2万人以上のワーキングウーマンを取材してきたコラムニストの夏目かをるさんが、アラサー&アラフォー女性の恋愛・婚活にまつわるリアルストーリーをご紹介します。

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35歳を過ぎてから結婚相談所に入会するのは遅いのではないか。そう危惧する30代女性は少なくありません。でも実際には「35歳を超えたから、これからは婚活のプロに任せてみよう」と考える女性も多くいます。

36歳で初めて結婚相談所の門戸を叩いた瑠璃さん(仮名)もその一人。「もう36歳ですが大丈夫でしょうか」と仲人にこわごわと聞き、キャリアアップのために結婚よりも仕事を優先してきたことを打ち明けました。仲人は「もちろん大丈夫です」と瑠璃さんに安心してもらってから、婚活を頑張ろうと決めた理由を尋ねたそうです。 

「東京の百貨店の中にある高級品の販売部門で働くために、2年前に西日本から上京して一人暮らしをしています。必死で働いているうちに、自分の家族が欲しくなったんです」。そう答えた瑠璃さん。

前職も別の会社で販売員として働いていましたが、社内恋愛の末に、相手の男性から振られたという苦い経験をしたそうです。振られたというより、同期の女性に略奪されたといっていいでしょう。瑠璃さんが悔しいやら悲しいやらで仕事が手に着かなくなってしまった時に、友人から「キャリアアップしてもっとプロフェッショナルな仕事をして、その女を見返してやりなさい!」と叱咤激励され、東京の百貨店の求人に応募。老舗の高級店に勤務が決まったそうです。

「一人暮しをしてみると、私は意外に家庭が好きなことに気づきました。キャリアアップして精神的に落ち着くようになると『一人より二人、そして家族』と結婚に対して前向きになってきたんです」

瑠璃さんのようにキャリアアップしてから結婚に前向きになったという女性は多いです。瑠璃さんは35歳を過ぎてもあまり結婚を焦らなかったことが幸いしたようです。

「地元の友達から、『男は若い女が好きだから、同年代の男性からのオファーは難しいんじゃないの?』と心配されました。でも私はあくまでも同年代にこだわりました。年の差カップルが話題になりましたけど、それは芸能人や著名人ならではのこと。一般のカップルは圧倒的に同年代が多いんじゃないかしら。価値観を共有しやすいですからね」

年が離れた男性が苦手ということもあって、瑠璃さんは、仲人に「同年代」を希望。仲人は「あなたの希望に叶うように進めましょう」と承諾したそうです。

ネットで大々的に行っている結婚相談所は、会員数が多くいろいろな方との出会いが期待できそうです。また仲人同士の交流を通じて、それぞれが抱えている会員をカップリングさせるという方法もあります。個人で結婚相談所をやっている仲人は、大手や中堅の結婚相談所と連携して婚活を推進するところが多いようです。

「仲人の方が親切で実績もあるので、お任せしました」と瑠璃さん。初めてのお見合いは1歳年上のサラリーマンでした。「とても賑やかな方で、私を飽きさせないように気を遣ってくれました。販売員の私がまるでお客さんになったみたい。とても居心地が良かったんです」
ただ久しぶりのデートだったため、緊張していたせいか最初のお見合いの相手は「良い人」止まりだったそうです。

「改めて結婚って、どんなものだろうと自問自答しました」
それまでは恋愛の延長線上にあると思っていた結婚。互いに好き同士だから、嫌われるようなことをしないだろうと思っていた瑠璃さんでしたが、好き同士で結婚した友達の夫婦が最近喧嘩していることを知って、恋愛結婚の落とし穴を感じたそうです。

「好きで結婚すると、『きっと夫がこうしてくれるに違いない』と期待してしまう気がします。夫も『妻なんだからこうやするべき』と自分で作り上げた理想に妻を当てはめようとする。それが友達の夫婦の喧嘩の原因です」
一方見合いは「結婚相手を探す」ことが互いの共通の到達点だから、「一緒に暮らしていけるかどうか」というのが大きいことに気づいたと瑠璃さん。

「そこに恋愛感情ってあるのかな?と思いました。元カレのことで悔しい出来事があったので、恋愛は面倒くさいと感じながら、一方で恋愛感情がないというのも寂しいとも思ったんです」
そんな瑠璃さんの迷いを払しょくするように、最初のお見合いの男性が積極的にデートに誘います。2度3度と会っているうちに、男性が信念を持っていたりリードしてくれるなどの一面を知り、頼もしさを感じるようになりました。

「相手にだんだんと好感を持つようになりました。男性の方は私を気に入ってくれているみたいで。仲人さんからも『いい感じね』と言われたりして」
ところがサラリーマンの男性と百貨店勤務の自分とでは、休みが合わないのが気になってきたそうです。思い切ってそのことを打ち明けると「有休をとるから」と歩み寄ってくれたのです。

「男性の年間の有給休暇の日数はわかりませんが、でも私の不安を取り除きたいという気持ちが伝わってきて、嬉しくなりました」
この人となら一緒にやっていける。安心した瑠璃さんは見合いから一か月も経たないうちに男性のプロポーズを受けたそうです。

「やってあげたい」「大切にしたい」という気持ちが伝わると、互いに歩み寄れますね。歩み寄れるのは、結婚に限らず人間関係をスムーズにさせるコミュニケーションの大事な要。

年を重ねてからのカップルは、相手に対する期待を押し付けないという大人の結婚観を持っていることも強みといえます。

理想を押しつけることのない相手と巡り会いたいですね。

文/夏目かをる  取材協力/池津和子(婚活倶楽部 JustMeet-A代表)