男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

-あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?

誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。

さて、今週の質問【Q】は?

▶前回:出かける準備が遅い29歳女。化粧に15分もかける彼女に対し、男が指摘すると…




私は、どうすればいいのだろうか。

楽しかった高級鮨デートのあと、素敵なバーへ行った。俊は「タクシーで家まで送るよ」と言ってくれたけど、私は断った。

11月も末になり、すっかり寒くなった六本木を歩きながら空を見上げる。狭い空には、ビル群が今日も煌々と輝いていた。

眠らない街を見上げながら、私はため息をつく。

「一体、どういうつもりなんだろう…」

デートは盛り上がったし、俊が私のことを気に入ってくれているのはわかる。

でも、今日のデートで、私には越えなければならない壁があることが判明してしまった。


Q1:初デートで、男は女をどう見た?


俊と出会ったのは、3対3での食事会だった。

大手総合商社に勤める俊は、今年で29歳になるという。私より2つ年上とは思えないくらい落ち着いている。それでいて、話も面白い。

「由紀ちゃん、飲み物足りてる?大丈夫?」

そう気遣ってくれるのは嬉しいけれど、私のグラスには、まだ半分くらいお酒が残っている。

「俊くん、ありがとう。でも見て、まだ全然あるから(笑)」
「いや、先を読もうかと思って」
「なにそれ、面白いね」

二次会でも俊は常に話を盛り上げてくれて、「この人、モテるんだろうな…」と思った私は、少し遠目から彼を見ていた。

みんなに優しくていい人でカッコイイ俊…。正直脈ナシかと思っていた。でも翌日、グループLINEではなく個別にLINEが来て、まさかのデートに誘われたのだ。

そして2週間後、私たちは広尾の『ラ・ビスボッチャ』で落ち合った。




開放的な、本場イタリアにいるような雰囲気に私のテンションは最初から上がる。

「この前は楽しかったね」
「俊くんって、絶対にモテるよね」

そんな会話から始まったこの日のデート。俊は今日も素敵で、ますます良いなと思った。

「俊くんは、どういう人が好きなの?」
「僕?僕は優しくて精神的に安定している人かなぁ」
「精神的に安定している人?」
「そうそう。この年になると結婚も考え始めるし、家に帰った時に根暗な人だと嫌だなと」
「それはそうかも…」
「由紀ちゃんは?どういう人がタイプ?」

私のタイプもちゃんと聞いてくれる。これは多少脈があるのかなと期待してしまう。そもそも、デートに誘われた時点で、可能性はあるとは思うけれど…。

「優しくて、男っぽい人かな」
「男っぽいって?」
「頼り甲斐があって、決断力がある人。結構グイグイ系の人のほうが好きなんだよね」
「そうなの?じゃあ俺、グイグイ頑張っちゃおうかな」
「本当に、俊くんって軽いよね」

そんな会話をしながら笑い合う。そして目があった瞬間に、「もっとこの人のこと知りたい…」そう思った。




そして楽しく1軒目を終え、2軒目にも行くことになった。

「由紀ちゃん、この後まだ時間平気?良ければ、僕の好きな店があるからもう1軒どう?」
「もちろん!」
「少しだけ歩くからタクシーに乗っちゃおうか」

少しの距離でもタクシーに乗るスマートさ…。ますます良い。

また2軒目で、俊は急に距離感を縮めてきた。

「由紀ちゃん、またご飯行こうよ」
「うん。いつがいい?」
「…じゃあ来週は?」

こんな高頻度で会う約束をしてくれるのは素直に嬉しいし、俊の私に対する熱量が高い、ということ。

― めちゃくちゃ脈アリなんですけど…。

さらに帰り際。私の家の下まで送ってくれた俊は、私がタクシーを降りる間際に急にハグをしてきた。

そして数秒間見つめ合った後…気がつけば、そっとお互いの唇が触れていた。

「…おやすみ」
「おやすみ、由紀ちゃん」

しかもこの日以降、俊は毎日連絡をしてきてくれ、私は次のデートまでかなり浮かれ足だった。


Q2:「彼女がいる」とデート相手に伝える男の心理は?


そして迎えた二度目のデート。私は朝から緊張していた。俊は西麻布にあるお鮨屋さんを予約してくれており、カウンター席でまずはシャンパンで乾杯をする。

「お鮨久しぶりだな〜嬉しい♡」

お鮨も嬉しかったけれど、一番嬉しかったのは、俊がデートにちゃんと良いお店を予約してくれていたことだった。

― 俊も気合が入っているってことだよね?

そう思いながら楽しくデートは進んでいた。でもデートの中盤。トロが出てきたあたりから、話の流れが変わってきた。




「そういえば。俊くんはこんなにも素敵なのに、なんで独身で彼女がいないの?」

デートにありがちな、男女のありふれた質問だった。しかし俊は想定外の答えを言ってきた。

「それが…実は、今彼女がいるんだよね」
「……え?」

一瞬耳を疑う。「彼女がいる」とはどういう意味だろう。

「…ごめん、どういう意味?」
「実は彼女がいて。前回言おうかなと思ったんだけど、言うタイミングを逃しちゃって」
「えーっと……」

なんと答えるのが正解なのだろう。驚きすぎて、言葉が思い浮かばない。

そんな私に対し、俊は話し続ける。

「しかもその彼女から、『一緒に住みたい』と言われていて…うまく逃げているところ」
「それって、別れたいってこと?」
「そうだね。うまくいっているとは言えないかな」

曖昧な返答だし、俊がなにを考えているのかがわからない。

彼女がいるのに、どうして私をデートに誘ったのだろうか。私をどう思っているのだろう。

「でも由紀ちゃんのこと、俺好きなんだよね」




俊から「好き」と言われて嬉しいが、彼女がいると聞くと手放しで喜べない。

「ありがとう…」

その後もしばらく彼女の話を聞き、デートは進んでいく。

せっかく素敵な人に出会えたと思っていた。俊とだったら、交際してもいいと思っていた。

でも俊には彼女がいる…。

これを、どう理解すればいいのだろう。

まだ彼氏と彼女の関係で、結婚はしていないので、私にも十分チャンスはあるとポジティブに捉えることもできる。

それに素直に私に話してくれたということは、彼女と別れる可能性が高いのかもしれない。

ラブラブな状態で結婚まで進む予定だったら、私に話はしないはず…。

「由紀ちゃん、もう1軒行こうよ」
「うん、そうだね」

結局もう1軒行ったあと、家まで送るといわれたけど、冷静に考えたくて今日はひとりで帰ることにした。

でも、この日以降も、俊からは連絡がくるし、私に好意があることは伝わってくる。

俊とは、付き合いたいけれど、このまま会い続けてもいいのか。

「彼女と別れてほしい」ってちゃんと伝えたほうがいいのかな…。

かなり心が揺らいでいる。

そもそも、彼女がいるのに口説いてくる男って何考えているのか知りたい。

▶前回:出かける準備が遅い29歳女。化粧に15分もかける彼女に対し、男が指摘すると…

▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由

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彼女がいるのに口説いてくる男って…