離れて暮らす子どもの役割は?


【メイプル超合金・安藤なつさんと学ぶ!】親の介護は親のお金で? 子どもの「お金」と「時間」は別に確保しよう!

芸人・安藤なつさん(メイプル超合金)は、介護歴20年以上。介護福祉士の国家資格も取得したという彼女とこれから一緒に勉強していくのは、2024年に改正された介護保険法についてです。

親のケアサービスから費用の軽減制度、家の改修や、介護用品のレンタルなどまで、さまざまな公的支援がありますが、すべて申請しないと受けられないんだそう。こうして少し例を挙げただけでも、介護は知らないと損することばかり…!

もちろん親のことも大切ですが、何よりも自分の人生と時間を守るための介護保険を使いこなすノウハウを教えてくれるのは、介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さん。「親が急に倒れて右も左もわからない」そんなときにも不安なく対応できるよう、一緒に学んでいきましょう!

※本記事は安藤なつ(メイプル超合金) 、太田差惠子著の書籍『知っトク介護 弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門 第2版』から一部抜粋・編集しました。

■親の介護での子どもの立ち位置は?

介護はひとつのプロジェクト 子どもの役割は「司令塔」

お笑いコンビ・メイプル超合金の安藤なつさんと、介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんの会話形式でわかりやすく「介護」のリアルと乗り切るコツをお送りします。

CHECK!

・周りを巻き込んだ介護の体制作りをする

・家族ができない介護はプロに任せる

・親の状況を知る。「できること」「できないこと」の確認

安藤なつ(以下、安藤):親の介護って、やっぱり子どもが全面的にやらなければいけないって思ってしまうのですが。離れて暮らしていると難しいような。

太田差惠子(以下、太田):親に介護が必要になったら、介護の体制作りをまず考えます。介護を「ひとつのプロジェクト」と考え、サポートできる人たちをそのメンバーと考えます。

安藤:「ひとつのプロジェクト」ですね。 みんなが親の介護というプロジェクトのために一致団結するってことですね!

太田:参加するメンバーには、まずは、介護の中心を担う「主たる介護者」がいます。通常、両親がそろっていれば、元気なほうの親が担当し、主な役割としては、身体的なケアや精神的なケアを担います。

安藤:元気なほうの親か…。でも介護する親も高齢だとなかなか大変ですよね。

太田:もちろん、すべてを1人ではやりきれません。できない部分を子どもがサポートしたり、プロの手を借りたりなど、みんなで役割を分担していくのです。この人たちもプロジェクトのメンバーなのです。最近は1人暮らしで、主たる介護者が不在のケースも増えています。そんなとき、重要な役割を担うのが「キーパーソン」です。

介護はひとつのプロジェクト


安藤:「キーパーソン」って何ですか? なんだか重要そうな響き……。

太田:キーパーソンの主な役割は、外部との「調整・交渉・手続き」の窓口となり、家族間の意見の取りまとめをする人です。たとえば、介護サービスを利用する場合、申し込みや契約などの手続きが必要になります。またサポートする家族が複数いる場合も、外部との窓口は1つにしておかないと混乱するだけ。こういった役割は、必ずしも身近に暮らしている人がベストとは限りません。離れて暮らしている子どもでもできる役割なのです。

安藤:なるほど! 外部との交渉や調整は、普段仕事をしている子どものほうが向いていそうですね。

状況が変わったら介護体制は見直すこと


太田:親の介護で子どもがやるべきもう1つの役割として、親の介護を「マネジメント」していくことを提案します。

安藤:「マネジメント」とは? タレントのマネージャーみたいですね。

太田:親も子どもも105歳まで生きる可能性があります。いつ終わるかわからない介護を息切れせずに、続けられるように、環境を整えてあげることが「マネジメント」の考え方です。

安藤:環境を整える? 確かにマネージャーは、タレントが仕事をしやすいように環境を整えてくれる存在ですね。介護でも、ヘルパーさんと一緒になって介護の現場に入り込むより、冷静な視点で介護がスムーズにいく環境を整えることが大切なのですね。

太田:まず、マネジメントの手始めとして、親は、何ができて何ができないのかを確認します。親ができないことを自分がサポートできないなら、手を出さずに代役=サービスや制度を探すようにしましょう。

安藤:子どもが離れて暮らしていると、日々の身の回りのお世話のために通うわけにはいかないからサービスを使うことは必須ですね。

太田:適切なサービスや制度を探すためには、情報収集が不可欠です。介護保険制度や便利なサービスは、ここで勉強していきましょう。

安藤:介護保険制度って言われても難しそうで理解できる気がしない! でも弱っている親より子どもが勉強して理解しておくべきですよね。

太田:その通り! たとえば、親の体調が思わしくなく、歩行が難しくなってきた、ということで相談が必要な場合、親は説明に手間取るでしょう。子どもが、代わりに状況を説明して、適切な手立てを段取りする必要があります。

親に代わって状況を理解して、適切なサービスを受けられるように環境を整えていくことが「マネジメント」の役割です。

安藤:わかりました。難しいと嫌がらずに、理解するようにがんばります!

■「親のこと」気づきメモを作ろう

親のことメモ


親の異変を早く察知することもマネジメントのひとつ。「この前の電話でおかしかったな」と思った場合など、感じた異変の内容を日付と一緒に、メモしておくこと。きょうだいでグループSNSを作り、状況を報告し合うのも◎。おかしいと感じたら、病院の受診やサービス導入を検討しましょう。

〜〜〜

介護については「自分が何とかしなければ」と孤独になってしまいがち。

でも実はプロに頼ったり、悩みをシェアすることで最新の情報が得られたり、心や金銭的な負担が軽くなることも。ひとりで抱えこまず、できるだけ周りを頼りたいものですね。

安藤なつ(メイプル超合金)


安藤なつ(メイプル超合金)

1981年1月31日生まれ。東京都出身。2012年に相方カズレーザーと「メイプル超合金」を結成。ツッコミ担当。2015年M-1グランプリ決勝進出後、バラエティを中心に女優としても活躍中。介護職に携わっていた年数はボランティアも含めると約20年。ヘルパー2級(介護職員初任者研修)の資格を持つ。2023年介護福祉士の国家試験に合格。厚生労働省の補助事業『GO!GO!KAI-GO プロジェクト』の副団長を務める。

太田差惠子


太田差惠子(介護・暮らしジャーナリスト)

京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材 。「遠距離介護」「高齢者施設 」「仕事と介護の両立」などをテーマに執筆や講演を行っている。AFP(日本FP協会認定)資格を持ち、「介護とお金」についても詳しい。「Yahoo! ニュース エキスパート」オーサーなどでも活躍中。『親が倒れた! 親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと第3版』(翔泳社)など著書多数。

※本記事の情報は2024年6月現在のものです。法令や条例等の改正などにより、内容が変更になる場合があります。

著=安藤なつ(メイプル超合金)、太田差惠子/『知っトク介護 弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門 第2版』