先週に引き続き、オフィスでの敬語のマナーについて取り上げましょう。
電機メーカー勤務の吉川ちなみさん(仮名・32歳)から、こんな質問が届きました。

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「先日、うちの部署に本配属が決まった新入社員の歓迎会を居酒屋で開催しました。自分が主役の会にもかかわらず、料理を取り分けたり、注文をとりまとめたりという気配りができる女性だったのですが、お酌のたびに“おビールいかかですか?”と言うのです。私は“おビール”という言葉がひっかかってしかたなかったのですが、“普通に言うでしょ?”という知人もいます。彼女は仕事中にも“おコーヒー入りました〜”といいながらお茶出しをします。これもちょっともやもやするんですが、私が間違っているんでしょうか?」

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鈴木先生に教えていただきます。

外来語は美化語にしない

名詞に「お」や「ご」をつけた丁寧な言葉のことを「美化語」といいます。“お名前”“お名刺”“ご来客”“ご用件”など、ビジネスで使う言葉も多いですね。でも、なんでもかんでも「お」や「ご」をつければ丁寧な言い方になると考えるのは間違い。

原則として、外来語に「お」や「ご」をつけるのは誤った使い方とされています。
吉川さんがもやもやしたという“おビール”のビールは外来語。そのため、美化語にするのは正しくないといえます。そのほか、よく使っている人を見かける“おトイレ”“おソース”“おコーヒー”“おリボン”“おズボン”なども、外来語なので美化語にはしないのが正解。

ただ、言葉というのは、時代とともに変化していくもの。“お醤油”と言い慣れている人は“おソース”、“お紅茶”という人は“おコーヒー”が自然に出てくるかもしれませんね。“おトイレ”はNGだから“おてあらい”と言い直さなければいけないなどと、あまりナーバスに考えすぎず、働く女性の常識として外来語には「お」や「ご」はつけないものであるという知識だけ持っていれば十分だと思います。

外来語の略語も美化語にしない

少し前、ネットで「ビジネスメールで“ごPDF化”という丁寧語を見た」という投稿が話題になっていましたが、PDFはPortable Document Formatの略語ですね。つまり、外来語。そう考えれば、美化語にするのはおかしいとわかると思います。
ID、PWなど、仕事でよく使うビジネス用語に外来語の略語が増えましたが、これらも同様です。何年か後にはもしかしたら自然に受け入れられる言葉になったり、むしろ、つけたほうがいい言葉になるかもしれません。でも、当面はなしでいきましょう。

 

美化語としてはNGでも「お」や「ご」をつけたほうがいい場合も

外来語でなくても、「お」や「ご」をつけないほうがいいとされる名詞があります。それは美化語にすることで、皮肉に聞こえてしまう名詞。たとえば“おばか”や“お間抜け”“ご大層”“おめでたい人”などです。

でも、これも、オフィスで後輩のちょっとした間違いを指摘するときには、「お間抜けさんだったね」「おばかなことをやっちゃったね」など、やわらかいニュアンスで伝えられる便利な言葉になっています。日本語として正しくないから使わない、と決め付けなくてもよいでしょう。

2016年夏現在、「弊社」はアリでも「弊メアド」「弊サイト」もナシということでお願いします。



■賢人のまとめ
外来語の名詞に「お」をつけるのは言葉使いとしてNG。それにならい、外来語、外来語の短縮語に「弊」をつけるのは間違った言葉使いと覚えるべし。

■プロフィール

女子マナーの賢人 鈴木真理子

三井海上(現・三井住友海上)退職後、“伝える”“話す”“書く”能力を磨き、ビジネスコミュニケーションのインストラクターとして独立。セミナー、企業研修などで3万人以上に指導を行う。著書は『ズルいほど幸せな女になる40のワザ』(宝島社)のほか、近著『もう必要以上に仕事しない!時短シンプル仕事術』(明日香出版社)、『絶対にミスをしない人の仕事のワザ』は7万部に迫るヒットとなる。 

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