出会いも低コスト化? 「合コン」が終わってる理由【カレー沢薫 アクマの辞典】
漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」
このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!
【ゴ】
➤「合コン」(ごうこん)
今回のテーマはガ行から「合コン」である。
合コンと言えば貴重な男女の出会いの場だったのだが、最近では出会いを求めるなら専らアプリで、「合コンはオワコン」などとささやかれているそうだ。
この、全く無意識に「このカレーは辛れぇ」と言ってしまい意図せずスベるという構図が完成している時点で合コンは終わっている。
しかし、合コンは終わった、と言うものの、合コン世代であろう中高年に聞いてみると「合コンをしたことがない」という、終わる以前に始まってなかった層がかなり多いのだ。
おそらくこれが、合コンが終わり、アプリが主流になった理由だろう。
まず、私の近くにいる人々、つまり、私が「合コンしたことあるか?」と聞けるような連中は、全員非リア充である。
要するに、合コンというのは開催するまでに万難がありすぎて、非リアには無理なのだ。
そもそも「合コン」とは何かというと「合同コンパ」の略だ。コンパとは飲み会という意味で、「二つのグループ」が出会いを求めて一緒に飲み会をするから「合同コンパ」と言われている。
その「二つのグループ」を用意するのが、どれだけ大変か、という話である。
まず「一つのグループ」に所属するのすら難しく、体育の時間に「三人組を作れ」というミッションを「先生」というカードを使わずにクリアできたことがない人間に「二つのグループ」など無茶がすぎる。
ただ、合コンとは「二つのグループ」を一人で用意するものではないと思う。
おそらく異性の友人などに「こっちは女の子集めるから、そっちは男集めてよ」とやるのが、スタンダードな合コンのセッティング方法だと思われる。
しかし、この「異性の友人」という存在がまずイマジナリ―なのである。
仮にいたとしても「メンツを集められる友人」である可能性は低い。
学生時代、自分と同じタイプ同士で固まることにより、教師の家庭訪問を回避する人間で構成されたグループというのは、全員コミュ症で交友関係が狭いため、合コンをセッティングできる人材などほぼ皆無なのである。
つまり「合コン」というのは選ばれし者しか利用できない出会いの場なのだ。
それに対してアプリの出会いツールは誰でも使える、少なくとも利用規約に「まず三人組を作れ」とは書かれていない。
また「合コン」というのは何だかんだで近しい人間関係の中で行われるため、トラブリューが起こったら厄介だし、やらかした場合はそれが広まってしまう。
その点アプリでの出会いというのは、やり取りが切れればそれまでの場合が多い。
出会うまでもそうだが、敗戦処理のコストも合コンよりアプリのほうが圧倒的に安いのである。
しかし、出会いのコストが安くなり、さらに選択肢が広がったために「出会いを大切にしなくなってきた」とも言える。
「別に、こいつじゃなくてもいいや」とすぐ切られやすくなったということだ。
切られないためには「こいつじゃないと」と思われなければならない。
結局のところ「高スペックの人間のほうがモテる」という構図はリアルでもアプリでも変わらない。
むしろ「年収」などがプロフィールで可視化されていない合コンのほうがまだ優しいとも言える。
--------------------------
■ガ行
【ガ】
➤「学生結婚」(がくせいけっこん)
…デキ婚であることに触れられたくないときは、こちらを全力でフューチャーする
【ギ】
➤「偽装結婚」(ぎそうけっこん)
…マンガでは恋愛関係になるきっかけだが、リアルではどうしても戸籍をいじりたいときに使う
【グ】
➤「群馬」(ぐんま)
…群馬を「未開の地」と呼ぶなら、「人類未誕生の地」と言わざるを得ない田舎が山ほど出てくる
【ゲ】
➤「劇団員」(げきだんいん)
…美容師やバーテンダー的には、頭文字がBというだけで、こいつを差し置いて「つきあってはいけない」扱いされるのは納得がいかないのではないか
【ゴ】
➤「合コン」(ごうこん)
…1回でも参加したことがあると言うと「お前あっち側の人間かよ」扱いされるので注意
ライタープロフィール
カレー沢薫
漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。『ひとりでしにたい』 (モーニング KC)『きみにかわれるまえに』 (ニチブンコミックス)も発売中。
このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!
■第71回 アクマの辞典 ガ行
【ゴ】
➤「合コン」(ごうこん)
今回のテーマはガ行から「合コン」である。
合コンと言えば貴重な男女の出会いの場だったのだが、最近では出会いを求めるなら専らアプリで、「合コンはオワコン」などとささやかれているそうだ。
この、全く無意識に「このカレーは辛れぇ」と言ってしまい意図せずスベるという構図が完成している時点で合コンは終わっている。
おそらくこれが、合コンが終わり、アプリが主流になった理由だろう。
まず、私の近くにいる人々、つまり、私が「合コンしたことあるか?」と聞けるような連中は、全員非リア充である。
要するに、合コンというのは開催するまでに万難がありすぎて、非リアには無理なのだ。
そもそも「合コン」とは何かというと「合同コンパ」の略だ。コンパとは飲み会という意味で、「二つのグループ」が出会いを求めて一緒に飲み会をするから「合同コンパ」と言われている。
その「二つのグループ」を用意するのが、どれだけ大変か、という話である。
まず「一つのグループ」に所属するのすら難しく、体育の時間に「三人組を作れ」というミッションを「先生」というカードを使わずにクリアできたことがない人間に「二つのグループ」など無茶がすぎる。
ただ、合コンとは「二つのグループ」を一人で用意するものではないと思う。
おそらく異性の友人などに「こっちは女の子集めるから、そっちは男集めてよ」とやるのが、スタンダードな合コンのセッティング方法だと思われる。
しかし、この「異性の友人」という存在がまずイマジナリ―なのである。
仮にいたとしても「メンツを集められる友人」である可能性は低い。
学生時代、自分と同じタイプ同士で固まることにより、教師の家庭訪問を回避する人間で構成されたグループというのは、全員コミュ症で交友関係が狭いため、合コンをセッティングできる人材などほぼ皆無なのである。
つまり「合コン」というのは選ばれし者しか利用できない出会いの場なのだ。
それに対してアプリの出会いツールは誰でも使える、少なくとも利用規約に「まず三人組を作れ」とは書かれていない。
また「合コン」というのは何だかんだで近しい人間関係の中で行われるため、トラブリューが起こったら厄介だし、やらかした場合はそれが広まってしまう。
その点アプリでの出会いというのは、やり取りが切れればそれまでの場合が多い。
出会うまでもそうだが、敗戦処理のコストも合コンよりアプリのほうが圧倒的に安いのである。
しかし、出会いのコストが安くなり、さらに選択肢が広がったために「出会いを大切にしなくなってきた」とも言える。
「別に、こいつじゃなくてもいいや」とすぐ切られやすくなったということだ。
切られないためには「こいつじゃないと」と思われなければならない。
結局のところ「高スペックの人間のほうがモテる」という構図はリアルでもアプリでも変わらない。
むしろ「年収」などがプロフィールで可視化されていない合コンのほうがまだ優しいとも言える。
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■ガ行
【ガ】
➤「学生結婚」(がくせいけっこん)
…デキ婚であることに触れられたくないときは、こちらを全力でフューチャーする
【ギ】
➤「偽装結婚」(ぎそうけっこん)
…マンガでは恋愛関係になるきっかけだが、リアルではどうしても戸籍をいじりたいときに使う
【グ】
➤「群馬」(ぐんま)
…群馬を「未開の地」と呼ぶなら、「人類未誕生の地」と言わざるを得ない田舎が山ほど出てくる
【ゲ】
➤「劇団員」(げきだんいん)
…美容師やバーテンダー的には、頭文字がBというだけで、こいつを差し置いて「つきあってはいけない」扱いされるのは納得がいかないのではないか
【ゴ】
➤「合コン」(ごうこん)
…1回でも参加したことがあると言うと「お前あっち側の人間かよ」扱いされるので注意
ライタープロフィール
カレー沢薫
漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。『ひとりでしにたい』 (モーニング KC)『きみにかわれるまえに』 (ニチブンコミックス)も発売中。