カラフルにペイントされたホールを中心に、ドミトリーやキッチン、リビングなどがある

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一度泊まるとリピートせずにはいられない、と言われる宿がある。

千歳空港から空港連絡バスで約70分。豊平川沿いのシティホテル前で下車し、徒歩7分の便利な立地

それが、23歳の若者3人が作り上げた「waya」。社会人経験もノウハウも資金もない彼らが、夢とたくさんの仲間に支えられ、札幌市豊平区にゲストハウスを開業したのは2014年11月のこと。ファンの多くは、3人と世代の近い若者たちだ。

wayaがたくさんの人を引きつけるのは、単に安く泊まれるから、ではない。国際色豊かなゲスト、併設のバーに集う地域住民、スタッフの誰もが、ごく自然に交流を楽しむアットホームな雰囲気と居心地の良さにあるらしい。誰もが「ただいま」と帰ってきたくなる宿は、どんな風に生まれたのだろう。その魅力を探りにwayaを訪ねた。

場所は賑やかな国道から1本中に入った、住宅や企業の事務所が並ぶ落ち着いた通り。ブラウンに塗装された外観が、周囲と異なる存在感を放っている。1階は誰でも利用できるバー、宿の機能は2階に集約され、ドミトリーはもちろん、ゲストたちがくつろぐ一部畳敷きのリビングや自由に使える共用キッチンなど、必要なスペックが使い勝手よく収まっている。

壁には、廃材を上手に活用した装飾やカラフルなペイントが施され、手作りなのに何だかおしゃれ。

「築60年の古民家なので、内装はもちろん、屋根も天井もあらゆるところを修繕しなければならなくて大変でした」そう話すのは、宿の運営を担当する木村高志さん。東京の大学在学中に出会った河嶋峻さん、柴田涼平さんの3人で起業し、札幌へ移住してゲストハウスを立ち上げた。

きっかけは、「河嶋の地元、道東の別海町を東京の若者に知ってもらおうと企画したツアーでした」と木村さん。元気がなくなってきた故郷を応援したいと、自主企画でツアーを実施。そこで都会の若者と地元の人が交流を楽しむ様子を目の当たりにし、「旅を通じていろいろな人が出会う場を作りたい」と、3人の挑戦が始まった。

ところが、いきなり壁にぶちあたる。物件を探すため不動産会社を回ったが、誰も大学卒業したての若者を相手にしてくれないのだ。卒業まで3人で必死にお金を貯めたが、開業にはさらに銀行で借入もしなくては…。

普通なら諦めるかもしれない状況でも、3人は違った。自力で物件を見つけようと手分けして街を見て歩き、商店街に空き物件を紹介してもらえるよう直談判。出来ることは何でもやろうと駆け回った。

行動力もさることながら、彼らがすごいのは活動のプロセスを逐一ブログやfacebookで発信し続け、想いに共感するサポーターを増やしていったこと。必死過ぎる3人の様子を見た人から、1人、また1人と応援の声が上がり始めたのだ。

そしてついに、豊平区で古民家を借りられることになった。とはいえ建物はかなり老朽化し、大規模な修繕・改修費が必要な状態。クラウドファンディングで支援を呼びかけると、異例のスピードで90人以上が名乗りを上げてくれた。これも自分たちの熱い想いと夢を、ていねいに発信し続けてきた成果だった。

「プロに頼らず、出来る限り自分たちの手で」と細々と始めた改装には、友人や地域住民など延べ300人ものボランティアが参加してくれるまでに。土日返上で手伝ってくれた人、人手の足りない平日に来てくれた人。必死に夢を追う姿を見た近隣住民までも、「よかったらこれ食べて」と食事を差し入れてくれたり、「何か手伝えることはないか」と力を貸してくれた。

こうして完成したwayaのオープニングパーティーには100人がお祝いに駆けつけた。オープン後も、支援してくれた人々がその後を気にかけて泊まりに来たり、周囲に勧めるなどして、仲間が仲間を呼んでいく。

大切にしてきた「人と人のつながり」が、彼ら自身を支える財産になっている。

wayaの宿泊客は8割が外国人。1階のバーは、世界中からやってくるゲストと地域住民の国際交流の場になっており、スポーツ観戦や映画鑑賞、音楽ライブなど月に数回イベントも開催。友達の家に遊びに行くような感覚で、外国人と地元の人が肩を並べて楽しんでいる。

「今働いているNY出身のアニルは、元々お客さん。徒歩で3か月かけ日本縦断している途中に立ち寄り、気に入ったからと旅を終えて戻ってきてくれたんです」と木村さん。1泊のはずが何日も連泊したり、お客さんとして利用した人がスタッフに仲間入りしたり。居心地が良いという何よりの証だ。

旅先に「ただいま」といえる宿があるって、何だかうれしい。お気に入りの宿に泊まるため、スタッフに会うために札幌へ。そんな旅に出たくなる。

札幌ゲストハウスwaya ■住所:札幌市豊平区豊平2-4-1-43 ■電話:070・6607・0762 ■時間:in16:00〜22:00/out11:00、バー19:00〜23:30(LO23:15) ■料金:1人1泊ドミトリー2800円〜(北海道ウォーカー・加藤和代)