堅実女子のお悩みに、弁護士・柳原桑子先生が答える連載です。今回の相談者は佐川綾香さん(仮名・35歳・広告代理店勤務)

「3か月前に、私の部署に10歳年下の後輩が異動してきました。私はマネージャー職なので、彼は部下にあたります。その後輩男性に、私は一目で恋をしてしまいました。

落ち着いていて、つかみどころがない感じや、独特の空気感。持っているバッグやスマホケースのセンスのよさ。個人的に話が合いそうなことは、とてもよくわかります。

スマホ画面をチラ見して、彼のインスタのアカウントを特定。それをさかのぼり、よく行くお店や友人関係、好きな音楽などを調べ上げ、そこから大学などを検索しまくり、元カノらしき人、彼が力を入れている社会活動も調べました。

先日、さりげない感じで彼がよく行く店にも行ってしまい、おそらくここが家だというマンションも突き止めてしまいました。知れば知るほど、仕事が手につかないほど好きになってしまい、いつもドキドキしています。

会社の飲み会で、彼女がいるかどうか聞いたら『いません』とだけ答えてくれました。その翌日から、さりげなく私のそばにいて、仕事のフォローをしてくれることも多いです。先日は、ヘアスタイルを変えたことに気が付いてくれました。

彼の趣味はインスタで調べ上げており、あるマニアックな映画の上映の情報を見つけました。絶対に彼は好きだと思い、私から誘って一緒に観に行きました。帰り道に思い切って彼に告白したところ、『佐川さんのことは尊敬していて、とても気が合う人だと思っています』と言われ、イエスともノーとも言われないままにされてしまいました。

以降も彼の態度に変わりはなく、さりげなく思いを伝えているのですが、毎回うやむやにされています。拒絶されている気配も感じられないので、アタックし続けたいのですが、私のこの行動はセクハラになるのでしょうか。

セクハラ・パワハラ問題が社会問題になってから、業務以外の話題や行動が引っかかるようになっています。私が何らかの勧告を受けたり、クビになるようなことがないために、知識を知っておきたいのです」

柳原桑子先生のアンサーは……!?

セクハラについては、行為者がどう思おうと、された方が嫌だと思えば、性的嫌がらせ……すなわちセクシャルハラスメント(セクハラ)と判断される可能性が高いのです。

今、セクハラは男性・女性に関わらず、できるだけ広義に解釈されるものだと理解しておくべきです。

セクハラについて、特に意識して知っておきたいことは下記です。

告白のみならず、食事やデートへの執拗な誘いも、セクハラになりうる可能性が高く、回数によるものではない。

あなたには彼に対する嫌がらせの意思はなく、愛情に基づくものだと考えていても、平均的な男性が精神的苦痛を感じる程度の態度や頻度で告白等の言動を行なえば、それはセクハラになりうることもあるのです。

彼の立場や気持ちに目を向けず、自分の気持ちのみで突っ走れば、彼に精神的苦痛を与え、セクハラと判断される可能性が高くなることを心するべきでしょう。彼の反応を考えずに押す一方なのは、好かれるどころかかえって嫌われてしまいます。自分の社内の立場を考えながら、冷静に行動することも大切なのではないでしょうか。

特に会社内の場合は、慎重な行動を選んだ方が無難だと思ってください。

年下の部下から、いつも見守られているように感じることで、恋心が盛り上がったという。



■賢人のまとめ
愛情や好意をからの行動であっても、セクハラになりうるケースは多々あります。何らかの問題が発生することを恐れるのであれば、慎んだ方が無難かもしれません。

■プロフィール

法律の賢人 柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士。

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/