国宝・青不動を祀る京都・東山の天台宗青蓮院門跡・将軍塚青龍殿。ここで6月、高級シャンパーニュのトップブランド「ドン ペリニヨン」のイベントが開催された。

フランスからドン ペリニヨン醸造最高責任者のヴァンサン・シャプロンが来日し、長谷川京子や井浦新などのセレブリティも参加。 12月から順次発売予定の「ドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2009」が一足早く、『NARISAWA』の成澤由浩シェフによる一夜限りのディナーを彩った。


「ドン ペリニヨン」の世界観が体感できるスペシャルイベントに密着!

「ドン ペリニヨン レベレーションズ 2023」と名付けられたこのイベント。開催は世界で2か国のみに限定された。ヨーロッパはイタリアのベネチア、アジア・アメリカは日本の京都で開催され、各国から100名ほどのシェフやプレス、セレブリティらが集結。

テーマは「From Matter to Light ~物質から光へ~」。「すべての始まりは自然であり、自然は物質を生み出す。そして、人間の創造力により、物質は変化を経て、光へと昇華する」という、ドン ペリニヨンの創作活動と同じように、物事の本質を見極めることに長けたシェフとして、日本は『NARISAWA』の成澤由浩氏、イタリアは『ル・カランドル』のマッシミリアーノ・アライモ氏が選ばれ、このプロジェクトに招かれた。

あいにく梅雨の季節で空には重たい雲が垂れ込めながら、雨だけはどうにか避けられそうなこの日、「フォーシーズンズ京都」に参集した一行は車に分乗し、イベント会場の将軍塚青龍殿へ。



京都・東山の天台宗青蓮院門跡・将軍塚青龍殿。将軍塚とは、桓武天皇が平安京への遷都の際、都の鎮護のため鎧甲を着た将軍の像をこの塚に埋めたことに由来する。

その将軍塚がある場所に、2014年、移築再建されたのが青龍殿。国宝の青不動を奥殿に安置し、大舞台を新築。大舞台からは京都市内を一望可能だ。

歴史的で精神性の高いサイトが選ばれたのもドン ペリニヨンならでは。

ベネディクト会の修道士、ドン・ピエール・ペリニヨンがシャンパーニュ造りを極めた場所も、カトリックの歴史的、宗教的、精神的なスポットであるオーヴィレール修道院であった。



そして、ドン・ピエール・ペリニヨンの志を受け継ぐ、ドン ペリニヨン醸造最高責任者のヴァンサン・シャプロン氏が登場。

青龍殿の中では、ドン ペリニヨン アッサンブラージュ 2022の創造プロセスがエキシビジョン形式で公開された。

2022年のクリエイションのテーマは“即興性”。「あまりに予測不可能な自然に直面したため、柔軟な対応が必要だった」とシャプロン氏。

ドン ペリニヨンの醸造スタッフとまるでジャズセッションをするかのように即興で対話を重ね、2022年のアッサンブラージュを完成させたという。



その後、京都市街を見下ろす大舞台へと移り、宙に浮かんだグラスに注がれたのは、ドン ペリニヨン アッサンブラージュ 2022の即興バージョン。瓶内二次発酵前の非発泡性ドン ペリニヨンである。

泡はなくともそのワインからは、リッチネスとテンション、パワフルさとエレガンスといったドン ペリニヨンらしい逆説的な二面性が感じられたのは驚きだった。



イベントのハイライトは、「ドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2009」に合わせた、成澤由浩シェフによるイノベーティヴな里山キュイジーヌ。

「人と自然の共存という考えは日本特有のものと考えていました」と成澤シェフ。

「しかし、ドン ペリニヨンも自然を尊重して創造されていることを知り、世界的に普遍の概念であることがわかりました。自然と対峙しながら料理を作るのは、短い旬の一瞬を捉えること。こうした儚さにドン ペリニヨンを感じます」。



山から森、川、湖、そして人里〜海へと流れていく成澤シェフのメニュー。

「山」と題された料理は、京都の山の中に棲む本州鹿と、同じ山から採ってきた木の実や果実を組み合わせたもの。写真の「湖」は炭火でじっくりと焼いたスッポンで、成澤シェフは「野生的なエネルギーを表現しました」という。

シャプロン氏も、「『ドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2009』も含め、ファインワインとはすべからくネイチャー(自然)とカルチャー(文化)の融合により生まれます。成澤シェフはそれを深く理解し、里山を通じて、自然と人との緊張関係を料理の中に落とし込むことに成功しました」と称賛を送った。



このイベントに参加したモデル・俳優の三吉彩花さんは、「五感すべてを使って体験する世界観は唯一無二の特別なものでした。『ドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2009』のぐっとくるおいしさに、成澤さんのお料理の味覚だけでなくしっかりと追求されたストーリーのハーモニーが素晴らしかったです」とコメント。

俳優の中村獅童さんも、「成澤シェフの料理が、『ドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2009』を通して、優美な悦びに変化していく過程を、口の中だけでなく、空間やその瞬間の時間を通して感じられました」と述べている。



さて、今回のイベントでお披露目され、12月から順次発売予定の「ドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2009」。

そもそもドン ペリニヨンにとってロゼとは何かと問えば、「修道士ドン・ペリニヨンの精神を最も如実に表現したシャンパーニュであり、ドン ペリニヨンの革新性や自由な創造性、そして限界をさらに押し広げたもの」とシャプロン氏はいう。

「ロゼはよりチャレンジング。まず、フランス最北のワイン産地であるシャンパーニュで、十分に成熟した赤ワインを造ること自体が難しい。第二には赤ワインはパワーがあるので、全体のハーモニーをとるのが困難なのです」。

そこで赤ワインが馴染むよう、ロゼは通常のドン ペリニヨンよりも数年長い熟成期間を必要とする。現行のドン ペリニヨンが2013年ヴィンテージなのに対し、今回、2009年のロゼがようやくリリースされたのはそういうわけなのだ。

温暖で日照量にも恵まれた2009年の「ドン ペリニヨン ロゼ」は、ラズベリーや赤スグリなど赤い果実の芳醇なアロマに、10年以上の熟成がもたらす妖艶なフレーバーが加わり、味わいはリッチにしてクリーミー。

しかしその一方でピュアなミネラル感によるテンションも備え、熟成感とフレッシュさという相反する要素を両有する。たとえるなら、泡をまとった極上のブルゴーニュワインのごとし。

限界を超越した別次元へと、あなたを誘ってくれるロゼ・シャンパーニュである。

文・柳忠之