40代で一気に「顔の老化」が進む人が毎朝食べているもの
※本稿は、池谷敏郎『老いは止められる』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。
■「血管メンテナンス」で老い知らず
東京・あきる野市に池谷医院を開院してから25年間、数多くの方々の血管の検査・治療を行ってきました。開院当初からずっと通い続ける患者さんもたくさんおられます。
血管のメンテナンスをずっと担当させていただいた成果は、患者さんたちの姿を見れば、一目瞭然です。みなさん、実年齢よりもずっと見た目に若々しく、元気で、生き生きとしているからです。
「老いを止められた」患者さんたちへ、私が一体何をしたのか? まして、美容やアンチエイジングの専門家でもない、内科・循環器を専門とする医師である私が「なぜ若さを保つ方法を教えられるのか?」、そう疑問に思う方もいるかもしれません。
■外見も中身も、「若さ」=「血管年齢」
その答えは、人間の「見た目の若さ」も「中身の若々しさ」も、イコール「血管の若さ」だからです。あまり知られていませんが、「血管年齢が若ければ見た目も中身も若く、血管年齢が老けていれば見た目も中身も老けている」という科学的事実があります。
見た目年齢を大きく左右する肌の状態ひとつとっても、皮膚の細胞を維持する栄養や水分や酸素を届けているのは、血管であり、その中を流れる血液です。血管の機能や活動が衰えれば、当然ながら肌へ必要なものを届ける働きも衰えて、肌が老いる……というわけです。
見た目に若々しく、無駄な脂肪がついてないスリムな体で、どこにも痛みや不調がない。
めざすのは、こうした健康を基盤とする若々しさです。この状態になると、気持ちも行動も大きく変わります。「若返ったね!」と人から褒められるようになるので、うれしくなってどんどん体によい選択、行動をするようになります。毎日が楽しくなって、気持ちが上向きます。
■「もともとの美醜」より「見た目の若々しさ」が大事
私自身、20年前まで、不摂生とストレスから今よりも15kgも太っていたうえ、実際の年齢よりもずっと老けて見られていました。現在58歳ですが、身長173cm、体重は64kg、体脂肪率10%、血管年齢は28歳です。今のほうが見た目も血管年齢も気持ちも、自分ではずっと若々しいと自負しています。
みなさんも、もしかしたらお気づきかもしれませんが──年齢を重ねるほど、「もともとの美醜」よりも「見た目の若々しさ」を保つことの価値が上がってきます。
「その年齢にぜんぜん見えない! 若いですね」と言われることが、最上の褒め言葉になるのです。
50代になって心から実感するのは、実年齢が増すほど、見た目の若さを保つことで気持ちも若く、ポジティブでいられる、ということです。毎日ががぜん楽しくなるので、「また太って老け込んだ自分に戻りたくない!」と、若さを保つための努力が苦にならなくなります。
■「老け顔」の原因も血管の老化かもしれない
20代、30代、40代と年を重ね、ふと鏡に映った自分の顔を見て、しわやたるみなどの老化の“しるし”に気づいたとき──いくつであっても、思わず「老けたなあ……」とため息をつき、落ち込んでしまいますよね。
実は、人の第一印象を決め、見た目年齢に最も影響する「顔の老化」は、体内の血管が老化することから始まります。
私の病院の患者さんでも、血管年齢が高い人ほど、顔にはしみ、しわ、たるみが目立ち、実年齢よりも老けて見えることがほとんどです。
それを医学的に明らかにしたデータもあります。抗加齢皮膚ドックを受診した273人の血管年齢と実年齢の関係を調べたところ、血管が若いほど見た目も若く、血管が老化しているほど見た目にも老化していることが確かめられたのです(愛媛大学医学部附属病院調べ)。
■血管は肌へ“美容液”を届けている
血管と見た目の老化がリンクするのは、前述の通り、血管が全身の皮膚に必要な栄養や酸素、水分を運び、同時に老廃物を回収する働きを行っているからです。
血管には、「動脈」「静脈」「毛細血管」の3種類がありますが、血管全体の99%を占めているのは毛細血管です。動脈と静脈の間をつなぎ、動脈からは栄養素や酸素、水分を受け取り、静脈へ細胞から回収した老廃物や二酸化炭素を受け渡しています。一人の人間の血管の長さを合わせると、地球2周半にもなるといわれています。
皮膚の下には毛細血管が隙間なく張り巡らされ、皮膚の機能と働きと生まれ変わりをサポートしています。そして血管年齢が若いほど、血管がしなやかに広がるため、血流もよくなって血液がより多く、皮膚のすみずみまで届くため、肌の状態も当然ながらよくなります。
つまり、血管は、体の内側から肌を美しく保つための「美容液」を届ける役目を担っているのです。
ところが加齢とともに、全身へ血液を運ぶ動脈の壁は厚くなり、硬化してしなやかさを失っていきます。これが血管の老化、すなわち動脈硬化です。動脈硬化が進行すると、血流が悪くなり、肌への美容液の供給が滞るようになります。すると、水をもらえない植物のように肌はしおれ、みるみる老化する──というわけです。
■40代から激減する毛細血管が「老い」を進ませる
さらに、動脈の末端につながる毛細血管も、加齢とともに減少していくことが分かっています。20代をピークに、40代から徐々に減少し始め、60代になると20代と比べ40%もの毛細血管が失われるといわれています。
つまり、単純に考えても、20代の頃よりも皮膚へ血管が届ける「美容液」が半減してしまう、ということです。
見えない血管が硬くなったり、その数を減らしたりしていることで顔が老けていく。「じゃあ自分ではどうしようもない……」とがっかりしてしまうかもしれませんが、大丈夫、安心してください。
何歳になっても血管をしなやかにしたり、毛細血管を増やしたりすることはできます。
■甘いコーヒー、朝の菓子パンを好む人の「糖化」「酸化」リスク
血管を若返らせるためには、血管を劣化させるような習慣をまずは改める必要があります。それを大前提にすることで初めて、血管の数としなやかさを保つための施策が効果を現します。
血管にダメージを与えて老化させる大きな要因は2つあり、1つは「糖化」、もう1つは「酸化」です。それぞれについて、説明していきましょう。
「老いる人の習慣」としてよくあるのが、次の3つです。
1.「コーヒー、紅茶には砂糖を欠かさない」
2.「購入するペットボトルは甘い清涼飲料水」
3.「朝食は、頭の働きをよくするために甘い菓子パンを食べる」
なぜこれで老いるのかというと、この行動はすべて、血糖値を急激に上げて血管を「酸化」させてしまうからです。
■血管をボロボロにする「血糖値スパイク」と「活性酸素」
砂糖や清涼飲料水、菓子パンには多くの糖質が含まれていることは、みなさんすでにご存じかと思います。
血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の量を示すものです。食事で摂取された糖質が消化・分解されるとブドウ糖となって血管内に送り込まれるため、血糖値が上がります。すると、すい臓から「インスリン」という血糖値を下げる働きをするホルモンが分泌されます。
このとき、多量の糖質を一気に摂ることで、血糖値の上がり方も急激になります。すると分泌されるインスリンの量も増えるため、今度は一気に血糖値が下がりやすくなります。
このように、短時間のうちに血糖値の乱高下が起こることを「血糖値スパイク」といいます。
この血糖値スパイクが繰り返されることで、血管内の細胞には大量の「活性酸素」が発生することが分かっています。活性酸素は細胞を強力に酸化させ、ボロボロに傷つけ、劣化させてしまうことで知られていますね。
血管が傷つく、傷ついた血管が修復される……この繰り返しで、血管内の壁は徐々に分厚さを増し、動脈硬化の原因となっていくのです。
■最強の老化物質「AGEs」が体を破壊する
また、血糖値が異常に高い状態を「高血糖」といいますが、この状態を繰り返すことで、血管の老化が進行します。
血管の主要な材料は、たんぱく質です。血液中に多量のブドウ糖があふれている高血糖状態が繰り返されると、このブドウ糖と血管壁のたんぱく質が結びつき、「糖化」という現象を起こします。血管壁に糖化が起こると、酸化ストレスによって血管の働きが阻害されたり、組織に変性が起こったりすることから、動脈硬化が進行してしまうのです。
糖化反応で変性したたんぱく質は、「AGEs:エイジーイーズ(終末糖化産物)」と呼ばれます。
AGEsは血管だけでなく、体のあちこちで発生、蓄積され、酸化ストレスによって体内をどんどん老化させるやっかいものです。さらに、AGEsは血管壁の内部にも侵入し、そこに炎症を引き起こすことによって、動脈硬化の進行に拍車をかけることも分かっています。
■「甘いもの好きほど、見た目が老ける」
AGEsが肌に発生すれば、肌のコラーゲンに変性を起こして弾力を失わせ、しわ、たるみがどんどんできる……という、ゾッとするようなことが起こります。血管の動脈硬化との相乗効果で激しく老化を加速させるのが、酸化と糖化。
「甘いもの好きほど、見た目が老ける」と心に刻んでおきたいものです。
また、AEGsの蓄積によってがんや認知症のリスクが上がるともいわれています。糖尿病のリスクを上げることについては、言わずもがなです。
血糖値スパイクや高血糖を起こさないためには、日常的に糖質が控えめな食事を心がける必要があります。何をどう食べると血糖値が上がりにくくなって、何が血糖値スパイクを起こすのか? それを頭に入れておくことは「老いを止める」ことに役立ちます。
具体的な食事法については拙著『老いは止められる』(エクスナレッジ)で紹介していますので、ぜひこちらも参考にしながら、脱・老化生活を始めてください。
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池谷 敏郎(いけたに・としろう)
池谷医院院長、医学博士
1962年、東京都生まれ。東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。97年、医療法人社団池谷医院理事長兼院長に就任。専門は内科、循環器科。現在も臨床現場に立つ。生活習慣病、血管・心臓などの循環器系のエキスパートとして、数々のテレビ出演、雑誌・新聞への寄稿、講演など多方面で活躍中。東京医科大学循環器内科客員講師、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会認定循環器専門医。著書に『50歳を過ぎても体脂肪率10%の名医が教える 内臓脂肪を落とす最強メソッド』(東洋経済新報社)、『「末梢血管」を鍛えると、血圧がみるみる下がる!』(三笠書房)、『血管を強くして突然死を防ぐ!』(PHP文庫)などがある。
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(池谷医院院長、医学博士 池谷 敏郎)