「そこに落ち着くの？」元彼女たちはモデルや女優なのに…。47歳男が恋に落ちた意外な人物

2023年6月14日 5時2分

恋人や結婚相手を探す手段として浸透した「マッチングアプリ」。

接点のない人とオンラインで簡単につながることができる。

そう、出会うまでは早い。だけど…その先の恋愛までもが簡単になったわけじゃない。

私が、僕が、あの時NGを出したワケ。ここでこっそりと教えてあげる。

▶【Q】はこちら：経営者の女が、アプリで必ず直面する問題。男から“お金がかかる女”と判断されるNG行為とは

Episode03【A】：北条一志、47歳。
男はお金がかかる女が苦手なのではなく、計算高い女が嫌いなだけ。

『KM 34歳
職業：会社経営、ジュエリーデザイナー

はじめまして。人工ダイヤを使ったジュエリーブランドの会社を経営しています。

自分では到底作れない料理をいただけるレストランや、ホテルでリフレッシュすることが大好きで、仕事のモチベーションを保っています。

ずっと1人で走り続けできたので、これからは大切な人と併走したり、休んだりしながら人生を楽しみたいです』

「へぇ…かっこいいなぁ」

興味本位で登録したマッチングアプリ。僕はある女性のプロフィールに目を留めた。

― そうそう。自分じゃ作れない料理になら、いくらでも出せちゃうんだよね。

顔写真ではなく、プロフィール内容で惹かれた女性は初めてだ。

他の誰かが見つける前に急がねば、とすぐにメッセージを送った。

『香織：来週の木曜日20時ですね。楽しみにしています』
『北条一志：お店決まったらまた連絡しますね』

彼女とはサクサクと話が進んだし、会う日取りもすぐに決まった。

その後、僕はすぐに秘書に連絡を入れた。

『北条一志：木曜の20時から2名で焼肉個室。お願いできる？』
『秘書松浦：承知しました！』

― これで、OKっと。

離婚して7年。

元妻は、結婚するまで長いこと銀座で“ママ”として働いていた。

それに僕は“普通のOL”と付き合ったことがない。

出会いは夜の街がほとんど。離婚したあとにできた彼女も、皆、元妻と同じような職業か、モデルや女優の卵だった。

彼女たちは容姿がいい。だからなのか、お姫様気質な子がほとんどだ。

基本的にはワガママだし、お金や手間のかかることもしてもらって当たり前。

だから、食事も旅行も機嫌を損ねると面倒なので疲れることが多かった。

「そんなにいい生活がしたいなら、自分で稼いでみなよ」
「は？なにそれ。それでも男？」

離婚後に一番長く付き合ったモデルとは、最後はケンカばかりをしていた。

直近にデートした、ヨガインストラクターの女性もそんな感じだった。

「北条さん、めちゃくちゃお金持ちなんですよね？日本だけじゃなく外国にも不動産持ってるって聞きましたけど？」
「うん。まぁ、そうだけど」
「だから、焼き鳥といっても予約困難な有名店かと思っていました…」
「いやいや。こういう店もよく来るよ」

彼女は食事に気を使っていそうだし、焼き鳥はヘルシーなので喜んでくれると思っていた。

「はぁ…もういいです」

なのに、彼女はレモンサワー半分を飲んだだけで帰ってしまったのだ。

― だったら、最初から高いメシが食いたいって言ってよ。

彼女が帰った後、僕は車の中で笑ってしまった。

「ラーメンやB級グルメが好き」と言う女性の言葉は、信じてはいけない。

「庶民的なお店に、アドベンチャー感覚で行くのはいいけれど、普段は良いお店に連れていって！ってことですかね」

運転手の宮本が言う。

「うん。たぶんそうだろうな」

ひとりでB級グルメを食べることはあっても、別に男性にご馳走してほしいわけじゃない。

彼女たちの気持ちは、こんなところだろう。

それをわかっていて、わざと大衆居酒屋のような焼き鳥店に連れて行ってしまう僕も、それなりに嫌なヤツなのだろうが。

僕は、20代で不動産の会社を起こし、その後は中古マンションをフルリノベして販売する事業にハマった。

47歳になった今は、主にオフィスビル経営と、都心にいくつか持っている投資用のマンション収入で生活している。

この先一生働かなくても困らないくらいの資産は作った。

年齢も年齢なので、子どもを持つことも諦めている。けれど、やはり心のよりどころは欲しい。

遊び半分で始めたアプリで、これからの人生のパートナーが見つからないだろうか。

そう思った矢先、香織を見つけたのだ。

◆

秘書が予約してくれたのは、西麻布の『うしごろエス』。

ここは店の周りが静かだし、個室も広いので、デートによく使わせてもらっている。

奇をてらった店に連れて行って嫌われるのはごめんなので、誰でも喜んでくれそうな高級焼肉店にした。

「こんばんは、北条です」
「はじめまして。牧野香織と申します」

挨拶を交わし、シャンパンで乾杯する。

香織は、モデルでも女優でもヨガインストラクターでもなく、経営者。

僕は、まず、そこに惹かれた。

会社を1人で立ち上げることは、怖いし孤独だし、勇気と根気がいる。

だから、それだけで人として魅力を感じたのだ。

知らない業界の話は勉強になるし、それを話している時の香織も輝いていた。

「へぇ。人工ダイヤモンドね。ダイヤの鉱山って、紛争の資金源になるとか言うもんね」
「そうなんです！それに人工ダイヤを製造するときのエネルギーって、天然ダイヤを発掘するときの約半分らしくて…」
「おお、すごいね。めちゃくちゃエコじゃん」

香織は、ジュエリーを自らデザインしていることもあって、かなりオシャレだった。

ブランド物ならなんでも欲しがる女性とは違って、ファッションが統一されていたし、華やかなのに、やりすぎていなかった。

「そのサンダル、最近港区でよく見るんだよな。はやってるの？」

足元のキラキラが可愛くて、つい聞いてしまう。

「え？えっと…そうなんですかね。純粋にデザインが素敵なので、買いました」
「確かに。めちゃくちゃ可愛いし、似合ってるね」

そう褒めると、香織は素直に嬉しそうな顔をした。

その反応も新鮮で、愛おしく感じてしまう。こんな素敵な子、放っておいたら誰かに取られてしまうだろう。

「とても、美味しかったです。ごちそうさまでした」
「美味しかったね。こちらこそ忙しいのにありがとう」

僕は、彼女が帰ってしまう前に次の約束を取り付けることにした。

「香織ちゃん、来週はいつ空いてる？」
「え？」
「忙しい？」
「いえ。えっと…水曜と金曜も空いてます…」

香織は、スマホでスケジュールをすぐに確認してくれた。

「じゃあ、水曜にしよう。っていうか、香織ちゃんって、他にデートしてる人いる？いたら嫌だなぁ」

― やばい…つい、本音が。

このおじさん、キモい。と思われたら嫌だな。そう思ったが、香織は予想外の回答をくれた。

「もしかして、私のこと気に入ってくれています？」

それを聞いて、さらに前のめりになってしまう。

「もちろん。もし他に彼氏候補がいても、それはそれで燃えるけどね」

きっと彼女は、自分自身が経営者であることや、一般的な男性より稼いでいることもあって、恋愛がうまくいっていないのかもしれない。

しかし、それは男が軟弱なだけ。

好きなことを仕事にして、それで稼いで、自分のお金で欲しいものを買う。贅沢な暮らしをして、ちょっとだけいいディナーを日常で楽しむ。

それができない男が、彼女のことをうらやましがっているだけにすぎない。

僕は自分でなんでも買える香織にこそ、あえてご馳走したいし、ご褒美をあげたい。

“男に対して、強い欲がない女性”にこそ、男はいろいろしてあげたくなるものなのだ。

香織は、僕が独身に戻ってから初めて、そう思わせてくれた女性だった。