お金に苦労せず、幸せに生きていくことを目指すこの連載。今回の相談は、竹中なほさん(仮名・34歳 金融関連会社勤務)からの質問です。

「会社を辞めたあと、次の会社に早くに再就職すると、国からお金がもらえる制度があると聞きました。これはどういうものなでしょうか。資格などはありますか? 失業保険と比較したいので、いくらくらいもらえるものなのかも知りたいです」

失業手当は有名ですが、日本はそのほかにも就業にまつわる給付制度があります。それが「就職促進手当」です。どのようなもので、どんな手続きが必要なのか。森井じゅんさんに聞いてみましょう。

☆☆☆

失業給付期間中に再就職した場合に受け取れる「再就職手当」

就職促進手当とは、失業手当を受給する資格がある方、もしくは実際に失業手当を受給している方の就職を促進するための手当です。ひとことで就職促進手当といっても種類がありますが、相談者さんが「再就職手当」についてご興味があるようなので、今回は再就職手当を中心にご説明します。

まず「再就職手当」とは、失業給付をもらえる期間が一定以上残っているのに再就職した場合に受け取ることができるものです。
再就職手当がある理由は再就職の促進
失業手当については以前にもお話しましたが、前職の勤務期間や退職理由により、失業手当を受給できる期間が変わってきます。

例えば、前職での雇用保険被保険者としての期間が5〜10年で、自己都合による退職では90日間失業給付をうけることができます。これを所定給付日数といいます。同様の被保険者期間で、会社都合による退職では180日間の所定給付日数です。

失業給付は、求職活動を行なうことが前提です。つまり、失業給付を受けている間に就職することが想定されています。一方で、受けることができるものはすべて受け取りたいと、失業給付を受けられる期間中は仕事に就かないようにしようと考える人も出てきてしまいます。

再就職手当は、早期に再就職をする人に手当を給付することで、そういった方を再就職に向けて後押しする制度です。

再就職手当は再就職が早ければ早いほど増える

再就職手当は、再就職した時点で失業手当の所定給付日数の残りが3分の1以上だった場合、基本手当日額×残日数×60%です。

ちなみに、再就職手当の基本手当日額は失業給付の計算の基礎となるもので、前職の給与から計算した金額となります。その金額は、失業給付の手続きを行なった後に渡される雇用保険受給資格者証にも記載されています。退職した人で、お手許に資格者証がある人はチェックしてみてください。

具体的な計算ですが、例えば5000円の基本手当日額で、  180日間の所定給付日数のケースを想定します。60日を残し120日で再就職した場合、5000×60日×60%です。つまり、再就職手当として18万円を受け取ることができます。

また、所定給付日数が3分の2以上残っていた場合には、基本手当日額×残日数×70%という計算式になります。上記と同様の条件で所定給付日数の120日を残し再就職をすれば、42万円です。もし、10日で再就職が決まったとすれば59万5000円となります。

つまり、再就職手当は、再就職が早ければ早いほどもらえる金額が大きくなるのです。

再就職手当給付の注意点は再就職の方法

このように、失業手当給付の対象の人が早く就職すればするだけ多くもらえる再就職手当ですが、再就職の方法に制限がある場合があるので注意が必要です。

例えば、自己都合で退職した方も待機期間後の就職は再就職手当を受けることが可能ですが、最初の1か月はハローワークや職業紹介事業者の紹介による就職のみが手当の対象となります。つまり、自己都合退職で、知人の紹介などにより再就職した場合には、再就職手当を受けられない期間があるケースがあるのです。

また、前職の会社やその会社と密接な関係がある会社に就職しても、再就職手当は受けられないので注意が必要です。そして、申請をする前に内定していたり、待機期間に働きはじめると、これも手当を受けることができません。加えて、過去3年以内の就職について、再就職手当などを受給していないことも要件になります。

再就職しなくても、再就職手当を受けられる場合も

また、再就職以外にも、再就職手当を受けることができるケースがあります。それは、自分で事業を開始する場合。しかし個人事業主の開業手続きなど、失業後すぐに事業開始準備をすると、手当の対象外となる可能性が高いです。再就職手当の受給を考えているのであれば、7日間の待機期間終了から1か月経過後に開業準備、といったスケジュールになるでしょう。認められるためには、事業の実体があること、安定的な事業継続がなどについて明確にする必要があるので、開業届の写しや取引先との記録などをしっかり準備しておきましょう。

自営業として開業したけれどすぐに廃業、といったケースも対象にならないので注意してください。    

自身の雇用保険の加入状況や期間の確認を

上で触れたように、就職促進手当は失業保険を受給できる資格がある方のための制度になります。つまり、失業保険を受けることができる要件を満たしていることが大前提となります。具体的には、被保険者としての期間や本人の意思・能力、そして求職活動の有無などです。会社にまだ在籍されている方も、ご自身の現在の雇用保険の加入状況や加入期間などをしっかり確認しておきましょう。

また、失業給付は申請すればすぐに受けられるものではありません。申請や説明会への参加はもちろん、7日間の待機期間があります。ご自身が失業給付受給のスケジュールの中でどこにいるのかを常に意識しておきましょう。失業手当も同様ですが、再就職手当についても、いつ・何をするかというスケジュールが重要になります。ご自身の場合の受給要件などをしっかり確認し、わからないことはハローワークで相談してみてください。

「失業保険を満額もらいたいから、再就職は半年後で」と思っている人も多いですが……。



■賢人のまとめ
就職促進手当とは、失業手当を受給する資格がある方、もしくは実際に失業手当を受給している方の就職を促進するための手当です。そのなかのひとつ、再就職手当は、失業給付をもらえる期間がまだ残っているときに再就職した場合に受け取ることができるものです。再就職が早ければ早いほど多くもらえます。また、再就職しなくても、開業した場合にも受け取れるケースもあります。ただし、再就職の方法や再就職場所によっては受け取れない期間があったり、対象外になることも。失業手当受給の対象者が大前提となるので、それらも含め、自身の雇用保険の加入状況や期間もしっかり確認してください。

■プロフィール

女子マネーの達人 森井じゅん

1980年生まれ。高校を中退後、大検を取得。レイクランド大学ジャパンキャンパスを経てネバダ州立リノ大学に留学。留学中はカジノの経理部で日常経理を担当。

一女を出産し帰国後、シングルマザーとして子育てをしながら公認会計士資格を取得。平成26年に森井会計事務所を開設し、税務申告業務及びコンサル業務を行なっている。