男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

-あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?

誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。

さて、今週の質問【Q】は?

▶前回:3度目のデートでキス。「付き合おう」と言って家まで来たのに、翌朝に男が慌てて帰った理由




「龍太くんのことは、好きだけど付き合えないよ…ごめん」

僕は今、最近ずっと仲良くしてきた瞳から、これまでの経緯を考えるとまるで理解できないことを言われている。

「好き」なのに「付き合えない」ほど相反する言葉はない。

「なんで?僕のこと好きでいてくれるなら、いいじゃん。ダメなの?」
「龍太くんは本当にいい人なんだけど…」

言葉を濁す瞳に対し僕はこれ以上何か言えることもなく、肩を落とした。

「付き合えると思っていたんだけど…」

未練がましいのはわかっている。でも瞳とは毎日のように電話もし、連絡も頻繁に取り合っていた。

それにデートも、三度もしている。毎回楽しそうにしてくれていたし、僕としては確実にいけると思っていた。

しかも出会った当時僕には彼女がいたのだが、瞳のために別れた。

それなのに、どうして瞳は僕と「付き合えない」のだろうか。


Q1:「彼女がいる」と聞いても会い続けた女の心理は?


瞳と出会ったのは、3ヶ月前のこと。仕事終わりに同期と虎ノ門で飲んでいた時に、たまたま隣に座ったのが女性の2人組だった。

友達も可愛かったけれど、僕は最初から瞳のことを気に入った。

「良ければ一緒に飲みませんか?」

典型的な誘い文句だなと自分でも思った。瞳たちは一瞬驚いたような顔をしたけれど、笑顔で対応してくれた。

「私たちで良ければ…。ちなみに今日は、お仕事帰りですか?」

声をかけられていることに慣れているのか、彼女たちからいろいろと話しかけてきてくれる。

「そうなんですよ、会社が近くて。お二人は?」
「私たちもです。よくここで飲んでいるんですか?」
「そうですね。美味しいお店が多いし入りやすいので、仕事帰りによく来ます」

そんな会話をしているうちに、気がつけば僕と瞳、そして同期ともうひとりの女の子…という組み合わせになっている。

「LINE交換してもいいですか?」
「もちろんです」

こうして、この日は解散したけれど、白金の『Le Comptoir de NIHEI』で、すぐに二人で会うことになった。




「この前はありがとう」
「いえいえ、こちらこそ」

最初はどことなくぎこちなかったけれど、食事とお酒が進むにつれて徐々にお互いの緊張も解けてきた。

「じゃあ瞳ちゃんは、来月で会社を辞めて独立するの?」
「そうなんです。不安でいっぱいですけど…」

瞳の目は輝いていて、僕はその強い眼差しから視線が外せなくなる。

「すごいね!瞳ちゃんなら大丈夫だよ。頑張って。何かできることがあれば言ってね。本当に瞳ちゃんって…素敵だよね」
「そうですか?龍太さんのほうこそ。優しいし、すごくお仕事できそうですし」

そう言うと、じっと僕を見つめてきた瞳。吸い込まれそうな視線に、息を呑む。しかし次の問いに、何も言えなくなってしまった。

「…ちなみに、今龍太さん彼女とかいらっしゃるんですか?」

表面はカリっとしているのに中はふっくらジューシーに焼き上げられた絶品の「仔羊骨付き背肉のグリエ」を食べる手が、一瞬止まる。




実は今、彼女がいる。

ただ交際して半年しか経っていないけれどなんだかしっくりりこず、別れそうではあった。

だから正直に、僕は今の現状を瞳に伝えることにした。嘘をつくのは嫌だし、ちゃんと瞳には伝えておこうと思ったから。

「…実は今、彼女いるんだよね」
「え……。そっか、そうですよね」

明らかに落ち込んでくれた瞳。そんな瞳の態度が嬉しかったけれど、ここで喜ぶのは何かが違う。それに誤解されたくないので、ありのままを伝えてみる。

「でもこれは嘘とかじゃなくて、実は今別れそうなんだ」
「そうなんですか?」

でもこれ以上、瞳は何も聞いてこなかった。

「そういえば、この前一緒にいた美奈子、覚えていますか?あの後、龍太さんの同僚の方といい感じらしくて」
「そうなの?」

瞳の大人な対応のおかげで、彼女の会話に戻ることはなく、ただただこのデートは楽しく終わった。

そうして解散したのだけれど、今諦めたら瞳とは二度と会えない気がして、僕は家に着いた後に思いきって瞳に電話をしてみた。

「…もしもし?」
「あ、瞳ちゃん?ごめん遅くに。無事に家に着いたかなと思って」
「ちゃんと着きましたよ。龍太さんは?もう家ですか?」
「うん。今日は何かごめんね」
「いえいえ。正直に話してくれて、嬉しかったです」

電話でも、瞳は普通だった。しかも彼女がいることには一切触れてこない。

― 気にしていないってこと…?

その証拠に、次のデートの誘いにも、瞳はちゃんと乗ってきてくれた。


Q2:女が男に対して抱いていた思いは?


そして二度目のデート。僕はこの時に、瞳が僕に好意を抱いてくれているのがわかった。

なぜならデート中、僕の目を見てずっとうんうんとうなずきながら話を聞いてくれて、そして何を言っても笑顔で返してきてくれる。

「龍太さんって、カッコイイのに話も面白くて最高だな〜」

そんなことを言われて、嫌になる人なんているのだろうか。

「瞳ちゃん。前に話したことなんだけど…本当に、僕彼女と別れるから」
「そうなの?」
「うん」
「わかった。じゃあ待ってるね」

このあとも彼女をつなぎとめるために、頻繁に連絡を入れた。

そして別れた当日。一刻も早く伝えたくて、僕は彼女と別れてタクシーに乗った瞬間に、瞳に電話で報告をする。




「もしもし?」
「瞳ちゃん、寝てた?」

時計を見ると24時だった。家にいるであろうまったりとした瞳の声を聞いて、僕はなぜだか心底ほっとした。

「ううん、まだ起きていたけど…どうしたの?」
「夜遅くにごめん。今飲んでいてタクシーに乗ったんだけど、瞳ちゃんの声が聞きたくなって。あと、報告があって」
「うんうん」
「彼女と別れたよ」

すると、しばらく瞳は静かになった。電話越しに、数秒の沈黙が流れる。

「本当に?それって、私のせい?」
「ううん、違うよ。瞳ちゃんのことが好きって言うのは本当だけど、それより前からずっと別れそうだったから」
「そうなんだ」
「今度会った時に、ちゃんと話すね」
「わかった。お休み」

こうして、僕たちは翌週に会うことになった。




そして今回のデートでも、瞳は終始楽しそうにしてくれている。

「瞳ちゃんといると、本当に楽しい。瞳ちゃんっていつも笑顔だし…。僕、瞳ちゃんのこと好きだな」
「嬉しい…ありがとう」
「瞳ちゃんって、今彼氏いないんだよね?」
「うん。龍太くん、本当に別れたの?」
「別れたよ」

だから、正式に瞳に交際をオファーしてもいいかなと思った。

「別れたばかりで軽いと思われるかもだけど、僕本当に瞳ちゃんのことが好きで。大切にするから、付き合ってもらえないかな…?」

しかし、答えは曖昧なNOだった。

― やっぱり早すぎたかな…。

もう少し待てば、返事は変わっただろうか。せっかく彼女と別れたのに、彼女の予想外の回答に僕はかなり戸惑っている。

▶前回:3度目のデートでキス。「付き合おう」と言って家まで来たのに、翌朝に男が慌てて帰った理由

▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由

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女が男の告白を断った理由は?