一生に一度であるはずの、結婚。

できれば妥協はしたくない。

だが経験者たちは口を揃えて、「どこか妥協した方が良い」と言う。

結婚するには、何かを妥協しなくてはいけないのだろうか?本連載では、その核心に迫る―。

先週は、年収1,000万超えにこだわっていたのに年収800万の男と結婚した女を紹介した。今週は?




【File3:教育格差に悩む男】

名前:敬太
年齢:38歳
職業:貿易関連会社勤務
結婚歴:5年半
奥様の職業:専業主婦

「最初、妻との結婚は反対されていたんです。でもそれを押し切って、無理やり推し進めました」

そう話す敬太さんは、推定身長185cm。容姿端麗で、ネイビーのニットジャケットに白Tシャツ、そしてデニムというカジュアルなスタイルだが、隠しきれない上品なオーラを纏っている。

話を聞けば生まれも育ちも田園調布で、現在はお父様の会社の後継者として経営を手伝っているという。イケメンな上に次期社長 、とまるで絵に書いたような高スペック男子である。

奥様である有香さんとは、結婚してもうすぐ6年。

敬太さんが惚れ込んで結婚したそうだが、写真を見せてもらうと美人で、とても可愛らしい方だった。

「子供にも恵まれ、幸せな家庭を築いています。けれど、子供が生まれたことによってあることが気になり始めて・・・」

結婚に反対された時、ご両親が最も懸念していたのは、奥様の学歴だったという。だが有香さんのことが好きだった敬太さんは、ご両親を説得して結婚。

だが皮肉なことに、その見て見ぬフリをしていたことがいま、夫婦に大きな影を落としているという。


違和感に蓋をして推し進めた結婚。その綻びとは!?


夫婦の学歴格差は埋められるのか?


田園調布で生まれ育ち、厳しいご両親のもと中学・高校は暁星学園、そして大学は慶應大学と、順当にエリートコースを歩んできた敬太さん。

「教育に関しては、厳しい家庭だったんです。でも僕も姉もそれが当然だと思って生きてきましたし、勉強することに疑問を抱いたことはありませんでした」

ちなみに3つ上のお姉さまは、東京大学出身。幼い頃からしっかりと英才教育を受けて育った敬太さんが、奥様の有香さんと出会ったのはなんと恵比寿のバーだったという。

「僕が30歳の時、当時25歳だった妻に出会いました。たまたま三次会くらいで男友達と飲みに行ったバーに彼女も友達と来ていたのですが、とにかく顔がタイプで。僕の方から話しかけたんです。可愛いし性格も良いし、ほぼ一目惚れでしたね」

出会って間もなく、交際がスタート。一緒にいると楽しくて、そのまま順調に結婚へ駒を進めるかと思っていたが、ここで思わぬ障壁が現れる。

ご両親が、有香さんとの結婚に反対したのだ。

「両親が、妻との結婚に反対した理由はただ一つ。彼女は、大学を出ていなかったんです」




出会った当時、アパレル会社で働いていた有香さん。

地元である関西の専門学校を出て東京で働いていたが、無名の専門学校卒の女性を一家の嫁に迎え入れることを、両親は許してくれなかったという。

「『学歴はその人の歴史。子供の教育レベルが下がる』と言われてしまって。うちの家系は特に厳しく、なかなか許してくれなかったんですよね・・・」

しかし結果的に、敬太さんは両親の反対を跳ねのけた。

「今の時代学歴なんて関係ない、と。中卒でも高卒でも成功している人はいるし、有香は素晴らしい人間だ、と必死に説得しました」

そして半ば強引に結婚の話を進め、ゴールイン。

新婚当初は、たしかにうまくいっていた。しかし子供が生まれてから、敬太さんは気がついてしまったという。

「教育というものを、妻は全く真剣に考えていなくて。これから2人でどうやって子供を教育していくのだろうか、と不安になっていたある日、駐車場の看板に書かれていた“月極”という文字を見て、“げっきょく”と読んでいた妻に、愕然としたんです」

それまでは、そんな天然なところが可愛いと思っていた。

しかしいざ子供を育てるという現実と向き合った時、敬太さんは気がついてしまったという。

「不安を感じるようになったのはその事件だけではなく、日常のちょっとした会話でも気になることが出始めて・・・。だから、ある程度の学歴、というか必死で勉強した経験はやはり必要だと思ったんです」


妻を紹介するのが恥ずかしい・・・夫の苦悩とは


敬太の友人は、同じような育ちの人が多い。周囲には二世経営者も多く、そうした集まりに妻を連れていく機会もある。

そんな時に、“変なことを言わないか”“どう見られているか”とつい不安になることがあるそうだ。

「奥様は、元々何をされていたんですか?と聞かれた時に、答えづらくて・・・」

そして今、最大限に夫婦の“教育格差”がネックになっていることがある。

子供の受験問題だ。




現在5歳になる息子さんがおり、受験に向け塾へ通わせているそうだが、ある壁にぶつかっているという。

「両親からの、小学校から私学に入れろという圧力が凄くて小学校受験を考えているのですが・・・」

周囲には言っていないそうだが、息子さんが第一希望に掲げている学校はトップの難関校であり、両親の学歴もある程度必要になってくるのは明白だ。

「備考欄に、その学校出身の親たちは自分の学歴を書くのですが、うちは書けないんです。僕は明記できても、妻の学歴は書かないほうが良いと言われしまって」

もちろん、親の学歴に関係なく合格することもある。そればかりが全てではない。

しかし、敬太さんはこう語る。

「芸能人や、何か秀でている親は別です。彼らは才能がありますし、学歴は一切関係ない。けれども我が家のような普通の家庭で僕が自営業の場合、妻にもある程度の学歴があったほうがいいらしく・・・」

そして子供が大きくなるにつれ、その不安は募るばかり。

「子供が塾の宿題をしていて答えられないことがあると、妻はネットで調べるだけ。勉強というものをほとんどしてこなかった妻には、かなり厳しいなと思いました。受験に対してのほほんと構えているというか…。今後息子が更に成長して、もっと難しい質問が出てきても、妻は絶対に答えられないでしょう」

最初は、どうにかなると思っていた。
学歴なんて関係ないと思っていた。

けれども今、敬太さんは子供の教育に関して、かなりの不安を感じているようだ。

「もちろん学歴が全てじゃないし、妻のことは信頼しているし愛してます。けれども、やはり最初に少しでも引っかかった点は、後に大きな綻びとなって現れると、身をもって体験しています」

息子さんの受験が終わったら、敬太さんの今の不安は消えるのか、それとも夫婦の教育格差は一生埋められず、深い溝となるのか・・・

それは、今後の二人のみが知る答えなのかもしれない。

▶NEXT:10月22日 火曜更新予定
年収vs性格。どちらを取るべきなのか?





詳細はこちら >