女性誌『Suits WOMAN』で注目を集めた「貧困女子」。これは普通の毎日を送っていたはずが、気がつけば“貧困”と言われる状態になってしまった女性たちのエピソードです。

今回、お話を伺ったのは、イメージディレクターの星岡沙羅さん(仮名・36歳)。広告代理店、百貨店の美容部員、不動産関連会社、保険会社、アパレル勤務を経て、今の仕事に就いています。仕事の内容について伺いました

「仕事は、企業の社長様やクリエイティブワーカーの皆様に、コーディネート術や似合う色を提案し、印象をよくするためのコンサルティング業務を行なっています。インターネットで集客をしていて、依頼があった方と待ち合わせし、一緒にお買い物をして似合う服を購入。その後ホテルのラウンジでさまざまな相談に乗り、適切なアドバイスをいたします」

相談とはどのような内容が多いのかと聞くと、本人の個人的な悩みから、組織のチームビルティングまで、ありとあらゆることだと言います。

「私は短大を出てから、広告代理店で営業をしました。当時は100人の名刺をもらうまで帰れない、という新人教育がまかり通っていた時代。私はそんなに押しが強くないし、名刺をいただいたところでその方に営業電話をかけなくてはならない。“日本の押し売り文化”は間違っていると思い、3日で辞めました。人を幸せにしてこそ仕事だという信念は、この時期に作られました。そこで、どんなことが必要なのだろかを考えて、“笑顔”という結論に行きついたのです。そこで私は、人を笑顔にする仕事をするために美容を学びました」

沙羅さんは、すぐに美容の専門学校に入り、メイクやスタイリングを学びます。

「なんちゃって専門学校なんですけど、学費だけはいっちょ前でした。親は“こんなことなら四年制大学にいかせればよかった”と言っていましたが、私にはたくさんの人を笑顔にするという使命がありますから、親には投資していただいて、一生懸命学びました」

この学校で沙羅さんは色彩やメイク、人体構造などの知識を学び、ほぼ首席で卒業。その後は中堅化粧品会社に就職し、美容部員として働き始めます。

「販売の現場に配属されましたが、1か月もしないうちにストレスでボロボロになるんですよ。立ちっぱなしだし、狭いし、乾燥しているし埃っぽいし環境は劣悪。バックヤードもブランド間の序列、女性同士のマウンティング、いじめ……お客様からのクレームなども重なって、タバコが手放せなくなりました。すると、ニキビがたくさんできて帯状疱疹にもなってしまい、半年で退職しました。本当に日本は笑顔がないからこういうことになるんだと、再び思いましたね」

その後、何度も転職をし、32歳のときに10歳年上のバツ2の男性と結婚するが……

32歳のときに働いていたアパレル関連会社の近くのバーで、沙羅さんは夫となる人と出会いました。交際3か月で入籍するも、相手はDV男だったのです。

「最初は私のことをかわいいと言ってくれたのに、一度男女の関係になってからは、“お前のココがダメなんだ”と説教するように。その時の私は愛されていて嬉しいと思い、私のほうから結婚を迫り、入籍。でも、結婚3か月くらいから“バカすぎてムカつく”と殴られるようになったんですよ。私は元夫が健康で笑顔でいてほしいから、“野菜も食べましょうね”とか“お金持ちになるには、長財布を持ちましょう”とかアドバイスしたのに、そのたびにキレられて。殴られて歯が折れたり、ろっ骨を骨折したり、転倒した瞬間に手首を折ったり……。一番ひどかったのは、イビキがムカつくと言われて、夜中にたたき起こされて殴られたんです」

ある日、耐えがたい出来事があり、警察に相談に行ったそうです。そのとき、婦人科と整形外科の医師の診断書を持ち、沙羅さんのお父様と一緒に元夫の家に直談判に行ったそうです。

「その時は、東京都世田谷区の実家にいたのですが、相手の実家がある神奈川県綾瀬市までタクシーで行きました。向うの親は慣れていたみたいで、慰謝料100万円で協議離婚を打診してきたんです。そうしたらウチの父がブチ切れて、弁護士に間に入ってもらうことを言ったら、相手の親がビビり、慰謝料300万円で離婚が成立しました」

今のイメージディレクターの仕事は、この慰謝料をもとに人を笑顔にする仕事をしたいと思って、起業したと言います。

「それから3年近くなりますが、まあまあそこそこリピーターの方も増えています。勉強会や、オンラインサロンを積極的に行って……」

そう続けるので、具体的な人数や利益がはどのようにしているのか、生活費について、今住んでいるところと家賃について伺うと、沙羅さんの目が泳ぎました。

彼女は中肉中背で好感が持てる顔立ちをしているけれど、こちらがお金を払って服を見立ててもらいたいと思うほどファッションセンスが優れているわけではありません。

お会いしている時に着ていた服は、外国人女性がプリントされた黒いTシャツにジャケット、黒いデニムにはよく見るとケチャップのような食べこぼしを拭き取った跡があります。

メイクは上手で、アイラインがスッと細くひいてあり、肌も整えられていましたが、爪は100均でよく見かけるネイルシール。髪は両サイドが長めのボブで80年代を思わせます。イメージディレクター・沙羅さんの顧客像が浮かばず、質問をすると本当の答えが……。

沙羅さんはかつて、ヘアサロンでヘアメイクをするアルバイトもしていたことがある。人を笑顔にするのが生きがいだと語る。(※写真はイメージ)

沙羅さんが生活費を得ている本当の手段は、さまざまなアルバイトだった〜その2〜へ続きます。