日本の伝統文化で、だいぶおカタいと思われがちな歌舞伎。しかしその実際は、レディ・ガガ級の女性に始まり、ジャニーズJr.なみの美少年ショーを経て完成していった、江戸時代の庶民の娯楽でありました。というのが、前回のお話でした。これで少し、歌舞伎を観に行ってみようかと思われた方がおられましたらこれ幸い。
 
 けれども、いざ行って観てみようと思っても、歌舞伎には一体どんな内容のものがあるのかは気になるところです。わかりづらくて重々しい、腹を切るだの敵討ちだのばかりで、観るにも覚悟が必要だ!と思っている方も多いかもしれません。
 
 ところがどっこい、歌舞伎はもともと江戸時代の庶民の娯楽。現代の何かで例えるならば、それはまさしくテレビドラマ。つまり、老若男女が楽しめる、色々なテイストのお話があるのです。それが以下のお話たち。


とにかく強い神出鬼没のヒーロー

天下を狙う大悪人が、善人たちを皆殺しにしようとしたまさにその時「しばらく!(ちょっと待った!)」の声。そして登場したのは、見るからに派手なスーパーマン…『暫』



日本の”オーシャンズ”5。

買い物に入った呉服屋で、万引きの疑惑をかけられた美しい武家の娘。結局、万引きの事実はなかったと判明したが、その額には呉服屋の番頭につけられた傷が……、呉服屋は窮地に立たされる。実はこの娘、弁天小僧菊之助という女装した盗賊で……『弁天娘女男白浪』、


N◯Kを超える大河ドラマ。

平家を倒したにも関わらず、兄の源頼朝に疎まれて命を狙われる源義経。そしてその逃げ延びていく先々には、義経に復讐を企む平家の残党たちが…『義経千本桜』


夫v.s.恐妻…普遍のコメディ。

召使いに身替わりの座禅をさせて恐妻の目をだまし、愛人に会いに行った大名。早朝に帰ってくるとその一夜のことを、まだ座禅をつづける召使い相手に、のろけたっぷりに話しだす。しかしそこで座禅していたのは…『身替座禅』


みんな知ってる”忠臣蔵”の原型。

高師直のいびりに耐えかね、江戸城内で刃傷沙汰を起こした為に、切腹となった塩冶判官。大星由良之助ら塩冶家の家臣たちは、敵討ちを決意する…『仮名手本忠臣蔵』




劇場がお化け屋敷化、怪談の名作。

隣家から差し入れられた毒薬で顔が崩れた末、無念の死を遂げたお岩。貧乏に辟易していた夫の伊右衛門は、お岩の死の直後、裕福な隣家の娘と結婚する。そして初夜を迎えようという時、お岩の亡霊が…『東海道四谷怪談』



じんわり沁みる夫婦愛。

単身赴任中に過ちから人を斬ってしまい、そのまま拘置された夫。それから37年。ようやく、すっかり老いた夫婦は再会を果たし…『ぢいさんばあさん』


昼ドラ以上の波瀾万丈。

自分を犯して立ち去った男が忘れられず、その子どもまで産んだ桜姫。男と再会し所帯を持つものの、女郎に身を堕とした桜姫は、思いがけない男の正体を知る。そして桜姫は我が子と男を…『桜姫東文章』


本当にあった無差別殺人。

吉原イチの花魁に一目惚れした田舎の商人。吉原に通いつめ、その花魁を身請けしようというとこまでこぎつけるも、仲間の目の前で花魁にこっぴどくフラれてしまう。それから4ヶ月後、再びやって来た商人の手には名刀が…『籠釣瓶花街酔醒』




童貞男と”峰不二子”、世紀の一戦。

朝廷の約束破りに腹を立て、神通力で龍神を封じ込め、雨が降らないようにした高僧。そこへ突然、絶世の美女がやってきて高僧に色じかけし始める。女性を知らない高僧はついに…『鳴神』


 これほどにバラエティに富んだ作品が、歌舞伎の演目にはあります。観たい演目を狙い定めて行くもよし。ふらっと劇場に足を運んで、思いがけない話に遭遇するもよし。テレビドラマを観るくらいの気軽さで、歌舞伎を観に行ってみませんか?