木野瀬凛子、31歳。

大手広告代理店営業部に勤務し、この4月で9年目を迎えた。

常に凛としていて卒なく仕事をこなす凛子は、周囲から一目置かれている。

しかし本来の彼女は天才肌でもなんでもなく、必死に頑張って研鑽を重ねている努力型の人間。

張り詰めた気持ちで毎日を過ごしている。

そんな凛子には、唯一ほっとできる時間がある。

甘いひとくちをほおばる時間だ。

これは、凛子とスイーツが織りなす人生の物語。

「甘いひとくち〜凛子のスイーツ探訪記〜」一挙に全話おさらい!



第1話:金曜日の夜。社内随一のデキ女が独り訪れたのは…

凛子は学生時代からずっと、どのコミュニティにいても「できる人間」として頼られる。

切れ長の瞳に、通った鼻筋。167センチの高身長。そんな見た目が、“かっこいい”という評価につながっていることも自覚している。

学生時代にはバレー部のキャプテンを務めていたし、成績もよく、慶應義塾大学経済学部を出た。

その肩書も、デキる印象を大きく押し上げているのだろうと、他人ごとのように分析していた。

― でも…。

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第2話:「ちょっと休んでくるね…」休日デートの途中、31歳女が涙をこらえて彼氏から逃げたワケ

デートの日はいつも、早く起きて家を完璧に整えておく。キレイ好きの昌文に失望されると困るからだ。

― デートって、ほんと仕事みたい。

ワクワク、ウキウキ。そんな感情で恋愛をしたことが、凛子にはない。

目覚ましのために熱々のコーヒーをすすりながら、凛子は、ふと、過去のわびしい恋愛経験に思いを馳せた。凛子に初めて彼氏ができたのは、大学1年のことだった──。

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第3話:彼の誕生日祝いに、ディナーを予約したのに。当日夕方に届いたのは一通のそっけないLINEで…

― 会議を終えたら、今日は昌文とデートね。

あの丸ビルデート以来、昌文とはほとんど連絡をとっていない。今夜、凛子の方からきちんと謝ると決めていた。

― ちょうどいいことに、今夜は特別な夜だし。

日付が変われば、明日は昌文の誕生日だ。

先日は耳の痛い指摘をされてつい逃げてしまったが、昌文に悪気があったわけではない。だから、誕生日というきっかけを使って、きちんと仲直りをする算段なのだった。

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第4話:10歳上の彼が、若い女性を部屋に連れ込むのを目撃…。女が呆れた、彼のひどい言い分とは

声がする方に視線をやった凛子は、思わず駆け出し、マンションの前の植木の陰に逃げ込んだ。

昌文は、女性を連れていた。若くて華やかなその女性の腰に、なんと手を回している。

「な…」

隠れてその様子を見ていると、2人はエントランスを抜けて、マンションに入っていった。

― うそでしょ…。浮気ってこと?

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第5話:「あなたの浮気のせいで破局したのに…」元彼が臆さず送ってきた、とんでもないLINEとは?

帰宅してケーキを冷蔵庫に入れると、凛子はソファに体を横たえた。

「なんか、疲れたなあ」

1週間の疲労が蓄積した体に、涼しい風が当たる。

うすく開いた窓のレース地のカーテンが揺れるたびに、まだ明るい空がのぞいた。

思わずうとうとしてきたとき、凛子のスマホが震える。薄目を開けてチェックすると、昌文からの連絡だった。

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第6話:深夜の急な訪問者は、まさかの…。「あなたもう31歳よね」と言われた女が、その夜決意したこと

「え、お母さん?…どうぞ」

「解錠」のボタンを押しながら、凛子は混乱した。

― なんで?

そのまま立ち尽くしていると、しばらくして玄関先のチャイムが鳴る。駆け寄ってドアを開いてみると、母親の笑顔があった。

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第7話:仕事の休憩中にかかってきた1本の電話。女の気が動転したその内容とは?

「実は最近、一番の親友が国際結婚で海外に行ってしまって…。なんだか寂しくなって私、マッチングアプリを始めたんです。でも、デートした相手に、2人連続でフェードアウトされてしまって…」

凛子は美知と10分くらい話し込んだ。恋愛のアドバイスなど凛子には到底できないのだが、美知は話しただけでもすっきりしたようで、顔が明るくなる。

気分転換になったようでほっとしたとき、電話が鳴った。外出先にいる部長からだった。

「木野瀬さん、聞いた?秋坂さんのこと」

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第8話:期待して臨んだ初デートで、アノ話をされてがっかり…。女がモヤモヤした理由とは?

「このお店、スイーツまですべて美味しいんですよ。甘いもの好きの凛子さんに、最後まで楽しんでもらえるかと思います」
「へえ。楽しみです」

凛子の頭のなかには「これってデートなのか、友達として飲んでるのか、どっち?」という疑問が渦巻いている。

その疑問は、最初は淡いドキドキだった。

しかしコースも終盤になる頃には、モヤモヤへと変わっていた──。

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第9話:「どうして真顔に?」デートの終盤、いい感じだと思ったのに、彼の表情が突然曇り…

「ああ。秋坂さん、私今夜、本当に楽しいです」
「僕も、楽しいです」

凛子は思う。仕事に追われ、気を張りながらこなす毎日も悪くはない。

でもこうして楽しさに身を浸していると、凝り固まった全身がほどけていくような絶妙な開放感がある。

しかし高揚した気分とは裏腹に、秋坂の笑顔はなぜか徐々にしぼんでいった。

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