PTAとは?

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春は、かわいいわが子の入学・進級シーズンですが、母親にとっては憂うつな季節でもあります。それは入学式などの後の保護者会で必ず行なわるPTA役員選び。

好きで役員を引き受ける人はほとんどいないのが現実でしょう。あの手この手で「押し付け合い」が行なわれていますが、インターネット上で「欠席戦術」で逃げ切った投稿が話題を呼んでいます。

一方、正々堂々とPTAと闘い、「役員免除」を勝ち取った人もおり、PTAの役員選びを乗り切るコツを本人から聞いてみました。

「切迫早産」なのにまったく考慮されない

「欠席戦術」で話題になったのは、女性向けサイト「発言小町」(2017年1月29日)の「PTAやらなかったの私だ」という次のような投稿(要約抜粋)。

「フルタイムで働いている6年生の母親です。6年生まで立候補しなかったら勝手に広報部にされました。退会届を出して抵抗してもムダと思い、部長を決めるくじ引きの日も欠席、学校からの電話にも一切電話に出ないようにしています。子どもの卒業まで数か月。ずるいと思う親も多いでしょうが、私のように誰かが悪者にならないと、何も生み出すものはないでしょう」

この投稿には激しい賛否両論が起こりました(要約抜粋)。

「やる気がないなら1年生の時に退会してください」
「精々頑張って逃げ続けてください。中学でもPTAありますよ。小学校で悪目立ちした人は責められる確率高いです」
「こんな悪どい人がいるから、他の役員さんは大変だわ」

などと非難する一方、こんな共感の声も。

「正当防衛です。よく頑張られましたね。仕事をしていると、『平日の会議には出られないから自宅で○○やるわ〜』と申し出て欲しいと言われますが、それ、意味ないです。自宅でもやる時間も体力もないから『できない』と言っているのですから。PTAは腐っています。もう国主導で改革をしなければダメ」

PTAは任意団体だから、本来、入退会は自由です。そのため、役員選びも本人の意思を尊重するのが建前ではあります。

しかし、現実には嫌々役員にさせられている人が非常に多い。2014年3月3日付の週刊誌「アエラ」の「横暴すぎるPTA役員選び 切迫早産なのに免除されない」は反響を呼びました。

それ以後、同誌編集部内に「ワーキングマザー1000人委員会PTA部会」が作られ、数か月ごとに特集記事が掲載されています。その一部を紹介します(要約抜粋)。

「福岡県の女性(42)は3人目の妊娠7か月、切迫早産のため自宅安静を医師から指示されていた。PTA懇談会で事情を説明したが、まったく考慮はなし。『妊娠は免除』の前例を作るわけにはいかない、との論理だ。『みんな内心では同情してくれている。でも、それを口に出すと自分にお鉢が回ってくるから、黙っているしかないんです』」

「何このスピーディーな押し付け方は!」

そんな中、PTAとの壮絶バトルの末、理不尽な役員の押し付けをやめさせることに成功した女性を取材しました。千葉県に住む40代のマリコさん(仮名)です。4児のママで、自分で起業した会社を経営しています。

2年前の2015年3月、小学5年の長男が小学校から「手紙」を持ち帰ってきました。PTA会長(男性)名で「来年度のPTA役員に選任されたので、明日の会合に出席してほしい」旨が書かれていたそうです。

マリコさんは以前、長男の学童保育の会長を務めていました。それまでの年間活動記録も残さない非合理的な運営を改革し、活動内容をファイル化するなど新しいことをどんどん行なうと、運営しているNPOには喜ばれました。しかし、前の役員たちから「私たちのやり方が悪いってわけ?」という猛反発にあい、こりていました。

また、長男の下に5歳・3歳・生後5か月の幼い3人の子を抱えていた時期でもあります。ちょうど産休明けで仕事に復帰したばかりで、経営者として会社をみなくてはならない。しかも、会合の前日に呼び出すあわただしさ――。

「何このスピーディーな押し付け方は!」と怒りがこみ上げたと言います。長男にPTA会長あての「質問状」を持たせ、(1)選出にいたった経緯(2)その根拠となるPTA会員規約(3)会合の前日に召集する理由、の説明を求めました。

数日後、息子が「回答状」を持ち帰ってきました。規約のコピーとともにPTA会長の手紙が入っており、「うやむやの中で選任手続きが行なわれ申し訳ありません。しかし、ご協力いただけないでしょうか」とあり、後日会うか電話で話したいと書かれていました。

PTA会長「私も凶悪なママたちにはうんざりで...」

そこで、マリコさんはPTA会長に電話しました。

「私は学童の会長をした経験からもPTA活動には不向きと思われます。ズケズケものを言う性格ですから皆さんともめます。悪いことは言わないので、私を外した方がいいですよ」

さらに乳児を含め就学前の子が3人いること、1人で会社を切り盛りしなければいけない事情も説明しました。

PTA会長は「それは大変ですね。でも、それも含めて公平に選任しないと...」と返します。

マリコさんが、「公平って何ですか? 置かれている状態が厳しい人とヒマな人とがいるわけですから、公平であるわけないじゃないですか。罰ゲーム的にボランティアを押し付け合うPTAの体質は変えるべきです」と言うと、PTA会長は愚痴をこぼし始めた。

「いや、実際そのとおりですが......。私も会長を務めていて、もう凶悪なママたちにはうんざりで......。母子家庭の人やフルタイム勤務の人などを役員選任から免除してあげたくて会則に盛り込もうとしたところ、『ずるい!』という猛反対が起こって、結局、役員を2年続けた人だけになりました」

さらにPTA会長は泣き落としに入ります。

「あなたのような人が執行部に入ってくれたら、私は本当に助かるんですが......」

マリコさんは、「なぜ私が突然、役員に決まったか、そこがはっきりしないとお引き受けできません。誰かが『ずるい』と言ったからでしょうか。私は最終手段として、PTA会費を払ったうえで、退会することも考えています」と言ったそうです。

実は、マリコさんは別のルートからいったん新役員が決まった後に、「マリコさんが役員をやっていないのはおかしい」と言い出した人物がいて、ひっくり返したことを伝え聞いていました。PTA会長は「退会は前例がありません。検討してまた後日電話します」と言い、電話を切りました。

後編に続く たったひとりでPTAに立ち向かったママ 「私は壮絶バトルで役員免除を勝ち取った」(後編)