夜が明けたばかりの、港区六本木。

ほんの少し前までの喧騒とは打って変わり、静寂が街を包み込むこの時間。

愛犬の散歩をする主婦や、ランニングに勤しむサラリーマン。さらには、昨晩何かがあったのであろう男女が気だるく歩いている。

そしてここは、六本木駅から少し離れた場所にあるカフェ。

AM9時。この店では、港区で生きる人々の“裏側の姿”があらわになる…。

「AM9時、六本木のカフェで」一挙に全話おさらい!



第1話:仕事を理由に朝早く出かけた夫が、カフェで女と会っていた。相手はまさかの…

― あ、そうだ。気になっていたカフェのパン、食べに行こうかな。

家の近所にある、カフェ。自家製クロワッサンが美味しいと有名な店だが、近くにあるからいつでも行けると思い、一度も足を運んだことはなかったのだ。

白シャツにスキニーパンツ、上からマックスマーラのコートをサッと羽織ると、ミッドタウン方面へと向かう。

…しかし、入り口のドアに手をかけようとした瞬間。ある光景が目に入り、私はその場から動けなくなってしまった。

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第2話:年収2,000万の彼とマッチし、大喜びで待ち合わせのカフェに向かったけど…。男を前にして絶句したワケ

3年前、29歳のときに離婚した私。それからというもの、恋愛面においては一切の進展がなかった。

離婚当初は、夜通し看護学校時代の友人たちと遊び歩き、独り身を存分に謳歌していたが…。最近になって、周りには彼氏ができたり結婚したりと、急に遊ぶ友達が減ってしまったのだ。

― もう32歳か。再婚は35歳までにできたらいいと思ってたけど、このままじゃマズイなあ。

刻々と迫るタイムリミット。そして周囲のライフステージの変化の波に押され、私はマッチングアプリをダウンロードしたのだった。

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第3話:帰宅するなり「風呂が沸いてない」とキレ散らかす夫。恐怖心を抱いた31歳妻は、まさかの行動に出る…

「お前は何をやってもトロいな」

これは私の夫である匠が、私をなじるときの常套句だ。小さなミスを見つけては「バカなのか?」とか「俺がいなければ何もできないくせに」と罵ってくる。

そんな日は決まって、仕事で大きなストレスを抱えて帰ってきたとき。私はストレスの捌け口なのだ。それでもまだ、3歳になる娘に手を出さないだけマシだと思っている。

いつ、どんな発言が地雷を踏むのかわからない怖さがあっても、離婚はできない。だって専業主婦の私は、夫に縋って生きるしかないのだから。

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第4話:20代の頃と全く同じ服に、レディディオールで街を闊歩する35歳独身女。痛い若作りを続けた結果…

「ヤバっ!もうそろそろ準備しないと…」

私はいそいそと支度を始めた。20代の頃から変わらないロングヘアは、毛先だけゆるく巻く。フォクシーのワンピースを着てレディ ディオールを右手に持つと、鏡の前に立った。

「うん、悪くない!」

35歳でも若く見えるほうだし、まだまだ甘いワンピースだって全然着られる。そう安心してリッツへと向かった。ここに、まさかの出会いが待ち受けているとも知らずに…。

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第5話:NY駐在から帰ってきた、年収2,000万の商社マン。優良物件に見えるけど、ヤメておいた方がいいワケは…

「初めまして〜!えっと、洋さんですか?隆くんの先輩の」
「そうです。今日はよろしく」

若い女の騒がしい声は久しぶりだが、悪い気はしない。今日の女性陣は皆、ロングの巻き髪にタイトなトップスやワンピースをまとっている。いかにも港区女子といった出で立ちだった。

正直言って雰囲気が似すぎているから区別はつかないが、みんな20代そこそこの若くて可愛い子ばかりだ。

さっそく乾杯し、食事会が始まる。1時間ほど経ったとき、ある1人の女が話しかけてきた。

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第6話:ずっと彼氏ナシだった友人が、年収2,000万の男と交際0日婚。怪しさを感じて心配すると、驚きの答えが…

正直言うと、菜摘が私たちより先に結婚するとは思わなかった。

こう言ってはなんだけど、彼女は顔立ちも地味で控えめだし、3人の中では一番モテない。そして何より、菜摘には先月まで彼氏などいなかったはずなのだ。

「…いつの間に彼氏できてたの?1ヶ月前はいなかったよね」
「あ、そうなんだけど…。実は半年前から『結婚を前提に付き合ってほしい』ってアプローチは受けてて」
「どんな人?」

すると、半分放心状態だった恵梨香が急に食いついてきた。

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第7話:男友達から「急に彼女と音信不通になった」と相談が。ある日街で女を見かけたので、問い詰めてみると…

新卒で外資コンサルに入って4年。だから同期である雅人と知り合ってからも4年ほど経つが、こんなに情けない姿を見たのは今日が初めてだった。

― でも、なんでまた急に音信不通になったんだろう。

彼女がふいに姿を消した理由はわからない。けれど、不思議だった。雅人の彼女には一度だけ会ったことがあるが、誠実で優しそうな印象だったから。急に連絡を絶つような子には見えなかった。

「連絡が途絶えたことに心当たりはないのか?」
「考えてみたよ。でも、わからない。1ヶ月前まで本当に変わった様子もなかったんだよ…」

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第8話:彼氏の女友達と、3人で会うことに。親密すぎる関係に拗ねてしまい、最低な態度を取った結果…

「俺も、もういい年齢だしさ。今後のことを考えて、そろそろ家族や友達を紹介したいと思ってるんだ」

― それは、もしかして結婚を視野に入れてるってこと?

裕樹の言葉の意味を理解した瞬間、目頭が急に熱くなってくる。

「本当に嬉しい…!ありがとう」

両手で口元を押さえ、私は声を震わせながら前向きにそう答えた。…しかし、次の瞬間。彼が放った一言で、気持ちが一気に急降下したのだ。

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第9話:カフェで堂々と別れ話をするカップルに遭遇。思わず聞き耳を立てた女が、恥ずかしさに頬を赤らめたワケ

フラれた本当の理由はわからないけれど、なんとなく3年目を過ぎたあたりでこうなる予感はしていた。だから心のどこかで「やっぱりか…」と思ってしまったのだが。

それでも今、まさに2週間前の私と同じ思いをしている人が後ろにいると思うと、悲しい気持ちになる。そして聞き耳を立てずにはいられなかった。

「…なんだよ、それ」
「お前とやってく自信が、もうないんだよ」
「待てよ!そんなこと言わないでくれよ…」

― あれっ。後ろのカップルって、もしかして男同士?

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