100万人に1人。「痛覚がない人」の生活ってどんな感じ?

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物を触る感触は普通にあるのに、痛みだけを感じない、という人はごくまれにいるのだそうです。遺伝子が関与しているというそのメカニズムと、生活でどんなことが起こるのかについて、実験が勧められています。

もし、あなたが物理的な痛みを感じないとしたら?不快感や、時に苦しみをもたらす「痛み」ですが、これが欠如していると、日常生活に相当な苦労を伴うようです。

世の中には100万人1人程度の割合で、痛みを感じることができない人がいるそうです。原因の多くは、神経系をつかさどる遺伝子の突然変異が原因なのだそう。

生まれた時から痛みの感覚が欠如しているため、赤ちゃんの時から唇や舌を噛んで血だらけになったり、包丁などの危ない道具に恐れを抱かなかったり、2階から降りるときに「階段を歩くより飛び降りた方が早いんじゃないか?」と思ったりするそうです。

親にとっても、相当なストレスになりそうです。そして、周りで起こっていることを観察して「痛みとはどんな現象か」を学び、「痛みを感じたふり」をし、「けがをしないように/させないように」最新の注意を払う必要があるからです。想像以上に苦労が多いようです。

イギリスMRC分子生物学研究所は、こうした症状を持つ女性と、その両親(ともに痛覚は正常)の遺伝子や神経のはたらきを比較調査しました。この結果、痛覚異常の原因となっている遺伝子(SCN11A)の変異と、その結果として起こる神経伝達の異常を突き止めました。

「痛み」を感じるためには、まず外部からの刺激が脳の痛覚受容細胞に伝わります。そしてこの細胞が「痛い」という信号を出して初めて人は痛みを自覚します。しかしこの女性の場合、「痛い」という信号が発信されないため、痛みに関して無自覚になってしまうのです。

過去の研究で、別の遺伝子(SCN9A)の変異による痛覚の欠如も報告されています。この場合は、嗅覚(きゅうかく)も同時に欠如しているのだそうです。

なお、こうした研究は今後、鎮痛剤の開発に役立てられていくのだそうです。

参考:Explainer: why don’t some people feel pain?
http://theconversation.com/explainer-why-dont-some-people-feel-pain-18569