「アジア最大級の映画の祭典!」と高らかに宣言しながらも、毎年ひっそり始まりひっそり終わることで有名な第25回東京国際映画祭(10/20土〜10/28日)に行ってきました。

巷のニュースではオープニングセレモニーで前田敦子さんがグリーンカーペットを歩いたことくらいしか触れられていない気がしますが、海外からも多数ゲストを招き、興味深い作品も多い映画祭なので、あまり知られていないのは少しもったいない気がします。主催者の方はもっとぐいぐい盛り上げてほしいなと思いました。

さてそんな東京国際映画祭のラインナップの中から、この度シネマ守銭奴が取り上げたのは、交通事故で記憶障害を負ってしまったディジュリドゥアーティストGOMAのライブドキュメンタリー映画『フラッシュバックメモリーズ3D』です。まさかの3Dドキュメンタリー!「涙で3Dが見えない。GOMAだけに50,000円!」
3D映画というと主に2つのタイプがあります。ひとつは「3D映像が作品の世界観にばっちりハマってる」タイプで、もうひとつは「これ3Dじゃなくてよくね?」タイプです。『フラッシュバックメモリーズ3D』はどうかと言うと、内容がわりと地味めな音楽ドキュメンタリーなので、「まさにこれ3Dじゃなくてよくね?」と思ってしまうかもしれません。正直自分も観る前はそんな気がしてました。ところが、実際観てみたところ、これがなんとも新鮮で感動的な3Dでびっくりしました。

GOMA氏がステージでディジュリドゥ(アボリジニーの楽器)を演奏し、その背景一面にはGOMA氏の思い出の写真や動画の数々が一つの映像として映し出されていきます。ディジェリドゥの大地からわき上がるような音によってGOMA氏の思い出の数々が背景に投影されているように見えるのです。そして思わずドキッとしてしまうのは、それらの思い出の映像の多くは、事故の後遺症によってGOMA氏の記憶からは消えてしまっているということです。

背景一面に映し出される映像の後半では、事故から現在に至るまでの絶望と希望がGOMA氏と奥さんの日記を通して伝えられます。そして感情を揺さぶるかのように演奏はますます勢いをましてゆきます。恥ずかしながらラストの方では3Dメガネをいったん外さなければいけないほど目が潤んでしまいました。

劇中に使われているアニメーションもとても効果的で素晴らしかったです。そしてなにより単純にライブ映像としてもかっこよく、手を奇妙にくねらせながらディジュリドゥを吹くGOMA氏はまるで魔法使いのようでした。前にサッカーの応援グッズでブブゼラという楽器が注目されましたが、ディジュリドゥで応援した方が敵は確実にビビると思います。

3D映画に関してはいまいち不作な日本でしたが、ここにきて熱い3D映画が登場したと言えるのではないでしょうか。ざっと見積もって3,000円くらいの価値があると思いますが、GOMAだけにここは50,000円で!




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「フラッシュバックメモリーズ 3D」
ストーリー:追突事故で高次脳機能障害を負ったディジュリドゥ奏者GOMAの復活の過程を妻すみえの日記を交えて描く家族愛に溢れたドキュメンタリー。ス タジオライブの映像と、突然頭の中に映像が浮かんでくる「フラッシュバック」という症状をアニメで表現した、斬新な映像作品。
監督: 松江哲明
キャスト: GOMA ほか
上映時間: 72分
2012年/日本

 オフィシャルサイト
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死後
イラストレーター。1977年生まれ、愛知県出身、東京在住。蟹座。 「死後」という使いづらいペンネーム且つ節操のない画風で、雑誌、書籍、CD、web等、様々な媒体で活動中。
主な仕事・・・NHK「おやすみ日本」眠いい昔話コーナー/CD『ほーひ』mmm/書籍『コケはともだち』藤井久子著/雑誌anan、BRUTUS他  ホームページ