男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

-あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?

誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。

さて、今週の質問【Q】は?

▶前回:「ちゃんと帰れる?」デート終わりの女性をタクシーに乗せるのはモテ男の常識。が、予想外の結末に…




土曜の朝。昨夜、彼氏の翼に送ったLINEをもう一度確認してみる。

まだ既読にすらなっていない。

「飲んでいて、気がついていないのかな…」

翼とは、付き合い始めてもうすぐ2週間になる。

付き合いたてで、幸せ絶頂なタイミングのはずなのに、私の胸はずっとザワついている。なぜなら、翼は付き合った途端にとても冷たくなったのだ。

交際する前は返信も早かった。翼のほうから連絡もくれた。

「でも、付き合っているわけだし…私、彼女だし!」

そう自分に言い聞かせる。

でも結局、LINEが既読になったのは土曜の夜で、返信が来たのは日曜の午後だった。


Q1:交際前に積極的に連絡をくれた理由は?


翼と出会ったのは、女友達に連れて行ってもらった食事会がキッカケだった。

その時は女性3人、男性2人というバランスが悪い会だったのだけれど、幹事をしてくれた40歳くらいの美穂さんという女性が素敵な人で、その会は結構盛り上がった。

「こちら翼くんと拓真くん。で、こちらが雪ちゃんとお友達の仁美ちゃんね」

美穂さんの進行で会は進んでいく。けれども最初からずっと、私は翼の視線を感じていた。

「あの…」
「ごめん!可愛くてつい見惚れてた」

冗談なのかなと思ったけれど、翼の頬が少し赤くなっていたので、本心なのかもと期待してしまう。

「仁美ちゃん、翼って本当にイイ奴だから。独身だし、彼女ナシ。おすすめだよ!」

そんな美穂さんの後押しもあり、私と翼はその会の間ずっと隣に座っていた。そして翌日。翼から連絡が来ていた。

― 翼:昨日はありがとう!もし良ければ来週末、二人でご飯でもどうですか?

彼氏いない歴がもうすぐ1年になりかけている私は、すぐに返信した。




翼との初デートは、中目黒にある素敵な創作和食のお店だった。

「僕さ、この前も言ったけど仁美ちゃんのこと本当にタイプなんだよね」

食事が始まった途端、かなりグイグイとアタックしてきた翼。お店も素敵で、翼の本気具合が伝わってくる。

「そうなの?嬉しい…ありがとう♡本当に翼くんって、彼女とかいないの?」

たしか28歳だと言っていた翼。私より2つ年上だ。

「いないよ、本当に。周りは結婚している人とかもいるけど…僕は完全にフリー」
「そうなんだ、良かった」
「仁美ちゃんは?今はどんな感じなの?」
「私も完全にフリーです。彼氏と別れて、もうすぐ1年くらいかな」
「そうなんだ!どういう人がタイプ?」

翼のリードのおかげで、初デートもスムーズに進んでいく。そして話せば話すほど、翼のことをいいなと思っている自分もいる。

「そういえば、この前いた美穂さんって仲良いの?」
「僕?そうだな…。仲良しだよ。あの人実は既婚者なんだけど、ああやって若い人たちと飲むのが好きみたい」
「そうなんだ…なんかすごい人だね」

不思議な人だなとは思ったけれど、美穂さんも翼のことを「いい男だ」と言っていた。だからその言葉に嘘はないだろう。

初デートでかなり盛り上がったせいか、お店を出て大通りまで歩き始めようとすると、翼は私の手を握ってきた。




「…え?」
「俺さ、仁美ちゃんの彼氏に立候補してもいい?」
「え…?う、うん!もちろん!」

― やば。嬉しいんだけど…!!

こうして、私たちは初デートで付き合うことになった。

この時、翼は気持ちを言葉にして伝えてくれたのだ。

だから私たちが付き合っていることはちゃんとした事実だ。でもなぜか、翼はここから態度がどんどん変わっていく…。


Q2:男が交際してから冷たくなった本当の理由は


私が小さな違和感を覚えたのは、手を握られて交際が始まってから、しばらく経ってからのことだった。

初デート後のLINEのやり取りは普通だったけれど、次のデートの約束をしてから、私が何度連絡をしても返信が遅い。

― 忙しい、だけだよね…?

そう思っていた。でも二度目のデートも最初は二人きりではなく、最初の食事会の時にいた彼の友達・拓真も一緒だった。

ただ、これはいい傾向だと思う。

彼氏の友達に紹介してもらえるのは、認められている証だから…。




「あれ?そういう関係なの?」

翼から指定されたお店に行き、私が顔を出すと、拓真は驚いた顔をしている。

でも翼の嬉しそうな顔を見て、私たちはやっぱりちゃんと付き合っているのだと確信が持てた。

「まぁそういうことかな」

恥ずかしそうにしながらも、友達に紹介してくれた翼。

これは彼女として大事にされている、ということ。周囲の人に会わせてくれてない男性は大概怪しい。

でも翼はちゃんと友達にも紹介してくれたし、安心できる。

「翼はモテるからなぁ。さすがだね。俺も一緒にいたはずなのに、仁美ちゃんは翼派だったかー(笑)」

拓真がニヤニヤとしながら私たちを見ている。恥ずかしくもなったけれど、嫌な気持ちにはならなかった。

「翼くんと拓真さんって仲良しなんですね。どういう関係なんですか?」
「僕たちが仲良くなったのはここ2〜3年くらいで。仕事とかも全然違うけれど年齢も近いし、とにかくウマが合って。最近はマジで週に一度は会っているかも」

二人はだいぶ仲が良いらしい。そんな親友とも呼べる人に紹介してもらえて、さらに嬉しくなる。

ただ1時間くらいすると、拓真は「帰る」と言い始めた。

「え?もう帰っちゃうの?」
「うん。別で予定があって。というか仁美ちゃん来るって知らなかったし、もっと前もって言ってくれたら時間空けていたのに!とりあえず、二人で楽しんで」

そして早々に拓真が去り、私たちは二人きりになった。




「翼くん、会いたかった♡」

テーブルの上で、手をつなぐ。すると翼もそれに応えてくれる。

「本当に?俺もだよ」
「やっぱり、翼くんってモテるんだね」
「そんなことないよ。拓真のほうがモテるんじゃない?」
「まぁ二人ともモテそうだよね」

そんな会話をし、私たちはこの夜、彼の家で結ばれた。

そしてここからさらに1週間が経ち、私は不安に襲われている。返信が遅くなり、翼から連絡が来ない。

でも友達にも紹介してもらっているし、変なことはしていないはず。

― 大丈夫、私たちは付き合っているから…。でも翼はなんで冷たくなったんだろう?

彼氏の態度の急変に、私はかなり頭を抱えている。

▶前回:「ちゃんと帰れる?」デート終わりの女性をタクシーに乗せるのはモテ男の常識。が、予想外の結末に…

▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由

▶NEXT:6月18日 日曜更新予定
彼氏になったはずの男が考えていたコトは…?