生理前に起こる心やからだの不調の「PMS(月経前症候群)」への理解が社会全体で高まってきている今。PMSよりも、心の不調が重い状態である「PMDD(月経前不快気分障害)」って知っていますか?

今回は、ベスリ横浜TMS醫院 医師の田中奏多先生に取材。セルフチェックをしながら、PMDDとの向き合い方や対策を実践してみて。

※解説:田中奏多先生(ベスリ横浜TMS醫院・医師)

そもそもPMDDとは?

PMDD(月経前不快気分障害)は、生理前14日〜生理開始3日後辺りにおこる“生理前の心の不調”のこと。PMS(月経前症候群)よりもイライラや落ち込みなど、心の不調が重い状態を指します。

諸説ありますが、女性ホルモンのエストロゲンの低下により、精神を安定させる脳内の神経伝達物質のひとつ、セロトニンが減少することが原因の一つと考えられています。

ただ、生理前は隠れていた普段の不調が特に 出やすくなる時期。女性ホルモンの変化だけではなく、生理前に関わらない睡眠・食事・運動などの生活の乱れ、身近な人間関係などの普段の小さなストレスの積み重なりの芽が不調として出やすい時期なのです。

PMDDの症状とは?

イライラや落ち込み、勝手に涙が出るなどの症状が多いです。PMDDの特徴として大事な人、関係性が深い人といるときに症状が強く出る傾向があります。たとえば職場ではイライラしないのに、パートナーや家族には当たり散らしてしまう、ということも。

相手が嫌いだからではなく、「自分を理解してほしい」と信頼している人にPMDDは当たります。就職、転職、引越し、パートナーができるなど生活に変化があり、小さなストレスが重なりやすい時期などは特に症状が出やすくなります。

PMDDかどうかチェックする方法は?

PMDDセルフチェックリスト

生理開始前1週間頃から生理開始後数日の間、下記で思い当たる症状はありますか? 実際に日常生活や仕事に支障が出ているものがあれば、チェックしてみてください。


集中力が低下して能率が極端に落ちる
だるさや眠気が強く寝ても起き上がれない
頭の中にモヤがかかり(ブレインフォグ)優先順位がつけられない
誰かと会いたくなくなり、引きこもりたくなる
大事な人へ理不尽なことを言っているのがわかるのに、言ってしまう
イライラして誰にでも当たりたくなり、感情コントロールができない
パートナーとの喧嘩が増える
生理が始まるとハッとなり、当たってしまった自分に自己嫌悪する

もしチェックが3つ以上ついたなら、PMDD専門の医療機関に相談してみましょう。

PMDDとの向き合い方は?

まずは、自分の女性ホルモンの波を見てみましょう。生理周期を記録してみるのもいいと思います。生理周期のどこで調子が良くなって、生理周期のいつから調子が悪くなるかなど、どの生理周期で体調が良いかは人によって異なります。まずは自分の生理周期と傾向を確認しましょう。また、PMDDでは、相手に「察してほしい」という気持ちになることが多いです。しかしながら、パートナーや家族、周りの人はあなたとは異なる人間のため、あなたを察することは難しいです。何を相手に察して欲しいのか、何をしてもらったら嬉しいのかをできるだけ小さなことをお願いしてみましょう。

たとえば、手をつなぎたい、一緒にアイス買いにいきたい、頭を撫でるなど、準備が必要なく、その場ですぐできる、小さなことのほうが良いです。

自分の機嫌が悪い時に小さな嬉しいことをお願いする癖をつけると、相手もだんだんと察せるようになってきます。一度に大きなお願い事をするよりも、してほしいこと、してもらって嬉しいことを分割して伝える力を、PMDDに悩む本人が養えるようになるといいですね。

PMDDに悩む家族やパートナーのサポート方法は?

PMS・PMDDは他の病気と異なり、家族やパートナーの理解と協力で症状はかなり軽減されます。まずは周りも、生理前〜生理開始数日後に不調になる“ピリオド(周期)”を理解することが大切。

パートナーや家族の関係の中で仲直りの決まりを作っておくのもいいと思います。それでも相手がPMDDに苦しんでいるなら、クリニックの受診を勧めてみてください。

日常的にできるPMDD対策は?

睡眠・運動・食事や人間関係など、日々の小さなストレスの積み重ねがPMDDを引き起こすので、下記の対策を心掛けましょう。


睡眠、食事、運動などの規則正しい生活
朝、光を浴びてセロトニンの分泌を促す
夕方に体温を上げて夜眠りにつきやすいリズムを作る
入眠前に湯船につかって副交感神経を優位にする

体の波は心の波と連動します。特に睡眠不足、睡眠リズムが乱れたときには生理前の不調が出やすくなります。意図的に生活のポイントを押さえ、睡眠の質を上げることを意識するといいと思います。

クリニックや病院へ相談するタイミングは?

相談は、ちょっと不調を感じる、寝つきが悪くなる、大切な人にあたってしまったなど、どのタイミングでもOKです。女性ホルモンの不調は、生理痛やニキビ、出血が多いなど短期的なトラブルだけでなく、将来的な不妊が関係することも。気になることがあれば、生理前後の不調が繰り返されなくても相談してみてください。

PMDDは、精神心療内科と婦人科の間に挟まれた領域。どちらに相談するのでも問題ないですが、ホームページなどの診療内容にPMDDの項目がある医療機関で、個人に合わせた治療を行なってもらえるところがおすすめです。

クリニックでのPMDD治療法は?

年齢や生活スタイル、ニーズ、また生理前後の不調がどの時期に、どれくらいあるのかによって異なってきます。


低用量ピル大事なイベントから生理期間をずらす、生理痛の予防、ニキビの予防などライフプランを大事にしたい
漢方ピルや抗うつ薬ではなく、からだにやさしい治療をしたい
抗うつ薬できるだけ早くPMDDに対する効果を得たい
TMS治療(薬に頼らない磁気治療)妊活中・受験生など依存性や副作用のため抗うつ薬が使いにくいが、早く効果を得たい
生活カウンセリング(睡眠専門外来)不調になる前に予防したい、朝すっきり起きたい、生理前の眠気が強い、ホルモンを自立して安定できるようになりたい
こころカウンセリング・ビジネストレーニング自分の過去・現在・未来を整理したい、仕事の人間関係などに悩む方

ベスリTMS横浜醫院では個々に合わせた様々な治療法を組み合わせて行うので、まずは気軽に受診してみてください。

田中 奏多(たなか かなた)先生・ベスリ横浜TMS醫院 医師、産業医

福島県立医科大学卒業 マサチューセッツ大学MBACourse在学、ハーバード大学TMSコースを修了。「働く人を支える」薬に依存しない医療を展開するBESLI CLINICを2014年に協同創設。働く人に対する心身医療を元に、MBAの視点から健康経営を支える産業保健を行っています。不妊治療の現場にいた経験を活かし、女性ホルモンの細やかな変化や、妊活、妊娠、出産等を含めた働く女性のケアを行います。和漢(東洋医学)、女性ホルモン、睡眠をベースに女性に優しい抗うつ治療のTMS治療を専門的に行うなど、女性の健康をサポートしています。