男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

-果たして、あの時どうすればよかったのだろうか?

できなかった答えあわせを、今ここで。

今週のテーマは「他に女性がいても口説いてくる男の本音は?」という質問。さて、その答えとは?

▶【Q】はこちら:「彼女はいるんだけど、うまくいってなくて…」そう言って口説いてくる男の本音とは




由紀に出会った時、僕の心は華やいだ。

可愛いし綺麗で性格も良い。何より僕のタイプだった。

だからデートにも誘ったし、タクシーの中でキスまでした。そして感覚的に、由紀も同じ気持ちだということが伝わってきた。

しかしここ最近、由紀からの返信のスピードが急に落ちている。

原因がわからないわけではない。僕に彼女がいることを由紀には正直に話したからだろう。

彼女の存在を打ち明けたあとも、2軒目に付いてきてくれたから、同意の上だと思っていた。

けれども違ったのだろうか…。


A1:初デートの言動を見て、軽い感じでいけるかと思った。


由紀と出会ったのは、友人が主催した食事会だった。他の友人も僕に彼女がいることは知っていたけれど、そこには男同士暗黙のルールがある。

だから食事会でも、深いことは掘り下げないようにしていた。

「由紀ちゃん、飲み物足りてる?大丈夫?」
「俊くん、ありがとう。でも見て、まだ全然あるから(笑)」
「いや、先を読もうかと思って」
「なにそれ、面白いね」

掴みが良かったのか、この食事会の間中、由紀は僕をチラチラ見ていた。

だから翌日、個別で由紀にLINEを送り、デートに誘ってみた。するとすぐに返信が来たので、僕たちは広尾の『ラ・ビスボッチャ』でデートをすることになった。




「この前は楽しかったね」
「俊くんって、絶対にモテるよね」

ワインを飲みながら、楽しくデートは進んでいく。

― 可愛い…。

少し頬が赤くなってきた由紀を見ながら、僕はそんなことを考えていた。

「俊くんは、どういう人が好きなの?」
「僕?僕は優しくて精神的に安定している人かなぁ」
「精神的に安定している人?」
「そうそう。この歳になると結婚も考え始めるし、家に帰った時に根暗な人だと嫌だなと」
「それはそうかも…」
「由紀ちゃんは?どういう人がタイプ?」

デートの定型文のような会話だけれど、お互い好意があるかどうか、この先に進む可能性があるのかないのかの判断になる大事な会話だ。

「優しくて、男っぽい人かな」
「男っぽいって?」
「頼り甲斐があって、決断力がある人。結構グイグイ系の人のほうが好きなんだよね」
「そうなの?じゃあ俺、グイグイ頑張っちゃおうかな」
「本当に、俊くん軽いよね」

楽しそうに笑う由紀。彼女の笑顔を見ながら、僕はもう2軒目のことを考えていた。




「由紀ちゃん、この後まだ時間平気?良ければ、僕の好きな店があるからもう1軒どう?」
「もちろん!」
「少しだけ歩くからタクシーに乗っちゃおうか」

ノリが良い由紀は、2軒目にも快くついてきてくれる。しかも2軒目で少し距離を縮めても、嫌がるどころか喜んでくれている。

― これは…イケるかも。

そう思ったので、僕はすぐに次のデートの約束もすることにした。

「由紀ちゃん、またご飯行こうよ」
「うん。いつがいい?」
「…じゃあ来週は?」
「いいね!」

今日のデートが嫌だったら、二度目のデートはないはず。

しかも帰り際。タクシーを降りようとする由紀をそっと抱き寄せると、なんとなくキスをするような雰囲気になり、由紀も目を閉じた。そして気がつけば、僕たちはキスをしていた。

そしてこの瞬間、僕は確信した。

― これはいけるかも…。

「…おやすみ」
「おやすみ、由紀ちゃん」

この日以降も由紀とは、毎日連絡を取り合い、次のデートがやってきた。


A2:この子なら、言っても大丈夫かなと思ったから。


二度目のデートは、西麻布にある鮨屋を予約した。

「お鮨久しぶりだな〜嬉しい♡」

喜ぶ由紀を見ながら、シャンパンで乾杯をする。しかし徐々に、僕は違う気持ちも生まれてきた。

― 由紀なら、話しても怒られないかも…?

「そういえば。俊くんはこんなにも素敵なのに、なんで独身で彼女がいないの?」

由紀がこう質問したきたので、「言うなら今だ!」と思い、素直に僕は自分に彼女がいることを打ち明けることにした。

「それが…実は、今彼女がいるんだよね」

そう話すと、由紀は心底驚いた顔をしている。

「……え?…ごめん、どういう意味?」
「実は彼女がいて。前回言おうかなと思ったんだけど、言うタイミングを逃しちゃって」
「えーっと……」

そう言うと、ぐいっとワインを飲み干した由紀。

― あれ?やっぱり間違えたかな…。

そう思ったので、慌ててフォローに回る。




「しかもその彼女から、『一緒に住みたい』と言われていて…うまく逃げているところ」
「それって、別れたいってこと?」
「そうだね。うまくいっているとは言えないかな」

いい子なんだけど、メンタルが不安定なところがある。だから「一緒に住もう」と言われても、すぐにOKと言えない自分がいた。

「でも由紀ちゃんのこと、俺好きなんだよね」

正直、迷っている。由紀のことも本当にいいなと思っていたから。

でも僕が素直に、由紀に「彼女がいる」と打ち明けた最大の理由は、なんとなく「由紀なら理解してくれるかも」と思ったからだ。




うまく言葉にできないけれど、由紀は二番手でも甘んじてくれそうな、“絶妙なゆるさ”がある。

初デートでキスできた時点で、その“ゆるさ”は顕著に出ていると思う。

ゆるくて、可愛くて、優しくて怒らない。

僕のほうから由紀を切る理由なんてどこにもないし、むしろ大事に繋ぎ止めておきたい。

ただ別に、浮気をしたいわけではない。だからちゃんと由紀に話した。

「由紀ちゃん、もう1軒行こうよ」
「うん、そうだね」

しかも「彼女がいる」と話しても、まだ僕とのデートを続けようとしてくれる由紀。男性からすると、これ以上都合が良くて最高な相手はいない。

この日以降、由紀からの返信のスピードは遅くなっている。

それでもまだ返信はちゃんと来るし、このままもう少し頑張れば、由紀は最高の“セカンド”になってくれそうな雰囲気が漂っている。

彼女がいることに拒絶反応を示すような潔癖な子だったり、高嶺の花のような最初から手が届かない相手だったら、僕は彼女がいることを告白していなかったと思う。

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▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟

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デートの食事中に、言われたらさめるNGな一言とは