声優・下野紘が声だけでなく、人としてもファンに愛される理由
昨今は空前のアニメブームによって、「声優」という仕事に注目が集まっている。
その声優界の人気をけん引する存在のひとりが、下野紘さんだ。
『鬼滅の刃』の我妻善逸役、『僕のヒーローアカデミア』荼毘役、といった人気アニメへの出演、「CDTV ライブ!ライブ!」のナレーションや、2023年にはライブツアーも開催するなど、目覚ましい活躍ぶりを見せている。
そんな彼の等身大の姿に迫ると、天性の明るさの内に秘めた、声をなりわいとする職人としてのプライドが垣間見えた!
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“ベテラン”と呼ばれる40代。下野さんの心境の変化とは?
「もう宣言しておきますよ、今日僕は家に帰ったら飲みます!赤ワインを飲みます!って、別にどうでもいいですよね、すみません」
そう言って、手に持ったワイングラスを見つめて笑った下野 紘さん。
実はこの日、撮影後に別の現場が控えていたことから、お酒は“お預け状態”。それゆえの宣言だったのだが、声優界きってのフレッシュボイスの持ち主だけに、なんとも耳に心地良い。
『鬼滅の刃』の我妻善逸役や『進撃の巨人』のコニー・スプリンガー役と聞けば、ピンと来る人も多いだろう。
「表情に恨めしさが出ていないと良いんですが(笑)」とスタッフを笑わせつつ、「お料理は、楽しませていただきます」と、カウンターから繰り出されるひと皿ひと皿を実に“いい声”で味わっていた。
声優として不安定だった日々を乗り越え…。下野さんが明かした本音
今春、声優界最大のイベントである「声優アワード」において、“ファンが選ぶ最も活躍した声優”に贈られる「MVS(Most Valuable Seiyu)賞」を受賞。
昨年に続く快挙にもかかわらず、本人は至って謙虚に受け止めている。
「ありがたいことですし、励みになります。でも正直に言うと、そこに甘んじたら、たぶんいろんなものが終わっちゃうと思うので、頭はすぐ次へと切り替えるようにしているんです」
来年、声優デビュー23年を迎えるベテランではあるが、今まで“安泰”と思ったことは一度もないという。
「19歳でデビューして、割とすぐコンスタントにお仕事をもらえるようになり、22歳くらいで一度バイトを辞めたんです。
でも、3年後には再開しないと食べられない状況になり……。派遣バイトとして製本所でひたすら紙を運びながら、オーディションを受ける日々でした。
そんな経験があるので、常に不安はありますね」
それゆえ、今日の撮影のようにゆっくりコース料理を楽しむ時間すら、惜しんでしまうことが多いという。
「定食屋か居酒屋でサッと食べて出る、がいつものパターン。
時間に余裕ができたら、こういうお店でゆっくり過ごす時間を持ちたいと思ってはいるものの、その時間があるなら準備や体調管理に充てた方が良いんじゃないかって、そっちを優先してしまいがちで……。
大人の色気や余裕なんていうのとは、ほど遠いところにいます(苦笑)」
「後輩たちとは楽しくコミュニケーションをとっていきたい」
最近では、自分と同年代の役柄やテレビ番組でのナレーション、朗読劇といった新たなジャンルへの意欲も旺盛だ。
だが年齢を重ねると同時に、後輩への責任を強く感じることも増えたのだとか。
「事務所の中でも圧倒的に先輩という立ち位置になりつつあるので、ちゃんとしなきゃな、って思います。だけど、圧みたいなものを与える人間にはなりたくなくて。
というのも、元々、僕が声優になったきっかけのアニメの役が、全然怒ったりしないキャラクターだったんですよ。周りに何をされても、ずっと笑っているような。
当時、そのアニメを観ながら、僕自身そういう大人になりたいって思ったのを覚えていて。
それに、僕が出会った大ベテランの方々って、皆さんすごく魅力的だったんですよね。年齢に関係なく、現場で一緒にいる人たちを和ませてくれたり、楽しく笑わせてくれたり。
だから僕も若い子たちには、緊張感を与えるような人間にはなりたくないですね」
先日、オーディションで事務所に入ったばかりという高校生と遭遇した時には、こんなやり取りがあったという。
「“あ、本物だ。いるんだ!”って言われたんです。逆に僕の方がちょっとびっくりしながら“うん、そうだね。いるんだよ”って返しました(笑)。
変に緊張されるよりかわいらしいし、なんか妙に心地良かったんですよね」
若き声優の卵たちが追いかける背中の主は、実に飾らない。
最後に、架空のアニメ『東京カレンダー物語』で色気のある男のキャラクターを演じてくださいと言われたら、どうしますか?と尋ねてみた。すると……。
「素の自分だと、ただの“おしゃべりな男”になってしまいますから(苦笑)。何かしらのヒントを探してどうにか落とし込まないとですね。いや、難しいですけど、やりがいはありそうです」
そう言ってあれこれ思案しながら、声色を変えて「東京カレンダー」と呟く。
そこには、いるはずのない架空のキャラが、下野さんの声によって、一瞬、確かな輪郭を見せた気がした。
【後編】 12/26に公開!
■下野 紘さんも唸った、人形町の中華料理店の魅力
■【WEB限定】編集部は見た!下野さんの撮影当日の裏話
■プロフィール
下野 紘 1980年生まれ、東京都出身。2001年、声優デビュー。2016年にはデビュー15周年を記念し、歌手としてソロデビュー。『鬼滅の刃』の我妻善逸役、『うたの☆プリンスさまっ♪』の来栖翔役、『進撃の巨人』のコニー・スプリンガー役ほか、人気作品に多数出演。2023年1月からは3年ぶりとなるライブツアーが控えている。
■衣装
ジャケット 55,000円、シャツ 28,600円、パンツ 52,800円〈すべてANEI/JOYEUX TEL:03-4361-4464〉、その他スタイリスト私物
▶このほか:【裏話あり】松下洸平の本音にミュージックバーで迫ると、甘い笑顔で応えてくれた!
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東京カレンダー最新号では、下野 紘さんのインタビュー全文をお読みいただけます。
声優という仕事へのやりがいと葛藤、そして新たなる挑戦への想いとは?
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【未公開カット!】ワインを片手に、物憂げな表情を浮かべる
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心を込めて…「いただきます!」