「推し」は人生の活力になる人もいれば、自分の人生を変えるモチベーションになる人も。松元佳那子さん(34)は、なんと「推し」がきっかけで、想像もしなかったような転職を遂げたひとり。あの『ウマ娘』にハマって、学芸員から競走馬に関わる世界に飛び込んだのです。(全2回中の1回)

【写真】人生が一変!『ウマ娘』にハマって転職まで果たした松元佳那子さん(全8枚)

アニメにハマってゲームやグッズ購入の沼へ

『ウマ娘』にハマって転職まで果たした松元佳那子さん

── 世間では推し活が人生の一部になっている人が増えています。松元さんはあるアニメにはまり、転職活動にも大きな影響をもたらしたそうですね。どんなアニメが好きだったのでしょうか?

松元さん:『ウマ娘 プリティーダービー』が大好きです。もともとアニメやゲームなど、好きになったらとことんハマるタイプ。『ウマ娘 プリティーダービー』は、アニメをたまたま観て大好きになりました。ストーリーはおもしろくて、キャラクターもみんなかわいくて、最終回は大号泣。競走馬であるキャラクターたちが成長し、レースで走る姿を見ていると応援したくなるし、「自分も頑張ろう」と前向きになれました。ソーシャルゲームもあると聞き、ゲームも始めたんです。アニメのキャラを自分の手で成長させると、さらに愛着がわきますよね。

── 好きなキャラはいますか?

松元さん:どの子もみんなかわいくて大好きですが、マチカネタンホイザ、ライスシャワー、サイレンススズカがお気に入りです。なかでもマチカネタンホイザのコスチュームや話し方がキュートで、どストライクでした(笑)。ふだんはかわいいのに、走るときの姿や疾走感が本当にかっこいいんですよ。ライバルをリスペクトしているところ、勝利に向けてひたむきに努力する姿が素敵です。

── キャラクターの推し活などはしていますか?

松元さん:推しキャラのグッズを買ったり、画像を待ち受けにしたりしています。『ウマ娘』がコンビニコラボをしたときに限定のシール付きの商品を、推しが出るまで買いまくったことがあります。コンビニコラボ商品は夫にも買ってきてもらったことがあります。ひとりでは食べきれないほど商品を買ったので一緒に食べてもらいました(笑)。

推し活が導いた!博物館勤務からの意外な転職先

── 作品に熱中するだけにとどまらず、松元さんの場合、推し活が転職の要因にもなったそうですね?

松元さん:そうなんです。現在働いている大江運送株式会社は、競馬の競走馬を北海道の牧場からトレーニングセンターに輸送する会社です。それまで競走馬は、自分とは関係のない、遠い存在と思っていました。ところが「輸送という形で馬にかかわれるんだ!」と、興味を持ちました。

以前は大学の博物館で働いていたのですが、夫の転職で引っ越すことになり、私も転職を考えていたタイミングだったんです。妊活に専念したかったから、フルリモートの仕事に就きたいとも思っていました。いまの会社はフルリモートで働けるうえ、『ウマ娘』にハマっていた私にとっては、競走馬にかかわる仕事は、とても親近感がある業務内容でした。これは何かの縁かもしれないと応募しました。

学芸員時代は多忙な日々を送っていた

── 現在はどのような業務に取り組んでいますか?

松元さん:SNSの運営、SNSで配信するショート動画の編集、競走馬を運ぶ車がきちんと運行できているかのチェックなど、幅広い業務に携わっています。直接馬に触れるわけではないものの、自分の仕事が競走馬を安全に運送することにつながっていると考えると、責任もやりがいも感じます。もっと会社の役に立ち、知名度を上げることに貢献したいです。視野を広く持ち、たくさんのことを学んでいきたいです。

── 今後取り組んでみたいことはありますか?

松元さん:実際に馬を見たり、ほかの社員の方に直接会ってみたりしたいです。ずっとリモートで働いているので、まだ北海道の本社に行ったことがないんです。いつか北海道に行き、競走馬を実際に運ぶところも見てみたいです。仕事をするうえでも、リアルで馬や運ぶところを見ることで、「私が手がけている仕事にはこういう意味があったんだ」と、より理解が深まるような気がします。

PROFILE 松元佳那子さん

まつもと・かなこ。大学院修了後、大学院助手を経て大学博物館で学芸員として働く。退職後、大江運送株式会社のリモートワーカーとして働く。夫、1歳の娘の3人家族。

取材・文/齋田多恵 写真提供/松元佳那子、大江運送株式会社