「そこじゃない…」彼の満足げな表情を見ると言えない、女の本音
男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
-果たして、あの時どうすればよかったのだろうか?
できなかった答えあわせを、今ここで。
今週のテーマは「完璧だったはずなのに、女に手を振り払われた理由は?」という質問。さて、その答えとは?
▶【Q】はこちら:ヒールで歩かせない、車道側を歩く…デートの基本を忠実に守る男が見落としていた、重要事項
すっかりクリスマスムード一色に染まった、丸の内仲通り。キラキラしたイルミネーションの街を、私は和也と2人で並んで歩いている。
「僕さ、この季節が好きなんだよね。こういう暖色系の灯り、落ち着くし」
「たしかにワクワクするよね」
そんな会話をしながら、和也が私に体を寄せてくる。
はたから見れば、私たちは仲良しのカップルに見えるかもしれない。もしくは今から恋人になりそうな、初々しい2人組に見えるかもしれない。
でも私は心の中で、まったく違うことを考えていた。
するとそのとき、和也が私の手を握ろうとしてきた。
「あ…」
咄嗟に、彼の手を振り払う。
― ヤバ、やってしまった…!!
驚いた顔をしている和也を、申し訳ないなぁと思いながら見つめる。
でも、彼は一生わからないだろう。この時の私が、なぜ彼の手を振り払ったのか…。
一見完璧な男が見落としていた、大事なコトとは…?
A1:家の下まで送らなくてもいい&そんな完璧じゃなくても…
和也と出会ったのは、丸の内近辺に勤めるイケてる男女が集まるダイニングバー。
近くに勤める私は、クリスマスが近づいてきたのに彼氏がいない友人と共にフラッと行ったのだ。
するとスマートな雰囲気の男性2人組が、すぐに声をかけてきてくれた。それが和也だった。
「こんばんは。お2人ですか?」
「はい…!」
仕立てのよさそうな細身のスーツを着こなす2人は、洗練された雰囲気。きっとこの近くにある一流企業に勤めているのだろう。
「近くにお勤めなんですか?」
「はい、すぐそこです。お2人は?」
「僕たちもこの近くで、久しぶりに飲みに出たんですよ」
「そうなんですね。私たちもです」
閑散としていた丸の内にも、最近ようやく人が増えてきた。
こういう出会いも久しぶりだなぁと思っているうちに、いつのまにか私と和也、そして和也の同期と私の女友達…というペアで会話をしていた。
和也は年齢も近く、話しやすい。スマートで優しい物腰にも、惚れ惚れとした。
「愛里ちゃん、今度デートに誘ってもいいかな?」
「もちろんです!」
こうして、私は少々食い気味で和也とのデートに挑んだのだ。
◆
初デートは、和也は恵比寿にある『アッカ』を予約してくれていた。
シックでスタイリッシュなカウンター席。初デートでこんないいお店を予約してくれていた和也に、さらにときめく。
「わぁ、素敵。和也さんって、こういうお店よく来るんですか?」
「うん、そうだね。食べることが結構好きで。愛里ちゃんは何飲む?シャンパンでいいかな?苦手な食べ物は何かある?」
「はい、シャンパンで♡苦手なものはありません」
すると和也は慣れた手つきて店員さんを呼び、ぱぱっとオーダーを済ませた。
「愛里ちゃん、見過ぎだよ(笑)」
「いや、スマートで素敵だなぁと思って」
「そうかな。普通だよ」
「いやいや。店員さんの呼び方までかっこいいし」
ここまでは、素敵だなと思っていた。スマートだし、育ちがいいんだろうなぁと。それはお店を出てからも変わらなかった。
しかし、「あれ?」と思うこともあった。
「2軒目も近いけど、歩かせるのは悪いからタクシーに乗っちゃおうか。愛里ちゃん、危ないからこっちおいで」
そう言うと、突然車道側にいた私を抱き寄せるような形で歩道側にグイっと押しやり、代わりに和也が車道側へと回ったのだ。
その間にさりげなく、私の肩に手を回す。咄嗟に“この人、慣れてるな”と思ってしまった。
「和也さん、すごい♡」
「いやいや、当たり前のことしてるだけだから」
恐らく歩いて5分くらいの距離だったけれどタクシーに乗り、2軒目へ移動。2軒目でも、彼のスタンスは変わらなかった。
「今日は帰したくないけど、まだ1回目だしなぁ…。愛里ちゃん、送ってくよ」
会計を終えると、宣言通り和也は私を家まで送ってくれた。
しかし私の家の下に着くと、なぜか和也まで一緒にタクシーを降りようとしている。
「どうしたの?」
「危ないから、見届けようと思って」
正直、家の下まで送ってくれなくても大丈夫だ。でも和也が送りたそうにしていたので、私は笑顔で応じることにした。
「もう家の前だから大丈夫だよ(笑)。ありがとう」
「そう?わかった…。でも、家に着いたら連絡してね。心配だから」
― えーっと…。彼氏なんだっけ?
そう思いながらも、このデートから1週間後に再びデートをすることにした。
“あれ?思っていたのと違う…”。女が男を見ながら感じていたことは
A2:「いや、違う。そこじゃないんだよ!」
2回目のデートも素敵なお店を予約してくれていた和也。それなのに私は、仕事で10分ほど遅刻をしてしまった。
「和也さん、ごめん…!!出ようとしたら、急に上司から呼び出されちゃって…。お待たせして、本当にごめんなさい」
本当に申し訳ないと思い、ペコリと頭を下げた時だった。
誰かが、私の頭を撫でている。
「全然大丈夫だよ。それよりお疲れさま。お仕事頑張ったね」
― ん……?
ポンポンと頭を撫でる彼に、強烈な違和感を覚える。
その行為が嬉しい女性もいるのかもしれないけれど、大人になって、しかも同年代の彼氏でもない男性に頭を撫でられるのは、私は嫌だ。彼が少し自分に酔っている感じもある。
でも彼は、完全に無意識でやっている。もしかしたら、小さな妹さんとかがいる家庭で育ったのかもしれない。
テンションは下がったが、せっかくセッティングしてくれたのでデートは楽しもうと決めた。
だがやはり、突っ込みたくなってしまう場面が出てきたのだ。
それは1軒目を後にして、どこへ行こうかと考えていた時だった。
「この後、どうしようか。一応、近くの店押さえているけど…」
「いいね、行こう!でも少し酔いをさましがてら、歩いて行かない?」
「うん、いいよ。ヒール大丈夫?」
「大丈夫だよ」
「じゃあカバン持つよ」
― カバンも含めてのトータルコーディネートなんだけどな…。
鉄アレイを持ち歩いているわけでもないし、私のバッグなんて軽いもの。持ってくれようとするジェントルマンな気持ちは嬉しいけれど、意外にカバンを持たれるのを嫌がる女性もいる。
そして笑ってしまいそうになったのが、この発言だった。
「もう年末だね〜。今年の年末は、楽しくなりそうだな」
「なんで?」
外を歩きながらイルミネーションを見上げていると、和也はこう言い放った。
「だって、愛里がいるから」
― あ、愛里!?ナゼ突然呼び捨て?
“でもこんないい人、そうそういないかもしれない”。そう自分に言い聞かせ、三度目の正直としてもう一度だけデートへと向かった。
しかし想像通り、彼とのデートはツッコミどころ満載だった。
12月も後半に差し掛かり、年末の慌ただしさが増してきた頃に行われた3回目のデート。お店へ着くと、和也はなんと急に花束を出してきたのだ。
「はい、これ」
「え〜何これ!?」
周囲の人たちが、皆こちらを見ている。
「クリスマスが近いから」
「どんだけジェントルマンなの?こんなことしてくれる男性、初めてだよ♡」
― 私、このままプロポーズでもされるのかな…。
気持ちはとても嬉しい。ただ付き合ってもいない男性から、レストラン内で花束をもらうという行為には違和感がある。
映画やドラマの世界だったらここで女子は惚れるのかもしれないけれど、現実世界では恥ずかしさのほうが勝つのだ。
しかもそこそこ大きな花束で、1人暮らしの家にはこれを飾るのに適した場所もない。
和也は、大きな勘違いをしている。
彼が思う「女子って、こういうの好きでしょ?」という行為を好きな人もいるかもしれないが、私は苦手だ。
頭をポンポンとすること、重くもないカバンを持つこと、微妙な関係のうちから花束を突然渡すことや、急に呼び捨てにすること…。
アラサー女子はもっと、現実を生きている。少女漫画の読みすぎでは…と思ってしまうのだった。
そして何より辛かったのは、その行為を私が受け入れることを疑っておらず、彼の自分に酔っている表情を見ることだった…。
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年末年始に必ず痛感するこの問題…