半ニートから高額所得者まで、常識人から異世界に住む人々まで、幅広い層が飲みに来る下北沢を中心に、「一人飲み歴10年以上」の、きたざわ御神酒(おみき)です。お酒の席の楽しさにハマり、気に入った店では朝方まで飲んだり、趣味が高じてバーテンダーのバイトをしたり、バーのマスターと結婚までしてしまいました。

しかしお酒の席で見たのは、楽しく素敵なモノばかりでは、もちろんありません。今回は、バーに出没する「イタタ」では済まないほどの闇に飲み込まれた女性のお話をお送りします。堅実女子の皆様の反面教師として、これからのオトナの社交ライフに活かしていただければと思います。

一人の女性客の相談が大人マスターの心を苦しめることに!

ある日突然、飲み仲間のマスターWさんから、重い相談と告白をされたことがあります。「本当に悪い人に出会ってしまった」と。当時、この本当に悪い人という導入の言葉だけで驚きました。夜の社交場でもあるバーには、実にいろいろな人と出会います。

その場で真っ黒とまでは測れないものの、世の中の日の当たらないグレーゾーンを生きる人かもしれないといった空気の方々とも、たまに遭遇するものなのです。

Wさんは、若い時にちょっとヤンチャした時期もあったらしく、多少イキがっている程度の相手には臆さないタイプ。例えば、こんなエピソードもありました。

ある時、別のお店のマスターが「昨夜、ウチのお店にヤのつく職業丸出しのお客さんが来て、どうしていいかわからず困っていたところ、たまたま飲みにきたWさんがうまく相手をしてくれて、本当に助かりました!」と、お礼に高いお酒を持って来店したのです。

詳しく聞くと、Wさんは、酔ってヤのつく職業の内容を話しだしそうだった相手に「楽しく飲みたいなら、その手のお話をされると楽しくツッコミづらいなぁ!いろいろ大変だと思いますが、こういうところではやめませんか?」と冷静ににこやかにお酒を酌み交わし、その方を「今日は楽しかった。ありがとな。もう会わないだろうけどな」と円満に帰路につかせたのだとか。

キモの座った、非常にまともな大人マスター。そんなWさんは、自分のお客様の話を簡単に誰かに吹聴するような性格ではありません。そのWさんが、「聞いてもらっていい?本当に悪い人を見ちゃったんだ」と語りかけてきたのです。

そのとき、好奇心と怖いもの見たさで心臓がバクバクしました。「今日さ、開店前に一人で仕込みしてたら、2〜3回来たことのある女性客が店に入って来たんだ。『マスターに聞きたいことがある』って。その内容がキツくてさ……」

なんとその女性客は別の男性客に人生を台無しにされていた

その女性(仮にAさん・40代)が聞きに来たのは、交際中の男性についてでした。

Aさん「何回か私と一緒に来た男の人、私以外の女性ともこの店に来てますよね?その時、お金はどちらが払っていますか?」

マスター「男性お一人で見えることもありますし、他の方とご一緒の場合もありますね。最近ごひいきにしていただいて、ありがとうございます」

その男性(Bさん)は、Aさんと来るときは必ずAさんにお金を払わせるけれど、他の女性(しかも何度も同じ人)と来るときには、Bさんが支払うそうです。でも、そんなことはAさんには言えないので、マスターは言葉を選んだそう。

Aさんから「同じ女性ですか?」「支払いはどっち?」と食い下がられたそうですが、「そういうことはお答えできないです」とお断りしたとか。するとその女性、座って身の上を語りだしてしまいました。

自分はBさんと結婚の約束をしている。Bさんは、美術系の作家で、京都に家庭を持っているけれども、出張で東京に来ている時にバーでAさんと知り合い、不倫関係になった。

Bさんの作品はすばらしく、Aさんや、Aさんの実母なども、数十万円単位の作品をいくつも買っている。Bさんはとても優しく才能にあふれていて、実母や子どもにも優しいし、結婚を申し込まれたので、Aさんは、子どもを連れて夫と離婚した。

……なんと、Aさんも家庭持ちでした。W不倫、しかも小学生の子ども2人を連れての離婚をもうしてしまった、というのです。しかし、Bさんは奥さんと別れてくれず、今も、京都と東京を行ったり来たり。東京に来ているときはAさんの借りた新居に泊まるけれども、外出が多く、家にいる時は暴力を振るうようになった、とのこと。

その経緯を一気にマスター語った後、「私、Bさんとは別れたほうがいいですよね?」と聞いたのだとか。マスターは、「私の立場ではなんとも言えませんが、世間一般的に、そういう経緯でしたら、別れをすすめる意見が多いでしょうね」と答えたそうです。

フレンドリーで気前のいい男性は結婚詐欺師かもしれない

実は問題の男性・Bさん、筆者も何度か出会ったことがありました。40代前半で、いかにも芸術家風の長髪に、個性的でお金のかかった服装。イケメンではないけど、チャーミングで自信のある感じ。

人当りが良いというか、ちょっとサービストーク過剰気味で、「マスターの料理最高!天才!」とホメたり、同席した他の利用客にも積極的に話しかけたりして、場を盛り上げようとしてくれます。

筆者がBさんを見たときには、Aさんでないほうのよく一緒にくる女性といつも一緒でした。それを見て、「連れの女性は愛想がなく内向的な感じなのに、男性はまぁ、過ぎるほど社交的なカップルだなぁ」と思っていました。そしてBさん、ものすごく気前よくオーダーします。

平均単価1,500円程度のお店で、7,000円くらいいつもオーダーしている感じ。一見バーにはありがたい上客ですが、マスターはその後Bさんが酔って他のお客様に少しカラんだのを理由に、Bさんを出入り禁止にしました。「あんな話を聞いた以上、ウチのお客さんをカモにされたら困るから」だそうです。

無口な女性は、もともとのマスターの店のお客様ではなく、Bさんが連れてきた人でした。あの人は次のカモだったのかもしれない……。もちろん、それを第三者にはどうすることもできません。マスターが人に話したくなった気持ちはよくわかりました。

Bさんは、恐らく結婚詐欺師。社交ベタな女性を楽しい世界に連れ出すと見せてカモにする、本当に悪い男だったのです。一人の女性の人生を台無しにしても、のうのうと生きている……。夫も財産も失う絶望と悲しみは、計り知れません。背筋が凍る話ですよね。堅実女子の皆様は、くれぐれもお気をつけください。

Aさんの話は悲惨です。しかし、都会にはもっと重い業を背負っている女性もいます。後編では、苛烈な結果を歩んでしまった女性・Cちゃんについてお話ししたいと思います。

「えっ、あの人が!?」と思っても、意外と人は見かけによらない!

ダメ男に騙されて何もかも失うより悲惨な人生とは!?都会の闇に飲み込まれる女性の話は〜その2〜に続きます。