空港は、“出発”と“帰着”の場。

いつの時代も、人の数だけ物語があふれている。

それも、日常からは切り離された“特別”な物語が。

成田空港で働くグラホ・羽根田(はねだ)美香は、知らず知らずのうちに、誰かの物語の登場人物になっていく―。

「ソラノシタ〜成田空港物語〜」一挙に全話おさらい!



第1話:ロンドンから帰国した直後、女に予想外のトラブルが…

― まだまだ学ぶべきことがたくさんあったのに…逃げるようにロンドンを出てきちゃったな…。

最終目的地である成田空港行きのフライトまで、乗り継ぎ時間は17時間。十分すぎる待ち時間のせいで、考え事が頭の中をグルグルめぐった。

思考力も体力も、ごっそり削られているのを感じた麻衣子は、早々に空港内のトランジットホテルにチェックイン。

ホテルで一晩過ごすことに決めた。しかし、心が晴れず、あまりよく眠れなかった。

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第2話:交際3年。初の海外旅行を目前に、連絡が激減したのはなぜ…?機内で彼が語った本音とは

このハワイ旅行は、果歩の29歳の誕生日に合わせて、彼が企画してくれたものでもある。

きっと最高の旅行になるに違いない。そう思った果歩は、ネットやSNSで話題のスポットを調べては、頬を緩めるのだった。

ところが、次の日の夜。

『ごめん、果歩…。7日、仕事でどうしても抜けられなくなった』

旅行の日程は、2月7日から6日間。彼から送られてきたLINEに、絶頂だった果歩の気分は、どん底につき落とされたのだった―。

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第3話:同棲2年。彼女との関係が冷えきった中、久々の海外出張が決定。男はつい浮かれてしまい…

交際4年目の亜香里とは、同棲を始めてもうすぐ2年。

コロナの流行で生活様式が変わってからというもの、2人の関係性はすっかり変わってしまった。

とりわけ彼女が家でずっと不機嫌そうにしているせいで、正人は窮屈極まりない。この調子で、これから先も一緒に暮らしていけるのだろうか―。

こんなふうに考えることが増えていた。

1週間の海外出張が決まったのは、ちょうどそんなときだった。

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第4話:2年間支えてくれた彼女に、別れを告げた男。破局の決定打となった、彼女のある一言とは

「羽根田先輩、わかりました。私、行ってきます」
「ありがとう!これ、モトローラ持って行って。状況がわかったら教えてね」

香奈美は、制服の腰のベルトにモトローラを引っかけると、保安検査場に走った。視線の先に、背の高い男性と検査場の職員の姿をとらえる。

― あ、あの人かな?

「お客様、どうなさいましたか?」

なにやら話し合っている2人に駆け寄って、香奈美は声をかける。すると、職員の口から、信じられない言葉が飛び出した。

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第5話:女友達3人でパリ旅行へ。しかしある出来事で、空気が一気に凍りつき…。一体なにが?

「真奈美っ!ごめん、待った?」

大学時代からの友人・佳織と今日子が揃ってやってきた。彼女たちは、東京駅からリムジンバスに乗ってくると言っていた。

「ううん、私もさっき着いたところ」
「そっか、よかった!って、真奈美―」

次の瞬間。ただでさえ大きな佳織の目がパッと見開かれ、真奈美の足元にくぎ付けになった―。

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第6話:食事会に参加しても、22時には帰る27歳の女。これまでしたことのない“あれ”とは…?

聞けば2人とも、ここ最近よく食事会をしているらしい。どことなく場慣れした余裕みたいなものが感じられて、美香は少し気後れする。

「そろそろ、行こうか」
「…うん」

だが、そうも言っていられない。店内に足を踏み入れる前。美香は、心の中で小さく意気込んだ。

― …私だって、今日こそは!

なぜなら、社会人になってからの美香は、食事会で“あれ”をしたことがないのだ。

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第7話:パイロット訓練生とグランドスタッフ。いい感じだった2人の仲が、一晩で急激に冷めたワケ

少し早めの16時にオープンするこの店には、自然と空港関係者が集う。美香もまた、新人の頃先輩に連れられてきて以来、かれこれ5年間通い続けている。

海外のパブのような内装。それと、ビールの種類が豊富なことでも人気がある。

美香は、この日もいつものように黒ビールを注文すると、定位置のテーブル席に座った。しばらくすると―。

「美香、久しぶり!」

懐かしい声が耳に響いた。

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第8話:大切な人に会おうと帰国した、NY在住の女。成田到着直後、1通のLINEで泣き崩れ…

慣れない海外生活だが、仕事だと思うと積極的に外出できた。おかげで、暮らしは思っていたよりもずっと充実している。ただ亜依子には、ひとつ気がかりなことがあった。

― こっちでの生活も落ち着いてきたし、そろそろ一時帰国のことも考えなくちゃ。

まさにそう思ったタイミングで、スマホがブーブーと振動する。画面には、“母”と表示されていた。

「…もしもし、亜依子?」

電話越しに震える母の声を聞いて、亜依子は不安が現実のものになったのだと察した―。

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第9話:勤続5年目、ベテランCAの「黒歴史」。お客様とグラホを巻き込んで、ゲートでいきり立ったワケ

CAはイメージが大事な職業だ。会社から“通勤中のヘアメイクもしっかりと―”と厳しく言われている。だから日菜子は、家を出た瞬間から仕事モードに入るように意識していた。

― 本当…気が抜けない。

この日も、いつものように知らない誰かに気を使いながら、4階・出発フロアにあるスタバでコーヒーを受け取る。その足で、オフィスへと向かっているときだった。

「あ!彼女って、確か…」

チェックインカウンターの前で、懐かしい姿を見つけた。日菜子は、4年半前のある出来事を思い出す。

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第10話:偶然、5年ぶりに元カノに遭遇…。男が思わず見入ってしまった、彼女の「現在の姿」とは?

「よし、撮れた!基樹さん、このあと局に戻りますか…って顔色悪いですよ?最近、忙しすぎたんじゃないですか」

心当たりは、冬の終わりにおこなわれていたプロ野球のキャンプだ。その取材で、基樹は東京から沖縄、鹿児島を何度も往復していた。今になっても、激務の疲れがまだ残っているような気がする。

「あぁ、大丈夫。でも僕、コーヒー飲んでちょっと休憩してから戻るよ」

カメラマンをひとりでタクシー乗り場へ向かわせると、基樹はそのうしろ姿を見送った。次の瞬間。

― 嘘…だろ?

基樹の視線は、ひとりの女性にくぎ付けになった。そして、気づけば足は、彼女のあとを追っていた―。

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第11話:成田空港免税店で働く美容部員。仕事中についやってしまう、人に言えないある“クセ”とは

「新色の口紅って、どこにありますか?」
「こちらでございます。全色揃っております」
「あー、そうそうこれです!よかった、免税店ならまだあると思って」

そう言って、弾けるような笑顔でレジへと向かうお客様を見送る。美容部員の仕事は好きだ。だけど真理奈は、ときどき“ここ”にいることに違和感を覚える。

― 私だって、“あっち側”にいたかもしれないのに…。

真理奈は視線を移す。かつて焦がれていた人や光景が、彼女の目にはひどく眩しく映るのだった。

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第12話:外資コンサルの男が、柄にもなく一目ぼれ。思わず“あるモノ”を差し出すと、女は困惑し…

「何時に出発かわからないって、どういうことだ!」
「申し訳ございません…」
「こっちは仕事で急いでるんだよ。せめて、時間くらいわかるだろう?」
「…いえ、時間もまだ…」

彼女は新人なのだろう、と彰正は思う。威圧的な乗客にうまく対応できず、今にも泣きだしそうな顔をしている。そのせいで、男性はさらに激昂しているように見えた。気の毒に思った彰正が、声をかけようと一歩踏み出したときだった。

「お客様―」

ひとりの女性がやってきて、スッとあいだに入った。

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