今回のビジネス女子マナーは、IT関連会社勤務の村元美香子さん(仮名・33歳)からの相談です。

「私の会社は19時が定時なのですが、帰り際に仕事を頼んでくる営業社員がいます。毎回のように“明日の朝イチでクライアントに提案したいんだけど、2時間くらいで終わるからさ”と言われて……。

私のお給料は額面25万円で残業代はナシ、一方、彼は基本給プラス収益が出るとロイヤリティーがつくという形態です。なので、その仕事が決まれば、お給料があがります。その人のことを好きじゃないし、私は手一杯だし、手伝いたくない気持ちのほうが強いです。どう断ったらいいですか?」

「今日はここまで。さあ帰ろう」と思ったときに振ってくる仕事。「え、今?」と思う気持ちはわかります……。こういうとき、どうしたらいいのでしょう。さっそく鈴木真理子さんに聞いてみましょう。

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「ノー」と断れない人ほど仕事を抱え込んでしまう

あなたの働き方は、退社時間が決まっています。ということは、指示を出す社員はあなたの勤務時間内におさまるような方法で仕事を頼むべきです。

それがいつの間にか、帰る間際に仕事を頼んでくるようになったのですね。これは由々しき問題です。

あなたが「今回限り」と思って善意でやってあげたことが、その彼には伝わらなかったのかもしれません。または、最初は感謝していたもののあなたが毎回引き受けてくれるので、だんだんありがたいという気持ちが薄れるとともに、恒常化してしまったのかもしれません。

あなたは頼みやすい雰囲気の人だったり、ノーと断れない人ではないですか?「やってあげている」という気持ちは伝わらないものです。なぜなら、仕事は「やる」か「やらないか」だからです。

とくに営業マンにとっては、「仕事をとってくる」ことが仕事です。彼がしたいことは、それをスムーズに進めるためのチーム作り。彼にとってあなたが「イヤだけれどやってあげている」のか、「喜んでやってくれている」のかは重要でなく、「やってくれるかどうか」だけなのです。

なので、あなたの気持ちを彼は知らないでしょう。というより、そこに重きが置かれていないと言い換えた方がいいかもしれません。「不服かもしれないけど、やってくれるなら、どう思われてもいい」と思っているのです。

一方、あなたはどうでしょうか。彼が感謝してくれるならやってあげてもいいですか?それとも、絶対にやりたくない、断りたいと思っているのでしょうか。

仕事のできない相手にはストレートに伝える

個人的な意見としては、その彼の段取りが悪いのでは?と思います。

たとえば、夕方にものごとが動いたとしましょう。そして、「朝までに資料を作ります」とクライアントに口が滑ったとしましょう。そういう気持ちもわからなくもありません。

しかし、このご時世、実際にできるという算段もなく「徹夜してでもやります」は、美談にもなりません。その彼は、あなたが手伝ってくれれば……などという不安定な要素で安請け合いしたといえます。

これは、お世辞にも「仕事ができる」人のやり方ではありません。仕事ができる人は、十分な余裕を相手に与えるような指示をします。

ただ、あなたの同僚は遠回しな言い方だと伝わらないようなので、出社したらすぐ「今日は〇時に失礼します」と毎日根気よく言いましょう。

そして約束の時間になったら、帰ること。残って仕事をし、心の中で抗議しても相手の耳に入らないのはもちろん、心にも響きません。

「残りは明日やりますね」と言って、相手の反応を見てください。残りの仕事は、相手が受け取ってやってもよいのですから。ひとりで抱えないことが大切です。

ただし、「頼むときには早く言ってください。じゃないとできませんので」というようなことは言わないこと。これは、相手を責めているように感じさせてしまいます。

今、彼は「俺だって早く頼めればいいと思ってるけど、クライアントありきなんだからしょうがないじゃないか」と思っていると考えられます。彼自身がキャパオーバーしている中、責められたくはないのです。

ここで、「あなたの仕事の仕方の段取りが悪いからこうなる」と、本人がわかっていることをあなたが指摘してもメリットはありません。

「残りは明日やります」と、あなたの働き方を相手にわからせる。そして、相手に段取りを考えさせる。これが、賢い働く女性のやり方です。

要領の悪い営業社員とのつきあいがいちばんやっかい。



■賢人のまとめ
時間内にできることを粛々とやる。そして、「残りは明日やります」と告げる。「あなたの段取りが悪いから」ではなく、自分自身の仕事スタイルを相手にわからせて、相手に考えさせることが大切です。

■プロフィール

女子マナーの賢人 鈴木真理子

三井海上(現・三井住友海上)退職後、“伝える”“話す”“書く”能力を磨き、ビジネスコミュニケーションのインストラクターとして独立。セミナー、企業研修などで3万人以上に指導を行う。著書は『ズルいほど幸せな女になる40のワザ』(宝島社)のほか、近著『仕事のミスが激減する「手帳」「メモ」「ノート」術』(明日香出版社)、『絶対にミスをしない人の仕事のワザ』は7万部を超えるヒットとなる。 

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