日差しが強くなると、紫外線による肌のダメージを防ぐ化粧品に目が行きがちですが、何やら朝の化粧のりがよくない感じは否めません。管理栄養士の西山和子さんは、「肌のトラブルは化粧品だけで防げるものではありません。食事や睡眠、気温や気圧など環境の変化による自律神経のバランスの乱れも大きな要因だと考えられます。肌の再生に必要な栄養素が不足していませんか」と話します。詳しいお話を伺いました。

皮膚(ひふ)の再生力を高める6つの栄養素に注目

はじめに西山さんは、肌と栄養素の関係についてこう話します。

「皮膚の再生力は、細胞の新陳代謝が活発であるほど高くなります。不規則な食生活や偏食、極端なダイエットなどで栄養のバランスが悪くなると、さまざまな栄養素が不足し、細胞の代謝がスムーズに行われず、老化が進みます。美しい肌を保つには、皮膚の再生に必要な栄養素を食事で補う必要があります」

では、皮膚の再生に欠かせない栄養素にはどんなものがあるのでしょうか。西山さんに代表的な6つの栄養素とその働きを教えていただきました。

(1)ビタミンA……皮膚や粘膜の細胞の代謝を促す

ビタミンAは皮膚や粘膜の細胞の代謝に必要となる栄養素です。これが不足すると、皮膚の細胞の代謝がスムーズに行われなくなるため、ガサガサになります。

ビタミンAを多く含む食材……ニンジン、西洋カボチャ、ウナギなど

(2)ビタミンC……しみ、そばかすを防ぐ

肌の主要な成分となっているタンパク質を「コラーゲン」と言います。ビタミンCが不足するとこのコラーゲンの合成がうまくいかなくなります。また、ビタミンCそのものにも抗酸化作用があり、しみやそばかすの原因となるメラニンという黒色の色素の合成を抑制する働きがあります。

ビタミンCを多く含む食材……赤ピーマン、ブロッコリー、ゴーヤ、キウイフルーツなど

(3)ビタミンE……血流を促す

ビタミンEは、細胞膜の酸化を防ぐ「抗酸化作用」で知られますが、血液を血管の末端まで行き渡らせる働きもあります。血液は酸素や栄養素を運ぶので、血流が促進されると肌の新陳代謝に欠かせない栄養素が細胞にスムーズに届けられ、肌のダメージからの回復力が向上します。

ビタミンEを多く含む食材……アーモンド、西洋カボチャ、アボカド、ハマチ、ウナギなど

(4)タンパク質……皮膚をつくるもとになる

皮膚はタンパク質でできているので、タンパク質が不足すると皮膚の再生の力は衰えます。すると、老化、くすみ、肌荒れなどさまざまな肌トラブルをまねきます。

タンパク質を多く含む食材……肉、魚、卵、大豆製品、乳製品など

(5)ビタミンB2……タンパク質を合成する

(4)で説明したように、タンパク質は皮膚の再生に重要ですが、そのタンパク質の合成に作用するのがビタミンB2です。ビタミンB2は体内で蓄積されにくく、不足するとタンパク質の合成力が弱まり、肌のトラブルにつながります。また、不足した場合、小鼻のまわりに脂のぶつぶつが多くできると言われています。

ビタミンB2を多く含む食材……レバー、牛乳、卵、アーモンドなど

(6)亜鉛……皮膚の再生に欠かせない

新陳代謝に必要な酵素の多くが亜鉛を成分にしているため、亜鉛は皮膚の細胞の再生に大きく関わります。亜鉛が不足すると、皮膚の表面がカサつく、色がくすむなどで活力が衰え、また、貧血やめまい、免疫力の低下など全身の病気にもつながります。

亜鉛を多く含む食材……牡蠣(かき)、豚レバー、タラコ、ゴマなど

「ゴーヤチャンプルー」には6つの栄養素が含まれる

では、これらの栄養素を含むメニューが気になるところです。スーパーやコンビニで買える総菜、また、簡単に自炊もできるメニューを西山さんに教えてもらいましょう。

「ご紹介した6つの栄養素のほぼ全部がとれるのが、『レバニラ炒め』と『ゴーヤチャンプルー』です。

レバニラ炒めはスタミナ食と言われるように、前述の6つの栄養素のほかに糖質をエネルギーに代謝する働きがあるビタミンB1を豊富に含みます。

ゴーヤには、ビタミンCが豊富に含まれています。ゴーヤのビタミンCは加熱に強く、炒めてもほとんど失われません。

また、ビタミンA、C、Eを効率的にとるには、緑黄色野菜のサラダがいいでしょう。

さらに、タンパク質とビタミンB2は、鳥レバーの串焼きでとれます」

調理をする場合について、西山さんはこうアドバイスを加えます。

「レバニラ炒めとゴーヤチャンプルーは、皮膚の細胞を活性化する料理の代表として覚えておくといいでしょう。

調理をするときには、ビタミンAが豊富なにんじんを加えてください。また、仕上げにゴマかゴマ油をふりかけるとよいでしょう。ゴマには亜鉛のほか、セサミンやセサモリン、ゴマ油になるとセサミノールやセサモールといった抗酸化物質が含まれており、老化予防の働きをします」

最後に西山さんは、肌の健康のために食事を見直すことについて、こうアドバイスを加えます。

「ヒトの細胞は食べたものに含まれる栄養素によって、再生する力を得ます。美しい肌を食事で保つことは、同時に、全身の健康づくりになると言えます。この点が化粧品でのケアとは大きく異なります。体の内側から体全体のケアを目指して、日々の食生活を見直しましょう」

このごろ肌がガサガサしているなあと感じたら、それは食事を見直すサインだと言えそうです。ビタミンとタンパク質、亜鉛を意識してとり、皮膚の新陳代謝、再生力を高めたいものです。

取材・文 小山田遥/ユンブル