地方出身の女性が東京に上京するタイミングは、実は3回あります。

第1の波 : 「ファーストウェーブ」 地方の高校を卒業し、東京への進学。

第2の波 : 「セカンドウェーブ」    地方の学校を卒業し、東京への就職。

この2つの波はよく知られていますが、第3の波が存在していることは、あまり知られていません。

第3の波:「サードウェーブ」それは、

30歳前後で地方での人生に見切りをつけ、東京に新たな人生を求めて上京する独身女性達の潮流。

この波に乗り、30歳前後で地方から東京へ上京してきた独身女性達を『Suits WOMAN』では 「サードウェーブ女子」 と名付けました。地方在住アラサー独身女性はなぜ東京を目指したのか? その「動機」と「東京での今」に迫りたいと思います。

今回お話を伺ったサードウェーブ女子、松尾みゆきさん(仮名・31歳)は福岡県福岡市出身。色白な肌でありながら目鼻が大きくエキゾチックな顔立ち、165センチを越える長身にスーツをビシっと着こなし、9センチのヒールにモノグラムのブランドバッグを持ち、ハキハキとした話し方からは『博多美人』とはまさにこういう女性のことだろうか、という印象です。上京歴4年で都内の広告代理店で契約社員として働いています。

――「東京」ってどんなところだと思っていましたか?

「地元で生き残れなかった負け組女子が行くところ。『美人は福岡に残り、そうでない者は東京に行くしかない』とは地元出身の女性作家さんが言っていたのですが、福岡にいた頃はナチュラルにその通りだと思っていました。福岡を含め九州は『男尊女卑の文化』だと言われていますけど、これは半分当たっていて半分違うというか……。女の子は成績が良くても家から通える学校にしなさいと言われ福岡から出してもらえないとか、嫁に出すなら家からとか、ちょっと前に鹿児島県知事が“サイン、コサイン、タンジェントを女の子に教えて何になる?”という発言をして批判されたりもして、男だから、女だからという考え方はあると思いますけれど、それってどこでも多かれ少なかれありますよね。女の子は側においておきたいとか、大変な仕事とか勉強はしなくても良いよという親心的なものは。でも福岡がやっかいなのは、男尊女卑の雰囲気を作っているのは実は女性側というか……。男尊女卑って一般的には“男性優位、女性劣位”って意味ですけど、福岡のはちょっとそれとは違うと思う」

みゆきさんは福岡県福岡市生まれ。地元の代議士を代々勤めている名家の生まれで、忙しくとも優しい父親とそれを支える母親、将来有望なお兄さんが2人に祖父と祖母という家族構成で、裕福な家庭環境で小さい頃から蝶よ花よと大切に育てられたといいます。

「小さい頃からお金で困るとかはありませんでした。けれど、福岡の男尊女卑の風潮は小さい頃から感じていました。2人の兄はたくさん塾とか行って勉強していい成績を取って褒められても、私は勉強ではなくお稽古ごとばかり。テストで良い点を取って褒められはしても、女の子だから勉強なんて頑張らなくて良いのよと母からは言われていました。2人の兄は大学進学で東京に行きましたけれど、私は家から通えるところにしなさいといわれ地元の女子大に通いました」

大学卒業時は就職氷河期で男性でも就職活動に苦労する時代でしたが、親の口利きもあって東京に本社のある広告代理店の福岡支社に入社したそうです。

「親の七光りで入った会社でどうでもいいような仕事をしていました。コピー取ったりとかお茶を出したりとか。私も含め、女性社員に対して何かを期待している会社ではありませんでしたね。女性社員は無駄に威張っている男性社員やオジサン上司を適当に持ち上げて転がしておけば良くて、私自身もそれで良いと思っていました。男性社員を押しのけて前に出る女性社員なんてドラマの中の話だと。今思えば、そういう女性はナチュラルに排除されていたんだと思います」

入社3年目の4月、東京本社から東京生まれ東京育ちそして同い年の男性社員が赴任して来ました。みゆきさんはその男性社員に興味を持ったといいます。

「福岡も1人暮らしも初めてで見るからに不慣れだし、私からいろいろと世話を焼いてあげました。みんなからは“シティボーイ”と呼ばれて、学生時代からの彼女さんが東京にいると初めに聞きました。東京育ちの方とは接したのは初めてで、福岡の男性と違って女性に対して偉ぶらず、優しいなと感じました。正しくいえば『誰に対しても優しい』。わかります? 美人に対してもそうでない女性に対しても等しく優しいんです。福岡の男性は美人に対しては優しいけれど、そうでない女性のことはそれなりにぞんざいに扱う。そして女性の側もそれを当然だと受け入れているんです」

赴任当初は好意的に迎えられていたシティボーイでしたが、職場の雰囲気がだんだんと悪い方に変わっていくのを感じたといいます。

「美人でもそうでなくても、男性でも女性でも分け隔てない彼の態度が、だんだん疎まれるようになっていきました。場の空気を乱すなと。それが男性ではなく、女性の側からそういう雰囲気を強く感じました。福岡の女性は男性より下手でいるように見えて、実は男性を上手く転がしているんだから余計なことはするなと。仲良くしていた私との関係も疑われたりして……。まぁ、そういうことも実際あったりもしましたけれど」

シティボーイは体調を崩し、わずか1年半で東京本社に帰っていったそうです。

シティボーイとのお付き合いは、みゆきさんにとって新鮮なものだった。だが、遠距離の彼女の存在は大きく、略奪する気持ちも芽生えなかったという。

男尊女卑の空気に耐えられず、意を決したみゆきさんは……!? 続きは〜その2〜へ。