「ここは僕が…」レストランでのお会計。金持ち男が放ったモヤっとする一言
男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
-果たして、あの時どうすればよかったのだろうか?
できなかった答えあわせを、今ここで。
今週のテーマは「『またすぐに♡』と言っていた女から急に連絡が来なくなった理由は…?」という質問。さて、その答えとは?
虎ノ門からタクシーに乗り、再開発が進む街並みを後にしながらスマホに来た通知を開く。
― 剛:七瀬ちゃん、今日はありがとう!
マッチングアプリで出会った剛と、今日は二度目のデートだった。いい人だし顔も悪くない。経営者として成功していて、お金もあると思う。
ただ、どうも気乗りしない。
― Nanase:ごうさん、今日はありがとうございました。とっても楽しかったです♡次回も楽しみにしていますね!
デート後の定型文を送ってから、もう一度タクシーの窓から流れる景色を見つめてみる。
― こういうこと、他の女性は気にしないのかな…。
私の器が小さいのだろうか。ただ二度のデートでなんとなく剛の人間性を垣間見てしまい、「次回のデートはもういいかな」と思い始めていた。
A1:タクシーに乗ると「金のかかる女」だと思われる?
剛と出会ったのは、マッチングアプリだった。肩書は経営者で、顔も悪くない。スワイプすると高級外車に高級腕時計の写真が並んでいる。
誰が見ても、“リッチな経営者”という見せ方だった。
何度かやり取りをし、表参道交差点のすぐ近くにある『Cafe & Dining ZelkovA(カフェ&ダイニング ゼルコヴァ)』で早速会うことになった。
「初めまして…剛さんですよね?」
「そうです。初めまして」
幼い顔立ちだったので勝手に華奢な人を想像していたけれど、写真で見るより大きくて、身長も高い。
「七瀬さん、綺麗ですね」
「いえいえ、そんなそんな。剛さんもイメージ通りでした」
「イメージ、どんな感じでした?」
「爽やかで優しそうだなぁと。身長、お高いんですね」
なんとなくぎこちないけれど、マッチングアプリで初めて会う時は誰もが緊張するもの。探り探りの中、私たちはお互いを知っていく。
「七瀬さんは、何のお仕事をされているんですか?IT系と聞いておりましたが…」
「スタートアップの企業で秘書をしています。剛さんは?プロフィールがすごい華やかでしたけれど…」
剛のプロフィールは、完璧だった。有名大学卒で、経営者。前述の通り稼いでいて一流の生活を送っている。
「僕はいくつか会社をやっているんだけど、一つは美容系ですね」
「美容系?気になります!」
「サプリとか作っているんだけど…」
清潔感もあるし、今のところ非の打ちどころがなかった。
「剛さん、絶対にモテますよね?」
「会社が軌道に乗ってから、言い寄ってきてくれる女の子は増えたんだけど…。でもそういうのって分かっちゃうんだよね」
「そっか…。それはそれで大変ですね」
そんな話をしていると、あっという間に1時間くらい過ぎていた。
「あれ、もうこんな時間だ」
「本当ですね。あっという間…」
― このあとの進展はアリなのか、ナシなのか…。
そんなことを考えていると何かを察してくれたのか、剛から誘ってきてくれた。
「良ければ、次は飲みに行きませんか?」
「もちろんです!」
ひと通り話を終え、次の約束を果たすと剛はテーブルの上にあったお会計の紙を掴んだ。
「ここは僕が払っておきますので」
「いんですか?ご馳走様です」
「いえいえ。お茶なんて安いものですから」
「ありがとうございます。次も楽しみにしていますね」
こうして2人でお店の外へ出て、私たちは表参道の交差点まで一緒に歩いた。そしてタクシーに乗ろうとした瞬間に、剛からの一言に私は慌てて上げかけていた手を引っ込める。
「七瀬さん、電車ですか?」
― ここでタクシーに乗ったら、「金のかかる女」って思われるかな…。
マッチングアプリだと、一度では相手のことは掴みきれない。また剛の好きなタイプもよくわからなかったし、下手に“金のかかる女=金目当ての女”と思われても嫌なので、なんとなく彼の目の前でタクシーに乗るのはやめておいた。
「あ…。私は少しお買い物をしてから帰ろうかなと」
「そうですか。表参道でショッピング、いいですね」
ただ、私はタクシーよりももっと大事なことをこのデートで見落としていた…。
A2:お会計の際に、いちいち恩着せがましい。
すぐにやってきた二度目のデート。剛は虎ノ門にあるスタイリッシュでイノベーティブなフレンチを予約してくれていた。
「素敵なお店ですね…」
「いいでしょ?僕も初めて来るんだけど、気になっていた店なんですよ」
シャンパンで乾杯すると、隣に座る剛がじっと私を見つめてくる。その視線が恥ずかしくて、思わず顔を隠す。
「七瀬ちゃんって、本当に肌綺麗だよね。普段何かしてるんですか?」
「特別なことは何も…。でも一応、美容皮膚科には通っています」
「何してるんですか?」
「フォトフェイシャルとか?」
「それだけ?」
「はい。でも剛さんも肌綺麗ですよね」
「一応、美容系なので(笑)。自社製品のサプリはせっせと飲んでます」
「ビタミン系でしたっけ?」
ここから思わず美容の話で盛り上がってしまった。32歳になり、肌のアレコレが気になり始めた今日この頃。最近は寝る前に、美容系のSNSをせっせとチェックしていた。
「七瀬ちゃん、詳しいですね」
「好きなんですよね…って、こんな話ばかりでつまらないですよね?」
「ううん。勉強になるし、聞いていて楽しいです!」
ここまでは、楽しく会話も弾んでいたし盛り上がっていたと思う。しかし食事も終盤に差し掛かり、お会計の時間になった時。私は彼の一言に妙な違和感を感じてしまった。
「この後、時間ありますか?もう1軒行きません?」
「もちろんです」
剛の誘いに笑顔で応じる。しかし剛はお会計を持ちながら、こう言ってきた。
「ここ、僕が払ってもいいですか?結構値段がいってるから(笑)」
払ってくれるのはありがたいし、感謝しかない。でも「結構値段がいってる」の一言は必要なのだろうか。
「高い食事代を払わせて申し訳ない」と思ってしまうし、微妙に恩着せがましさを感じてしまう。
―「払ってもいい?」ではなく「払うね」で良い気がするけれど…。
「いいんですか?ありがとうございます」
モヤっとした感情を抱えながら、私たちはホテルのバーへと移動した。
照明も暗く、ソファ席で距離も近くなった私たち。敬語もとれたところで、剛は急に私をまっすぐ見つめてくる。
「こんなこと二度目で言うの気持ち悪いかもだけど、七瀬さんのこと結構好きかも」
「本当に?ありがとう」
もし私のことを口説きたいと思ってくれているならば、お会計くらいスマートにして欲しい。
「またご飯行かない?」
「もちろんです」
― その食事のお会計は彼なのかな。私なのかな。また払ってもらうにしても、一言多いんだろうな…。
そんなことを考える自分も嫌だし、お会計の時に毎回ドギマギしたくない。もっとスムーズに、スマートにして欲しい。
面倒なので、私はお手洗いに立った隙にこの2軒目のお会計を済ませておく。するとそれに気がついた剛は驚いた様子だった。
「え!?いいの?」
「もちろんです。さっき払ってもらったので」
「たしかにさっき払ったので、ご馳走になろうかな。ありがとう!」
― だからその一言、いる??
「ありがとう」だけでいいではないか。なぜわざわざ、「1軒目は僕が支払った」というアピールをするのだろう。
いい人だけど、毎回この気遣いとやりとりがあるのは面倒だなと思い、私は少し様子を見ることにした。
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