「イクメンとはなんぞや」 | 弘中綾香の「純度100%」〜第114回〜
ひろなかあやか…勤務地、六本木。職業、アナウンサー。テレビという華やかな世界に身を置き、日々働きながら感じる喜怒哀楽の数々を、自分自身の言葉で書き綴る本連載。
「イクメンとはなんぞや」
・臨月の妻に〈アカチャンホンポ〉に行きたいと言われたので、車を出した。・土曜日の午前中から子どもを公園に連れて行って、一緒に遊んだ。・休日、近所の小児科へ子どもを予防接種に連れて行った。・朝、子どものおむつを替えて着替えをさせてから、保育園まで送った。
これらの行動のどれもがきっと、夫がすると「さん、イクメンですね〜!」と言われるものだろう。言われた本人も「まあこれくらい、今の時代は当たり前だよ〜」と言いつつ、まんざらでもない顔をしているに違いない。「俺は令和の父親像をたしかにアップデートしている男だぜ」と思っているだろう(言い過ぎ?)。もちろん妻の立場からすると、この行動のどれもがありがたいことである。いない・やらないよりは、もう格段にマシ。やってくれてありがとう、と思っていることではあるけれど、ここで一つ問いを投げかけたい。自称&他称がイクメンの皆さんに、「それはあなたが自主的に0から全て考えて行動したことですか?」と。先ほどのシーン、私には妻からのこんな声が想像できる。
「出産後に必要なものリストアップしたから、買いに行こうよ! チャイルドシートも買わないとね。え? まだ調べてない? あれほど調べておいてって言ったのに!」「パパ、子どもたちと出かけてきて〜! ほら、あの駅の反対側の公園、あそこのブランコすごいお気に入りだから、人が少ない時間に行ってやってきて!」「あーもう、9時半予約だからもう行かないと遅れちゃうよ!(事前に調べて予約して、必要な書類も書いて持たせて。あとは連れて行くだけなんだから! お願い!)」「おむつ替えて、それ、着替えさせて! 保育園に持って行くものは玄関に準備してあるから!」
そう、全てお膳立てされた上での「イクメン」なんですよね。あとはやるだけ、ってところまで準備して、送り出す。妻たちはそこまでやって、バトンタッチしているんです。「俺だってやる時はやるし」そんな風におっしゃるかもしれませんが、その「やる」を待っていたら一向に何も進まないんですよ、と言いたい。優秀な部下を育てるためには、部下にある程度任せることが大事、とは聞くけれど、こちとらそんな悠長にあなたの成長を待っている暇ないんですわ。って感じです。もちろん「今週は俺がほとんど家にいられなかったから、妻はワンオペで大変だっただろう。土曜くらい家でゆっくりしたいだろうから俺が子どもを外に連れて行こう。昨日雨だったし汚れるかもしれないから一応着替え持って行くか。あと帽子、飲み物、タオルと、ウェットティッシュもいれてっと」と考えて行動する父親もいるだろう。育児には想像力が必要。この人は間違いなく真の「イクメン」だと思います。けれども、大部分の「イクメン」は前者の“指示を出されたら動けるけど”、の人なのではないかと踏んでいる。
このことに付け加えて、真の「イクメン」になるには「優先順位の1位は育児か?」という問いにも答えなくてはいけないと思う。大抵が「そうはいっても、仕事が最優先」の人ばかりだ。子どもが熱を出したら、保育園に迎えに行くのも看病するのも自分の仕事を休むのも母親。共働きなのにね。「仕事の付き合いだから」「ゴルフも仕事のうちだから」と、仕事というカードを持ち出して、育児が二の次三の次になっていることはないだろうか。共働きであるならば、仕事が大切なのはお互いさまなのである。そして育児も同じようにお互いにとって最優先すべき事柄でしょうに。
自分が母親になるまでは、こんな「イクメン」の単語ひとつに目くじらを立てることなんてなかった。また、きっと真の「イクメン」がパートナーだったら、こんな風に改めて定義を考えることもなかっただろう。「やたらイクメンと褒めたがる人」と「それにおだてられて、自分をイクメンだと思っちゃう勘違い」が増えているから困るのだ。とりあえず子どもがいる上司には「イクメン」と言っとけばいい、みたいな風潮はやめてほしい。そして本人には「いや、俺なんて指示がないと動けないし、いつも仕事を優先しちゃうし。ほんと奥さんいないと家回らないんだよ」こんなことを言っていてほしいし、心からそう思っていてほしい。とにかく謙虚であってほしい。それだけだ、求めるのは。
【弘中のひとりごと】大谷翔平の謙虚さを見習ってほしい。
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ひろなかあやか
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