【インタビュー】西内まりや「誰しも、切ない思いや孤独をどこかに持っていると思う」
「気づいたら終わっていて、自分で泣いちゃいました」――。映画『レインツリーの国』で、実写映画初出演を果たした西内まりやさん。スクリーンに映る自分の姿を目にしての感想を尋ねると、そんな答えが返ってきました。「図書館戦争」シリーズの有村浩による同名小説を映画化した本作で、西内さんは持ち前の魅力的な笑顔を封印!感音性難聴を抱え、自分の殻に閉じこもってしまったヒロイン・ひとみを熱演しています。主人公・伸(玉森裕太)との出会いをきっかけに彼女が勇気を振り絞り、一歩を踏み出していく姿を西内さんはどのような思いで演じたのか?じっくりとお話を伺いました。
――映画出演が夢だったそうですね。ラブストーリーではありますが、実写映画デビュー作でかなり難しい役への挑戦となりました。
西内:今まで、ドラマで演じるのは学生役が多かったですし、恋愛モノでもコメディテイストの作品が多かったんです。今回はすごくリアリティがあり、障害を抱えた女の子の役で、悩んだり、人生の大事な分かれ道となる心の変化のあるシーンが多くて、大事に演じないと伝わらないし、薄っぺらく感じられないようにというプレッシャーもありました。だからこそ、それができたらやりがいを感じられるだろうとも思いながら、脚本を読みました。
――内向的なひとみの演技にネガティブな雰囲気が伝わってきました。
西内:すごく難しかったです。いかに自分を抑え込むか?私自身は(感情を)素直に伝えたいタイプで顔に出てしまうので隠せないし、嘘もつけないんです(苦笑)。ひとみを演じるには、自分を殺さないといけないし、でも心の底にしっかりと感情を持ってもいるので、そのバランスが難しかったです。撮影の時期は、私生活でもなるべく一人でいて、友達と騒ぐような時間は作らず、何かを一人で抱えて生きている感覚で過ごしていました。
――西内さんのパブリックイメージからかけ離れた、新たな一面を見せられたのでは?
西内:誰しも、切ない思いや孤独をどこかに持っていると思うし、撮影当時の私自身にもそれはあったと思います。普段、“西内まりや”として、そこはなるべく出さないようにしてますが、撮影の時期は存分に自分の弱い部分を出して、モデルや歌手である自分を遠ざけ、いかに人間的な自分でいられるのか?作り笑いや綺麗に見られたいという感情を一切捨てるのが大事だと思いながらやってました。
――それだけに顔を覆う髪をバッサリと切るシーンは開放感があったのでは?
西内:メチャクチャありました(笑)。新しい自分をスタートさせる感覚でした。
――小さい頃からずっとロングヘアで、ここまで短くするのは初めてだったそうですね。
西内:撮影は台本の順番通りというわけにもいかないので、実際に切ったのは撮影に入る前なのですが、30センチバッサリと切りました。でも撮影を前に切ったというのはすごく大きかったかもしれません。この作品に入る上で、そこで一歩を踏み出せた気がします。
――まさに一歩踏み出す、殻を破るというのは本作のテーマです。ひとみにとっての伸のように、西内さんにとって悩んだ時に支えになった存在は?
西内:誰しも悩んだり不安になる時期はあると思いますが、13歳から仕事をしていて、福岡から上京したんです。中高生のころ、なかなか思うようにいかずに孤独だったり、笑顔になれず、とにかく希望がほしいと思っていた時期がありました。そんなとき、私にとって伸さんのような存在だったのは常に母です。上京して一緒に暮らしていて、何があっても変わらぬ愛を持って傍にいてくれました。それが当たり前ではないんだと大人になって感じます。忘れられないのが母の言った「神様は見てくれとるよ」という言葉。一人で悩みながら頑張っていても、神様だけは見てくれているから、努力していればいつか報われるし、悪いことをしても見られていると。その言葉は大きかったです。
――母は偉大ですね。よく話はされるんですか?
西内:何でも知っていますし、隠しきれないです。ちょっと様子がおかしいと「どうしたとね?」と聞いてくるし、改めてこちらから何か伝えても「だろうね」って(笑)。一番喜んでくれるのも母ですし、近くで愛をくれる存在があったからこそ、のびのびと育ってこれたんだなと思います。
――そもそも、西内さんが悩んだりという姿もイメージしづらいですが…。ひとみのようにコンプレックスを持っていたことはありましたか?
西内:私、実はメチャクチャ人見知りの恥ずかしがり屋で、小学生のころから授業参観で手を挙げるなんて絶対にできない子でした。その私が、この業界に入って人前で演技をすることになるなんて…(笑)。
――まず内気で人見知りの西内さんが想像しづらいです。
西内:ドラマの撮影でも、家を出たらずっと緊張してスイッチが入ったままで、家に帰るまで常にオンモードです。家に帰るとドッと疲れが出るんですが、素でいられるのは家にいる時だけでした。現場にたくさんの大人がいると視線を気にしてしまうんです。いかにそれを克服するかが長年のコンプレックスです。今回も、泣きの芝居で緊張が抜けずに何度も繰り返しました。繊細な心の動きなので「もう1回お願いします」と。監督は「もう大丈夫だよ」と言ってくださったんですが、納得いかずに何度も撮り直していただきました。やればやるほど「みなさんをお待たせして…」と考えてしまうんですが、そこを自分の世界に入り込んでリラックスして役に入れるか…。まだまだこれからですね。
――今回、玉森裕太さん(Kis-My-Ft2)との共演はいかがでしたか?
西内:優しくて穏やかなイメージの方だったので、関西弁でグイグイ引っ張る感じの伸さんの姿が想像できず、お会いするのが楽しみでした。現場に入ると関西弁が完璧に入っていて、もともと関西の方なのかと思うくらいでした。俳優だけでなくいろんなお仕事を並行してされているので、そこは歌やモデルをやっている私も重なる部分があり、玉森さんの役者魂を見て気持ちが引き締まり、刺激をいただきました。
――役についてアドバイスをもらったり、話し合ったりしたことはありましたか?
西内:いえ、すごく控えめな方なので。互いに人見知りを発揮して(笑)、現場に入ってどちらが先にしゃべるのか…?という感じでした(苦笑)。
――クリスマスツリーの前でキスをしようとする2人の姿がメインビジュアルでも使用されてます。人見知りな2人がそんなシーンを…。
西内:実際にクリスマス直前の撮影で、寒さで震えていました(苦笑)。玉森さんも寒さで子犬のように震えていらっしゃいました。「大丈夫ですか?」「大丈夫です」と最後まで敬語で…(笑)。ここは伸さんみたいに引っ張ってほしかったですが(苦笑)、でも、だからこそ玉森さんの持つ優しさや繊細さが伸さんに出ていて、改めて玉森さんにしかできない役だったんだなと感じます。
――完成した映画を見てキュンとしたシーンはありましたか?
西内:伸さんがひとみに「飲み会で同僚に関西弁で『好き』と言ってとお願いされたけど、(“好き”という言葉を大事にしているから)言わなかった」と伝えるところ。わざわざ言わなくてもいいのに、言うんかい!って(笑)。かわいいです。くすぐられました。伸さんの積極的に思ったことを言って、真っ直ぐに見てくれる姿に心打たれます。
――モデルに歌手、女優までやられていてお忙しいと思いますが、こうした状況をご自身ではどのように受け止めていますか?
西内:ドラマをやっていると、それだけで睡眠時間も限られるし、本格的に音楽制作をして自分で作詞作曲もするようになったときは、あまりに時間が足りなくて体力と集中力の限界に何度もぶつかりましたし、それこそこの1年の間で何度も殻を破ったと思います。
――あくまで状況をポジティブに成長の機会と受け止めてらっしゃいますね。
西内:やっている最中は「もうやりたくない!」と思うんですけど結局、自分のやりたいこと、好きなことをやっていると思うとその瞬間に「楽しいじゃん」と思えてくるんです。こんな楽しいことやらせてもらえてるんだって。ただ、仕事となると期限もあり、体調が悪くてもやらないといけないし、そこは大変です。でも「今頑張らなくていつ頑張るんだ?」って。今は、いろんなことに挑戦して、吸収して、本当に自分がやりたい形を見つけて、いつかそこに集中できるようになるのかな?と考えてます。
――「10代の女の子がなりたい顔」に代表されるような、周囲の反応、喧騒はどのように見てますか?
西内:忙しい時ほど周りの反応が感じられないんですよね、現場にしかいないので。自分がどれだけ周りに知られているかわからなかったんです。そんな中で、たまに時間ができて外に出ると一気に声を掛けられる機会が多くなって、今までは気づかれもしなかったような場所で声を掛けていただけるようになって驚きましたし、すごく嬉しかったです。自分が発信できる層が広がってきているんだなって感じました。
――「Peachy」という言葉には「ゴキゲンな」「ハッピーな」という意味があるのですが、今西内さんにとってのPeachyの源は何ですか?
西内:そうですねぇ…(と考えつつ、期待を込めた笑顔で見守る周囲を指し)それそれ!その顔!そういう笑顔を見ると幸せです(笑)。あと食べ物でハマってるのはカニカマ!カニを食べている気持ちになれます。
――そこはあえて本物のカニではなく…
西内:カニカマです。もうカニカマしか頭にないですね(笑)。
『レインツリーの国』は11月21日(土)よりロードショー。
映画公式サイト:http://raintree-movie.jp/
【西内まりやさん 最新情報】
4thシングル「Save me」発売中
撮影:倉橋マキ
取材・文:黒豆直樹
制作・編集:iD inc.
『髪をバッサリ切るシーン…開放感がメチャクチャありました(笑)』
――映画出演が夢だったそうですね。ラブストーリーではありますが、実写映画デビュー作でかなり難しい役への挑戦となりました。
西内:今まで、ドラマで演じるのは学生役が多かったですし、恋愛モノでもコメディテイストの作品が多かったんです。今回はすごくリアリティがあり、障害を抱えた女の子の役で、悩んだり、人生の大事な分かれ道となる心の変化のあるシーンが多くて、大事に演じないと伝わらないし、薄っぺらく感じられないようにというプレッシャーもありました。だからこそ、それができたらやりがいを感じられるだろうとも思いながら、脚本を読みました。
――内向的なひとみの演技にネガティブな雰囲気が伝わってきました。
西内:すごく難しかったです。いかに自分を抑え込むか?私自身は(感情を)素直に伝えたいタイプで顔に出てしまうので隠せないし、嘘もつけないんです(苦笑)。ひとみを演じるには、自分を殺さないといけないし、でも心の底にしっかりと感情を持ってもいるので、そのバランスが難しかったです。撮影の時期は、私生活でもなるべく一人でいて、友達と騒ぐような時間は作らず、何かを一人で抱えて生きている感覚で過ごしていました。
――西内さんのパブリックイメージからかけ離れた、新たな一面を見せられたのでは?
西内:誰しも、切ない思いや孤独をどこかに持っていると思うし、撮影当時の私自身にもそれはあったと思います。普段、“西内まりや”として、そこはなるべく出さないようにしてますが、撮影の時期は存分に自分の弱い部分を出して、モデルや歌手である自分を遠ざけ、いかに人間的な自分でいられるのか?作り笑いや綺麗に見られたいという感情を一切捨てるのが大事だと思いながらやってました。
――それだけに顔を覆う髪をバッサリと切るシーンは開放感があったのでは?
西内:メチャクチャありました(笑)。新しい自分をスタートさせる感覚でした。
――小さい頃からずっとロングヘアで、ここまで短くするのは初めてだったそうですね。
西内:撮影は台本の順番通りというわけにもいかないので、実際に切ったのは撮影に入る前なのですが、30センチバッサリと切りました。でも撮影を前に切ったというのはすごく大きかったかもしれません。この作品に入る上で、そこで一歩を踏み出せた気がします。
『私、実はメチャクチャ人見知りの恥ずかしがり屋で…』
――まさに一歩踏み出す、殻を破るというのは本作のテーマです。ひとみにとっての伸のように、西内さんにとって悩んだ時に支えになった存在は?
西内:誰しも悩んだり不安になる時期はあると思いますが、13歳から仕事をしていて、福岡から上京したんです。中高生のころ、なかなか思うようにいかずに孤独だったり、笑顔になれず、とにかく希望がほしいと思っていた時期がありました。そんなとき、私にとって伸さんのような存在だったのは常に母です。上京して一緒に暮らしていて、何があっても変わらぬ愛を持って傍にいてくれました。それが当たり前ではないんだと大人になって感じます。忘れられないのが母の言った「神様は見てくれとるよ」という言葉。一人で悩みながら頑張っていても、神様だけは見てくれているから、努力していればいつか報われるし、悪いことをしても見られていると。その言葉は大きかったです。
――母は偉大ですね。よく話はされるんですか?
西内:何でも知っていますし、隠しきれないです。ちょっと様子がおかしいと「どうしたとね?」と聞いてくるし、改めてこちらから何か伝えても「だろうね」って(笑)。一番喜んでくれるのも母ですし、近くで愛をくれる存在があったからこそ、のびのびと育ってこれたんだなと思います。
――そもそも、西内さんが悩んだりという姿もイメージしづらいですが…。ひとみのようにコンプレックスを持っていたことはありましたか?
西内:私、実はメチャクチャ人見知りの恥ずかしがり屋で、小学生のころから授業参観で手を挙げるなんて絶対にできない子でした。その私が、この業界に入って人前で演技をすることになるなんて…(笑)。
――まず内気で人見知りの西内さんが想像しづらいです。
西内:ドラマの撮影でも、家を出たらずっと緊張してスイッチが入ったままで、家に帰るまで常にオンモードです。家に帰るとドッと疲れが出るんですが、素でいられるのは家にいる時だけでした。現場にたくさんの大人がいると視線を気にしてしまうんです。いかにそれを克服するかが長年のコンプレックスです。今回も、泣きの芝居で緊張が抜けずに何度も繰り返しました。繊細な心の動きなので「もう1回お願いします」と。監督は「もう大丈夫だよ」と言ってくださったんですが、納得いかずに何度も撮り直していただきました。やればやるほど「みなさんをお待たせして…」と考えてしまうんですが、そこを自分の世界に入り込んでリラックスして役に入れるか…。まだまだこれからですね。
『玉森さんとは互いに人見知りを発揮していました(笑)』
――今回、玉森裕太さん(Kis-My-Ft2)との共演はいかがでしたか?
西内:優しくて穏やかなイメージの方だったので、関西弁でグイグイ引っ張る感じの伸さんの姿が想像できず、お会いするのが楽しみでした。現場に入ると関西弁が完璧に入っていて、もともと関西の方なのかと思うくらいでした。俳優だけでなくいろんなお仕事を並行してされているので、そこは歌やモデルをやっている私も重なる部分があり、玉森さんの役者魂を見て気持ちが引き締まり、刺激をいただきました。
――役についてアドバイスをもらったり、話し合ったりしたことはありましたか?
西内:いえ、すごく控えめな方なので。互いに人見知りを発揮して(笑)、現場に入ってどちらが先にしゃべるのか…?という感じでした(苦笑)。
――クリスマスツリーの前でキスをしようとする2人の姿がメインビジュアルでも使用されてます。人見知りな2人がそんなシーンを…。
西内:実際にクリスマス直前の撮影で、寒さで震えていました(苦笑)。玉森さんも寒さで子犬のように震えていらっしゃいました。「大丈夫ですか?」「大丈夫です」と最後まで敬語で…(笑)。ここは伸さんみたいに引っ張ってほしかったですが(苦笑)、でも、だからこそ玉森さんの持つ優しさや繊細さが伸さんに出ていて、改めて玉森さんにしかできない役だったんだなと感じます。
――完成した映画を見てキュンとしたシーンはありましたか?
西内:伸さんがひとみに「飲み会で同僚に関西弁で『好き』と言ってとお願いされたけど、(“好き”という言葉を大事にしているから)言わなかった」と伝えるところ。わざわざ言わなくてもいいのに、言うんかい!って(笑)。かわいいです。くすぐられました。伸さんの積極的に思ったことを言って、真っ直ぐに見てくれる姿に心打たれます。
『この1年の間で何度も殻を破ったと思います』
――モデルに歌手、女優までやられていてお忙しいと思いますが、こうした状況をご自身ではどのように受け止めていますか?
西内:ドラマをやっていると、それだけで睡眠時間も限られるし、本格的に音楽制作をして自分で作詞作曲もするようになったときは、あまりに時間が足りなくて体力と集中力の限界に何度もぶつかりましたし、それこそこの1年の間で何度も殻を破ったと思います。
――あくまで状況をポジティブに成長の機会と受け止めてらっしゃいますね。
西内:やっている最中は「もうやりたくない!」と思うんですけど結局、自分のやりたいこと、好きなことをやっていると思うとその瞬間に「楽しいじゃん」と思えてくるんです。こんな楽しいことやらせてもらえてるんだって。ただ、仕事となると期限もあり、体調が悪くてもやらないといけないし、そこは大変です。でも「今頑張らなくていつ頑張るんだ?」って。今は、いろんなことに挑戦して、吸収して、本当に自分がやりたい形を見つけて、いつかそこに集中できるようになるのかな?と考えてます。
――「10代の女の子がなりたい顔」に代表されるような、周囲の反応、喧騒はどのように見てますか?
西内:忙しい時ほど周りの反応が感じられないんですよね、現場にしかいないので。自分がどれだけ周りに知られているかわからなかったんです。そんな中で、たまに時間ができて外に出ると一気に声を掛けられる機会が多くなって、今までは気づかれもしなかったような場所で声を掛けていただけるようになって驚きましたし、すごく嬉しかったです。自分が発信できる層が広がってきているんだなって感じました。
『それそれ!その顔!そういう笑顔を見ると幸せです(笑)』
――「Peachy」という言葉には「ゴキゲンな」「ハッピーな」という意味があるのですが、今西内さんにとってのPeachyの源は何ですか?
西内:そうですねぇ…(と考えつつ、期待を込めた笑顔で見守る周囲を指し)それそれ!その顔!そういう笑顔を見ると幸せです(笑)。あと食べ物でハマってるのはカニカマ!カニを食べている気持ちになれます。
――そこはあえて本物のカニではなく…
西内:カニカマです。もうカニカマしか頭にないですね(笑)。
『レインツリーの国』は11月21日(土)よりロードショー。
映画公式サイト:http://raintree-movie.jp/
【西内まりやさん 最新情報】
4thシングル「Save me」発売中
撮影:倉橋マキ
取材・文:黒豆直樹
制作・編集:iD inc.