働く堅実女子のためのビジネスで役立つマナー、今週は香山恵美子さん(仮名・営業事務・33歳)からの質問です。

「仕事ができないし、やる気もない同僚が私に残業を押し付けて自分は定時に帰ってしまいます。“私がいても役に立たないし、いるだけで残業代かかっちゃうから、会社にも迷惑でしょ?”と言われれば確かにそうなんですが、なんだか腑に落ちません。ズルいと思ってしまいます。やはり、一緒に残って仕事を終わらせるのが筋ですよね?」

12月の3連休も終わり、年度末に向かって仕事がバタバタ……という働く女性も激増中。そんな中、定時でサラリと退社する同僚がいるとイラっとしてしまうという相談です。こういうケースでは、どうするのが正解なのでしょうか。鈴木真理子さんに聞いてみましょう。

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「定時で終わらなければ残業すればいい」という考えを改めよう

定時なのですから、帰れる人は帰るべきです。相談者さんは、「一緒に残業させるにはどうしたらいいか」ではなく、「その人も帰して、自分も帰るにはどうしたらいいか」を考えるべきです。

日本の場合、作業を納期までに完了させるために人材を充てる、という「仕事に人を充てる」という方法よりも、「人」ありきで「手が空いている人に仕事を渡す」という「人に仕事を充てる」方法が取られているケースがまだまだ多いです。そのため、「終われば新しい仕事が増える」という“仕事が終わらない”スパイラルが発生しがち。残業もそのひとつといえます。しかし、「定時で終わらなければ残業すればいい」という発想が働く人たちの中にある限り、仕事の絶対量の見直しは進みませんし、長時間労働はなくなりません。

相談者さんは、どうでしょうか。「定時で終わらなければ残業すればいい」と思っていませんでしたか?  景気がよかった1980年代ごろから十数年は「24時間、働けますか」なんていうCMのコピーがあったりして、長時間労働が美徳のように扱われていたこともありました。しかし今は、定時内に終わらせなければ評価が下がります。相談者さんは同僚の仕事を残業してまでやっているようですが、結果、同僚の方は定時で帰り、自分が担当している仕事は(あなたの残業によって)終わっている。となれば、その人の評価が上がってしまいます。それこそ、大損ではないでしょうか。

業務は締め切りから逆算してスケジュールを立てて行う

それでは、残業せずに期日までに作業を終わらせるにはどうしたらいいでしょうか。ただ与えられた仕事を、粛々と進めているだけでは、賢いとはいえませんね。逆算して、1日にどれだけ終わらせなければいけないのかを把握し、きちんと計画を立ててすすめましょう。その日のノルマは、定時の中で絶対に終わらせるという意識をもちましょう。「ちょっとくらい残業してもいいかな」という緩い気持ちは捨てるのです。

業務が平準化されているなら効率アップを図る

平準化という言葉があります。これは、主にメーカーで使われる言葉で、たとえば、「平準化生産」というと、平均化した水準で生産していくことをいいます。必要なものを、必要なときに、必要な量だけ生産する、ジャストインタイム生産システムもこれにあたります。そして、この平準化は、社員の業務量についても求められています。つまり、会社は社員のスキルや経験を鑑みながら、業務量を平等にするべきだということ。相談者さんと同僚の方の業務分担に偏りがあるならば、上司などに相談することも必要です。

しかし、業務量が同じであなただけが遅いというのであれば、「仕事が遅い人」というレッテルを張られる前に効率化をしなければいけません。優秀なのに仕事が遅い人には、完璧主義だったり丁寧志向だったりして、必要以上に時間をかけ過ぎるという共通点が見られます。相談者さんはどうでしょうか。たとえば読みやすさのために、企画書の書体をあれこれ考えてみるとか、見栄えをよくするための罫線をネットでいつまでも検索してみたりとか。メールを送るのに、時候のあいさつにこだわったり。20点、30点の出来では問題ですが、すべてに100%を求めず、80%でいいところは、80%で押さえて次にすすめる、というメリハリも重要です。

「みんなが残業しなくていい仕組み」作りが大切。



■賢人のまとめ
定時なのですから、帰る人は帰ればいいのです。一緒に残って残業させるのではなく、自分も残業しなくていい方法を考えましょう。優秀なのに仕事が遅い人には、完璧主義だったり丁寧嗜好だったりして、必要以上に時間をかけ過ぎるという共通点が見られます。計画を立て、業務にメリハリをつけ、「絶対定時に終わらせる」という強い意識をもって作業をすすめてみてください。

■プロフィール

女子マナーの賢人 鈴木真理子

三井海上(現・三井住友海上)退職後、“伝える”“話す”“書く”能力を磨き、ビジネスコミュニケーションのインストラクターとして独立。セミナー、企業研修などで3万人以上に指導を行う。著書は『ズルいほど幸せな女になる40のワザ』(宝島社)のほか、近著『仕事のミスが激減する「手帳」「メモ」「ノート」術』(明日香出版社)、『絶対にミスをしない人の仕事のワザ』は7万部を超えるヒットとなる。 

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