この5年間で住んだ地域は4道府県と、現在も更新中。そんな移住生活のオモシロ体験を綴った、アルム詔子の「京女の移住体験記」。

前回から続けて発表中の、住んでみて実感した「北海道の冬の怖さ」ランキング。

今回は、ようやく堂々の1位のご紹介である。

前回の記事では第2位を発表した。

冬の北海道では、あるあるの「凍結」だ。あまりの気温の寒さに、室内のモノが凍るという現象で、なかでも凍結した水道管が解け始めて起こる「水道管破裂」は、絶対に避けたい大惨事という話だった。

幸いにも、北海道に移住していた2年半弱の間、私たち(私とパートナーの彼です)は「水道管破裂」もさせることなく、本州へと帰省することができた。

ただし、それ以外の事情で、死ぬほど怖い思いをしたことがある。

それが、今回発表する「北海道の冬の怖さ」ランキングの1位。

一体、1位にランクインしたのは…?

ホワイトアウトを体験して分かったこと

京都に住んでいた頃、当時、北海道で起きた事故が大きなニュースとなった。

暴風雪による死亡事故である。

事故が発生したその日は、発達した低気圧の影響で午後から暴風雪となった北海道。車が相次いで立ち往生し、取り残された方たちが、翌朝に車内や車外で死亡した状態で発見されたという痛ましい事故である。

故郷の京都では、じつに「大雪で大変だ」という思いをしたことがなかった。特に市内では大雪など降った試しがなく、少し雪が降るだけで交通網は大混乱。ただ、電車の遅延やタクシーがつかまらないなど、住民の「足」にしわ寄せがくるだけで、「命」に関わるようなコトはなかった。

だから、暴風雪に遭遇して自宅から数十メートルほどの距離で倒れていたとか、そのようなニュースを見るたびに不思議に思っていた。あと少しの距離で、どうして自宅まで辿り着かなかったのか、想像しようにもイメージすらできなかったのである。

しかし、北海道に移住して、初めて「雪」が怖いと思った。

なかでも、ホワイトアウトに遭遇したときは、その恐ろしさが痛いほど身に沁みた。ちなみに「ホワイトアウト」とは、辺り一面が白一色となって視界が遮られる現象を指す気象用語である。基本的には強い地吹雪や暴風雪などで起こるようだが、雪や雲による光の乱反射などの場合もあるという。

このホワイトアウト、一体、何が怖いのかというと、方向や地形の把握が困難になるというコトだ。辺り一面が白くなれば、今、自分がどこにいるのかさえ分からなくなってしまう。だから、いくら近くに建物があっても避難すらできないのである。

そんなホワイトアウトに私たちが初めて遭遇したのは、北海道に移住した1年目の冬。タイミング悪く、車を運転する最中のコトだった。

ホワイトアウトでは、黒い車も雪で白く見えるのです…

選択肢がないという恐怖

「なんか…気持ち悪くなってきた…」と私。

「目を閉じたら?」と彼。

「せ、せやな…」

「前を見なかったらマシかもよ?」

移住して1年目の冬。ちょうど、旭川へと向かう旭川紋別自動車道の高速道路で、助手席の私は気分が悪くなった。理由は至ってシンプルだ。ずっと前を見続けていたせいである。車が進むにつれて大量の雪がフロントガラスへ次々と向かってきて、白い水玉模様の中を進んでいくような不思議な感覚に陥った。こうして視覚的に混乱した私は、不覚にも車酔いをしたのである。

ただ、これは序の口だった。

いや、逆に、雪が1粒1粒とはっきり見えるのはまだマシな方だと気付いた。

だって、水玉模様に見えるというコトは、目の前の光景全面が真っ白ではないというコト。それは、雪以外の空間がそこにはまだあるという事実を指す。そう気付いたのは、旭川からの帰り道のこと。既に辺りは暗く、間が悪いことに雪の勢いは増していた。加えて、風が吹き出して雪と一体となり、暴風雪となったのである。

いわゆる「ホワイトアウト」だった。

覚悟はしていたが、ここまでとは思わなかった。

恐らく、この記事を読まれている未経験者は、以前の私と同じく、吹雪といっても、さすがに前方の車くらいは見えるだろう…と思われるかもしれない。

しかし、ホワイトアウトを体験してみて初めて分かった。実際のところ、全くもって何もかもが吹雪に隠されて見えなかったのである。

まず、行き交う車はというと、車体に雪が積もっていた。それも車の全方位が雪で覆われるため、黒い車も白い車に見えてしまうほど。だから、吹雪の中だと余計に分かりづらくなる。本来なら赤く光るテールランプさえも完全に吹雪に隠され、近付かなければ、ほぼ見えない状態だった。もちろん、車だけではない。道路のガードレールさえも、遠目では把握できない最悪の状況だったのである。

ちなみに、吹雪になると、基本的に旭川紋別自動車道は速度規制をかける。大体時速50劼箸覆襯灰箸多い。

「だ、大丈夫かな…」と私。

「50匍制だから、他の車もゆっくり進むだろ。遅れずに、なんとかついていくしかないな」と彼。

ゆっくりと進んでいくと、ようやくかすかに前方で赤いテールランプを一瞬だけ確認することができた。

「脇に車を寄せて止まる?」

「いや、前の車が全部ハザードランプで止まってれば、それに従うけど。うちの車1台だけなら、それはそれで後ろから追突されそうだし…」

確かにそうだ。私たちから前の車が見えないように、後続車も私たちの車が見えないというコトだ。彼の言葉に唸るしかなかった。

「行けそう?」

「いつも通ってる道だし、ナビでなんとか道路も分かる。あとは、とにかく距離を保って、前の車のランプを目印にして…」

何台連なっているのだろうか。一連の車の列が、慎重にゆっくりと距離を保って動いていく。私たちも、そのうちの1台となって、流れに逆らわずに進んだ。こうして、運転に何倍もの時間をかけて、なんとか我が家へと辿り着いたのであった。

自分たちがぶつかるかもしれない恐怖。

そして、後ろからぶつかられるかもしれない恐怖。

これが、私たちが初めて体験した「ホワイトアウト」の記憶である。

【後編に続く】