秋に抜け毛が増えるのはなぜ? 1日に100本抜けることも…【医師監修】
この頃、抜け毛が多いと感じる人は多いのではないでしょうか。抜け毛は季節の変わり目によく見られる現象で、特に秋は他の季節よりも増えると言われています。しかし、その理由や対策はあまり知られていません。本記事では、“秋に抜け毛が多い”理由や抜け毛対策、FAGA(女性男性型脱毛症)との違いについて専門医が解説します。
【画像】シャンプー2度洗いしてもOK? 正しいケア方法を美容師が解説
◆健康な人でも1日に50〜100本程度髪の毛が抜ける…紫外線ダメージや乾燥で加速する秋の抜け毛
秋に抜け毛が多くなる理由は、主に「毛周期の変化」「夏のダメージ」「ホルモンバランスの乱れ」の3つが挙げられます。
人間の髪の毛は、成長期・退行期・休止期を繰り返すサイクル「毛周期の変化」があります。このサイクルは個人差や部位によって異なりますが、一般的には成長期が2〜6年、退行期が2〜3週間、休止期が3〜4ヵ月という周期で生え変わります。しかし、季節や体調などによってこのサイクルが乱れることがあります。特に、春から夏にかけて成長期が延長された髪の毛は、秋に一斉に退行期や休止期に入ります。その結果、自然脱毛と呼ばれる現象が起こり、抜け毛が増えます。
休止期に入った髪の毛は、新しい髪の毛に押し出されて抜け落ちます。この時期に抜ける髪の毛は正常な生え変わりであり、健康な人でも1日に50〜100本程度は抜けるといわれています。秋にはこのサイクルが早まり、休止期に入る髪の毛が増えるため、抜け毛も増えると考えられます。これは動物の換毛期と同じような現象で、冬に向けて新しい髪の毛を生やす準備をしています。
また、夏に強い紫外線を浴びた頭皮は、紫外線ダメージを受けて炎症を起こします。炎症は頭皮の血行を悪くし、髪の毛に必要な栄養や酸素を運ぶことができなくなります。紫外線は髪の毛のタンパク質であるケラチンを破壊し、髪の毛を弱くしてしまいます。このように、紫外線は頭皮と髪の毛に大きな影響を与えますが、その影響はすぐに表れるわけではありません。紫外線ダメージは時間差で表れるため、夏の終わりから秋にかけて抜け毛が増えることがあります。
紫外線は活性酸素を増やして老化を促進し、エアコンは頭皮や髪の毛を乾燥させて水分バランスを崩します。これらのダメージは秋になってもすぐに回復するわけではありません。むしろ、秋は乾燥する季節なので、さらにダメージが蓄積されるのです。
◆10月〜12月がピーク…乾燥や紫外線だけでなく、ホルモンバランスの乱れも悪影響
秋は気温や湿度が下がり、空気が乾燥します。乾燥した空気は頭皮や髪の毛の水分を奪い、乾燥肌やパサつきを引き起こします。乾燥肌はかゆみやフケなどのトラブルを招き、頭皮環境を悪化させます。パサついた髪の毛は摩擦や静電気で切れやすくなります。また、乾燥すると血管が収縮し、血行も悪くなります。血行不良は頭皮や髪の毛に栄養や酸素を届けることができなくなり、抜け毛の原因になります。
そして、ホルモンバランスの乱れも大きく関わります。女性ホルモンや男性ホルモンなどの分泌量や比率が変化します。女性ホルモンは髪の毛を育てる働きがありますが、加齢やストレスなどで減少します。一方、男性ホルモンは髪の毛を細く弱くする働きがありますが、女性ホルモンが減少すると相対的に増加します。
また、男性ホルモンは5αリダクターゼという酵素によってジヒドロテストステロン(DHT)という物質に変換されます。DHTはFAGA(女性男性型脱毛症)の主要な原因物質であり、頭皮内で過剰に生成されると毛根を縮小させて髪の毛の成長を妨げます。このように、ホルモンバランスの乱れは髪の毛に悪影響を及ぼします。
抜け毛が多いと感じる秋ですが、一般的には10月〜12月までの約3ヵ月間がピークと言われています。この期間は、毛周期の変化や紫外線ダメージ、乾燥などの影響が重なり、抜け毛が増えやすい時期です。しかし、これらの要因は一時的なものであり、生え変わりの過程で抜け毛は自然に治まることが多く、特に心配する必要はありません。ただし、抜け毛が長期間続いたり、頭皮に異常があったりする場合は、薄毛やFAGA(女性男性型脱毛症)などの病気の可能性もあります。
「通常毛周期により、ある程度抜け毛があることは普通のことです。しかし、明らかに抜け毛の量が多い場合や全体のハリやコシがなくなったり、生え際や頭頂部が特に薄くなったと感じる場合はFAGAの可能性があります。大きな違いとしては、FAGAは主に女性ホルモンの分泌量の低下が要因で発症するということです。徐々に進行してしまうので、FAGAと疑われる症状がある時は、早めに専門医療機関に相談しましょう」(共立美容外科・磯野智崇さん)
◆シャンプーや保湿、栄養バランスだけでなく、1日5分の頭皮マッサージにも期待
過剰な抜け毛を防ぐためには、以下のような対策を行うと効果的です。
(1)シャンプー選び:頭皮を清潔に保ち、血行を促進することで、髪の毛に栄養や酸素を届けることができます。シャンプーは適度な回数と方法で行い、頭皮に合った製品を選びましょう。洗浄力が強すぎるシャンプーは、頭皮や髪の毛に必要な油分や水分を奪ってしまいます。そのため、アミノ酸系やノンシリコン系など、頭皮や髪の毛に負担の少ないシャンプーを使いましょう。また、シャンプーの際は爪を立てずに指の腹で優しくマッサージするようにしましょう。洗いすぎや洗い残しも抜け毛の原因になりますので、適度な量と時間で洗うことが大切です。
(2)頭皮マッサージ:頭皮マッサージで血行を促進することは、抜け毛対策に効果的です。頭皮マッサージは、頭皮の血流を促し、毛根に栄養や酸素を届けることができます。また、頭皮のコリや緊張をほぐすことによるリラックス効果もあります。頭皮マッサージは、シャンプーや入浴時だけでなく、日中でも手軽に行えます。1日5分程度でも効果が期待できますので、習慣化してみましょう。
(3)紫外線対策:夏だけでなく秋でも必要です。紫外線は年間を通して降り注いでおり、特に10月は紫外線量が高い月と言われています。紫外線から頭皮や髪の毛を守るためには、帽子や日傘などを利用しましょう。また、UVカット効果のあるシャンプーやトリートメントもおすすめです。
(4)保湿:乾燥から頭皮や髪の毛を守るために重要です。保湿剤やヘアオイルなどを使って、水分や油分を補給しましょう。また、室内の湿度も50%前後に保つようにしましょう。加湿器や植物などを利用すると良いでしょう。
(5)栄養バランス:食事は髪の毛の材料となります。特にタンパク質やビタミン・ミネラルなどは髪の毛に必要不可欠です。また、血行促進効果のある食材や発毛促進効果のある食材も積極的に取り入れましょう。
さらに、育毛剤やサプリメントで栄養補給することは、抜け毛対策におすすめです。育毛剤の成分には、血行促進やホルモンバランス調整などの効果があります。さまざまな種類がありますが、FAGA(女性男性型脱毛症)に効果的なものは、DHT(ジヒドロテストステロン)の生成を抑制する成分が含まれているものです。ただし、育毛剤は個人差がありますし、副作用もある場合がありますので、使用前に医師に相談しましょう。
「当院では、FAGA治療としてHARG療法を行っています。HARG療法は、頭皮下にAAPEv2.0というヒト脂肪幹細胞由来サイトカイン製剤を注入します。個人差はありますが、注入をすることで毛乳頭細胞を修復させ、髪の毛の成長を促すことができます」(共立美容外科・磯野智崇さん)
秋は抜け毛が多い季節ですが、適切なケアをすることで減らすことができます。気になる方は、ぜひ参考にしてみてください。
【監修者】共立美容外科の副総括院長・磯野智崇さん
1995年、聖マリアンナ医科大学を卒業。1995年、聖マリアンナ医科大学形成外科に入局。1999年、東大宮総合病院整形・形成外科に入職。2002年、共立美容外科に入職。2009年、共立美容外科浜松院院長に就任。2020年、共立美容グループ総括副院長に就任。
【画像】シャンプー2度洗いしてもOK? 正しいケア方法を美容師が解説
◆健康な人でも1日に50〜100本程度髪の毛が抜ける…紫外線ダメージや乾燥で加速する秋の抜け毛
人間の髪の毛は、成長期・退行期・休止期を繰り返すサイクル「毛周期の変化」があります。このサイクルは個人差や部位によって異なりますが、一般的には成長期が2〜6年、退行期が2〜3週間、休止期が3〜4ヵ月という周期で生え変わります。しかし、季節や体調などによってこのサイクルが乱れることがあります。特に、春から夏にかけて成長期が延長された髪の毛は、秋に一斉に退行期や休止期に入ります。その結果、自然脱毛と呼ばれる現象が起こり、抜け毛が増えます。
休止期に入った髪の毛は、新しい髪の毛に押し出されて抜け落ちます。この時期に抜ける髪の毛は正常な生え変わりであり、健康な人でも1日に50〜100本程度は抜けるといわれています。秋にはこのサイクルが早まり、休止期に入る髪の毛が増えるため、抜け毛も増えると考えられます。これは動物の換毛期と同じような現象で、冬に向けて新しい髪の毛を生やす準備をしています。
また、夏に強い紫外線を浴びた頭皮は、紫外線ダメージを受けて炎症を起こします。炎症は頭皮の血行を悪くし、髪の毛に必要な栄養や酸素を運ぶことができなくなります。紫外線は髪の毛のタンパク質であるケラチンを破壊し、髪の毛を弱くしてしまいます。このように、紫外線は頭皮と髪の毛に大きな影響を与えますが、その影響はすぐに表れるわけではありません。紫外線ダメージは時間差で表れるため、夏の終わりから秋にかけて抜け毛が増えることがあります。
紫外線は活性酸素を増やして老化を促進し、エアコンは頭皮や髪の毛を乾燥させて水分バランスを崩します。これらのダメージは秋になってもすぐに回復するわけではありません。むしろ、秋は乾燥する季節なので、さらにダメージが蓄積されるのです。
◆10月〜12月がピーク…乾燥や紫外線だけでなく、ホルモンバランスの乱れも悪影響
秋は気温や湿度が下がり、空気が乾燥します。乾燥した空気は頭皮や髪の毛の水分を奪い、乾燥肌やパサつきを引き起こします。乾燥肌はかゆみやフケなどのトラブルを招き、頭皮環境を悪化させます。パサついた髪の毛は摩擦や静電気で切れやすくなります。また、乾燥すると血管が収縮し、血行も悪くなります。血行不良は頭皮や髪の毛に栄養や酸素を届けることができなくなり、抜け毛の原因になります。
そして、ホルモンバランスの乱れも大きく関わります。女性ホルモンや男性ホルモンなどの分泌量や比率が変化します。女性ホルモンは髪の毛を育てる働きがありますが、加齢やストレスなどで減少します。一方、男性ホルモンは髪の毛を細く弱くする働きがありますが、女性ホルモンが減少すると相対的に増加します。
また、男性ホルモンは5αリダクターゼという酵素によってジヒドロテストステロン(DHT)という物質に変換されます。DHTはFAGA(女性男性型脱毛症)の主要な原因物質であり、頭皮内で過剰に生成されると毛根を縮小させて髪の毛の成長を妨げます。このように、ホルモンバランスの乱れは髪の毛に悪影響を及ぼします。
抜け毛が多いと感じる秋ですが、一般的には10月〜12月までの約3ヵ月間がピークと言われています。この期間は、毛周期の変化や紫外線ダメージ、乾燥などの影響が重なり、抜け毛が増えやすい時期です。しかし、これらの要因は一時的なものであり、生え変わりの過程で抜け毛は自然に治まることが多く、特に心配する必要はありません。ただし、抜け毛が長期間続いたり、頭皮に異常があったりする場合は、薄毛やFAGA(女性男性型脱毛症)などの病気の可能性もあります。
「通常毛周期により、ある程度抜け毛があることは普通のことです。しかし、明らかに抜け毛の量が多い場合や全体のハリやコシがなくなったり、生え際や頭頂部が特に薄くなったと感じる場合はFAGAの可能性があります。大きな違いとしては、FAGAは主に女性ホルモンの分泌量の低下が要因で発症するということです。徐々に進行してしまうので、FAGAと疑われる症状がある時は、早めに専門医療機関に相談しましょう」(共立美容外科・磯野智崇さん)
◆シャンプーや保湿、栄養バランスだけでなく、1日5分の頭皮マッサージにも期待
過剰な抜け毛を防ぐためには、以下のような対策を行うと効果的です。
(1)シャンプー選び:頭皮を清潔に保ち、血行を促進することで、髪の毛に栄養や酸素を届けることができます。シャンプーは適度な回数と方法で行い、頭皮に合った製品を選びましょう。洗浄力が強すぎるシャンプーは、頭皮や髪の毛に必要な油分や水分を奪ってしまいます。そのため、アミノ酸系やノンシリコン系など、頭皮や髪の毛に負担の少ないシャンプーを使いましょう。また、シャンプーの際は爪を立てずに指の腹で優しくマッサージするようにしましょう。洗いすぎや洗い残しも抜け毛の原因になりますので、適度な量と時間で洗うことが大切です。
(2)頭皮マッサージ:頭皮マッサージで血行を促進することは、抜け毛対策に効果的です。頭皮マッサージは、頭皮の血流を促し、毛根に栄養や酸素を届けることができます。また、頭皮のコリや緊張をほぐすことによるリラックス効果もあります。頭皮マッサージは、シャンプーや入浴時だけでなく、日中でも手軽に行えます。1日5分程度でも効果が期待できますので、習慣化してみましょう。
(3)紫外線対策:夏だけでなく秋でも必要です。紫外線は年間を通して降り注いでおり、特に10月は紫外線量が高い月と言われています。紫外線から頭皮や髪の毛を守るためには、帽子や日傘などを利用しましょう。また、UVカット効果のあるシャンプーやトリートメントもおすすめです。
(4)保湿:乾燥から頭皮や髪の毛を守るために重要です。保湿剤やヘアオイルなどを使って、水分や油分を補給しましょう。また、室内の湿度も50%前後に保つようにしましょう。加湿器や植物などを利用すると良いでしょう。
(5)栄養バランス:食事は髪の毛の材料となります。特にタンパク質やビタミン・ミネラルなどは髪の毛に必要不可欠です。また、血行促進効果のある食材や発毛促進効果のある食材も積極的に取り入れましょう。
さらに、育毛剤やサプリメントで栄養補給することは、抜け毛対策におすすめです。育毛剤の成分には、血行促進やホルモンバランス調整などの効果があります。さまざまな種類がありますが、FAGA(女性男性型脱毛症)に効果的なものは、DHT(ジヒドロテストステロン)の生成を抑制する成分が含まれているものです。ただし、育毛剤は個人差がありますし、副作用もある場合がありますので、使用前に医師に相談しましょう。
「当院では、FAGA治療としてHARG療法を行っています。HARG療法は、頭皮下にAAPEv2.0というヒト脂肪幹細胞由来サイトカイン製剤を注入します。個人差はありますが、注入をすることで毛乳頭細胞を修復させ、髪の毛の成長を促すことができます」(共立美容外科・磯野智崇さん)
秋は抜け毛が多い季節ですが、適切なケアをすることで減らすことができます。気になる方は、ぜひ参考にしてみてください。
【監修者】共立美容外科の副総括院長・磯野智崇さん
1995年、聖マリアンナ医科大学を卒業。1995年、聖マリアンナ医科大学形成外科に入局。1999年、東大宮総合病院整形・形成外科に入職。2002年、共立美容外科に入職。2009年、共立美容外科浜松院院長に就任。2020年、共立美容グループ総括副院長に就任。