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ローカルグルメから、世界に名を馳せる超高級レストランまで、ありとあらゆるジャンルの食文化が交差する食の都・香港。いま香港で、一般主婦からプロの料理人、セレブリティまで、香港グルマンから絶大な人気を得ている女性シェフがいる。グレース・チョイさんだ。

グレースさんが香港で展開している会員制の隠れ家レストラン「CHOY CHOY KITCHEN」(チョイ チョイ キッチン)は、1日数組の限られたゲストに対して、伝統的な香港の家庭料理とおもてなしを提供するレストラン。著名シェフや香港セレブリティがお忍びでこぞって通いつめ、一般客は予約することすら叶わないと噂だ。CNN 香港プライベートキッチン10選に選出され、グレースさん自身の初出版のレシピ本は、2019年のグルマン世界料理本賞を受賞。Facebookファン数は50万人を超える。そんな”香港 隠れ家レストランの女王”がプロデュースする予約制レストラン「CHOY CHOY KITCHEN」が、3月22日(金)に西麻布にオープンした。

(写真上)同店のスペシャリテであるチキンの丸焼き「ポーチド ソイソース チキン」

同店のスペシャリテであるチキンの丸焼き「Poached Soy Sauce Chicken」(写真トップ、右)は、体験したゲストが全員絶賛するという一番人気。オリジナル醤油ソースに浸しじっくりと仕上げられ、食べると口の中でほろっと肉がほぐれる。やわらかな肉と甘みのある醤油ソースが絶妙なコンビネーション。これだけで、白飯がいくらでも進みそうだ。濃厚過ぎず、とがり過ぎず、この秘伝のソースからはやさしさと温かみが感じられる。まるでグレースさんの人柄がそのまま現れているかのよう。なるほど確かに、家庭料理の本質とは、ひとの温もりが感じられるところにあるはずだ。

著名シェフや香港のセレブリティが通うレストラン”からの絢爛豪華なイメージとは裏腹に、グレースさんの料理は素材の美味しさを生かした香港の家庭料理だ。「私の母も仕事をしていましたがとても料理が上手でした。多忙な彼女から調理こそ教えてもらうことはできませんでしたが、”料理は大切な人へ作るもの”という、料理人として最も大切なことを教えられました。」と、心和ませる笑顔をみせた。”まごころを込めておもてなしをしたい”、そのためには料理人として、食材の鮮度をはじめ、旬を見極める確かな目を養うことに時間をかけて、日々研究を重ねてきたという。食材選びには余念がない。このチキンの丸焼きも、地元香港の市場では当たり前のように売っている、一度も冷凍されていない新鮮なチキンを調達するのに苦労した。

日本に出店するにあたり彼女が最も苦心した点も、やはり食材の調達に関することで、食材の質と旬を見極める自分の感覚を、同じようにスタッフに共有することだったという。そもそも旬という概念が薄いと思われがちな中華料理なのだが、グレースさんは自ら早朝市場に出向き、旬の食材を選び、その日の料理をつくる。だからメニューはお任せコースのみ。調理に化学調味料など使用せず、彼女らしいセンスでアレンジを加え、素材の美味しさを巧みに引き出した料理は、滋味深く、食べ飽きない味がする。香港グルマンたちが何度も足を運びたくなるのも分かる気がする。

2品目にご紹介するシグネチャーメニューは「Choysignature Stewed」(写真下左)。濃厚な旨みを持つブリスケット(牛の肩ばら肉)と大根を合わせた香港を代表する料理のひとつ。シンプルな一品だが、アレンジの巧みさとセンス、素材そのものの味を活かすグレース流中華料理をよく体感できる。料理が運ばれてくると、八角や柑橘の皮のかぐわしい香りが食欲をそそる。使用されているのは、国産牛肉と、大根は国産のもの。牛肉のサシから溶け出した旨みがたっぷりのスープの中で牛肉と大根が調和する。伝統的な中華料理でありながら、お母さんがつくる和食の大根の煮物に通じる、どこか懐かしさを覚えた。

最後にご紹介するのは、香港人が最も愛するといって過言ではない蒸し魚料理「Traditional Steamed Seasnal fish」(写真上右)だ。その日は、鯛にネギやハーブを乗せて、熱々のごま油を注いだ。皿の上で完成するネギ油のソースが、ふっくらとした鯛の身の淡白さを払拭して絶品料理に仕立て上げる。ちなみに「CHOY CHOY KITCHEN」では、大皿料理を取り分けるスタイルで提供する。和気あいあいと食事を愉しみたいシーンに選びたい一軒だ。

店内は、西麻布らしいシンプルモダンな雰囲気ながらこじんまりとしていて、まるで友人宅を訪れたかのような居心地の良さを感じさせる。カウンターとテーブル席があるが、入るとまず白い大理石のシェフズカウンターが目に入る。席に着いてみると、調理場が丸見え。キッチンは客席より少し高い位置に設えられて設えられていて、どの客席からもシェフの手元が見える。ライブステージのようにスポットライトを当てられたそのシェフズキッチンで、一体どんな料理が生まれるのかと期待が高まる。そんなワクワク感をゲストに与えてくれるのもグレースさんのおもてなしの形だ。

(写真)西麻布のシェフズカウンターに立つグレース・チョイシェフ。10年前まではエリートOLだったが、幼少の頃からの料理好きという想いから一念発起してシェフへ転身。香港に開店すると瞬く間に脚光を浴びた。そんな人気者のグレースさんだが、気さくな人柄も魅力だ。

伝統的な中華料理のレシピに旬を大切にした自然素材を使い、まごころを込めてゲストをもてなす、そんな中華料理のレストランを東京で、それがグレースさんの夢だったという。それは東京に来て訪れる中華料理店は東京ナイズされていて、彼女の考える中華料理の真髄を伝える店がそう多くはないと思ったためだ。香港では会員制だが、ここ西麻布では予約をすれば誰でも彼女の料理が食べられる。旬の食材の美味しさと、まごころのこもった家庭料理を求める気持ちは、きっと万国共通のはずである。

料理写真/Alice Ngan


「CHOY CHOY KITCHEN」(チョイ チョイ キッチン)

所在地:東京都港区西麻布1‐11‐13
Tel:03-6447-0252
営業時間:17:00〜23:00(ドリンク L.O. 22:00)
定休日:土曜日・日曜日・祝日
席数:22席(シェフズカウンター10席、テーブル 12席)
メニュー:お任せコースのみ(15,000円〜)完全予約制
アクセス:西麻布交差点から徒歩3分ほどのところ、六本木寄りに坂を上がった路地先の建物1階
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