客様が入って気づくこともあるし、千秋楽までの間に見つかることもあるし。…たぶんつねに自分のことを疑っているんだと思います。僕が出す答えより、演出家の思い描く人物像に近づけていって、舞台上で役として自由に生活できるように一生懸命に稽古したいというか」
演出の寺十吾(じつなし・さとる)さんとは、これまでも多くの作品を共にしている。
「お芝居のことだけじゃなく、ビジュアル的にどう動いた方が効果的かをしっかり見てくださるんです。僕がアイデアを出せば、より面白くなるような助言をくださるし。たとえ僕が棒立ちになっていてもちゃんと見せ物として成立する作品に仕立ててくださるから、身を委ねていれば大丈夫と安心しています(笑)」
シス・カンパニー公演日本文学シアターVol.7【織田作之助】『夫婦パラダイス〜街の灯はそこに〜』 川辺にあるスナックを切り盛りする信子(高田)のもとに、妹の蝶子(瀧内)が浄瑠璃パンクをするという風変わりな男・柳吉(尾上)を伴い訪ねてくるが…。9月6日(金)〜19日(木) 新宿・紀伊國屋ホール 作/北村想 演出/寺十吾 出演/尾上松也、瀧内公美、鈴木浩介、福地桃子、高田聖子、段田安則 全席指定8000円 シス・カンパニー TEL:03・5423・5906(平日11:00〜19:00) 愛知、大阪公演あり。
すずき・こうすけ 1974年生まれ、福岡県出身。劇団青年座を経て、2007年のドラマ『LIAR GAME』で注目され、舞台やドラマなどで活躍。出演映画『劇場版ドクターX』は12月6日公開、『劇場版 緊急取調室 THE FINAL』の公開も控える。
※『anan』2024年9月11日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・望月リサ
(by anan編集部)