セカイサンポに出かけたイシコさんが綴る紀行エッセイ『世界一周ひとりメシ』
"散歩に出かけること"の目的は、ずばり"ぶらりとすること"である。散歩するのに難を感じるなんて人は、そうそういないはずだ。ところが、"世界一周の旅に出かける"となるとどうだろう。途端にあれやこれやと支度をし出したり、念入りに旅先の観光スポットを物色し始めてしまうのではないだろうか。以前、veritaで"waperitivo"の連載をしていたイシコさんが2008年にスタートした"セカイサンポ"。ちょっと街をぶらりとしてみる散歩感覚そのままに、各国の滞在期間は一週間というルールのもとに世界中の街を渡り歩くこのプロジェクト。雑誌『散歩の達人』で連載をしているイシコさんならではの、ぶらりモードはインドやネパール、フィンランド、チリをはじめとする異国の街でも健在だ。帰国したイシコさんが、旅中の体験をまとめた紀行エッセイ『世界一周ひとりメシ』が2012年7月4日に満を持して刊行された。この一冊には、初めて訪れる街をガイドブックなしに気負うことなく自由気ままに楽しむ、そんなイシコさんの散歩のスタイルがそこはかとなく感じられる。
写真上:メコン川沿いの屋台は夕涼みにはいいが、ひとりメシの屋台選びはハードルが高い。
タイトルからも分かる通り、世界一周の旅に出かけたイシコさんは当然ながら各地でひとり飯をすることになった。ところが自身は、実はひとりでぶらりと旅に出かけるのを好みながらもひとりで飲食店に入って食事をとることが苦手なんだという。イシコさんはそれを「酢豚は好きだけれど、酢豚の中に入っているパイナップルは苦手なのと同じことである」と本書の中で語っている。数年前から「おひとりさま」という言葉が流行したように、男性に限らずverita世代の女性たちですら今やひとりでランチやディナーを楽しむことに抵抗がなくなったという方も多いのではないだろうか。ところがこれが土地勘もなく、見ず知らずの海外ともなれば、やはり話は違う。ガイドブックに載っていない現地のレストランのドアを叩くのには相当の勇気がいるはずだ。"セカイサンポ"という大それた旅に出かけた割には、人見知りに加えて、場所見知りをするイシコさんがハラハラ、ドキドキしながら異国の地で店を選んでひとり飯している姿にはどこか親しみが感じられ、私たちの心の奥に潜んでいる「ひとり飯苦手症」までがうっかり呼び起こされて「ああそれ、分かる分かる」と頷きながら、思わず笑みがこぼれてしまう。
写真左上:物売りから買い食いしたいが、なかなか声をかけられない…。
ある時は、食堂のおばさんの笑顔につられて入ったマレーシアの食堂で、それほど美味しくもないのになぜか通いつめてしまううちに現地の人々と交わした心の交流の様子が。またある時は、フランス語圏であることをすっかり忘れて立ち寄ったブリュッセルの小洒落た立ち飲み屋で、しどろもどろになりながらしゃべる英語とボディランゲージを交えてなんとか白ワインと食事にありつけたエピソードなど、一見"何の変哲もない"ような出来事の断片一つひとつが旅のリアルを伝えてくる。決して思うがまま器用に旅を進められているわけではないけれども、行く先々で出逢った異国の人々や、日本では到底お目にかかることのできそうにない驚きの料理の数々に、一喜一憂したり、感心したりしながら、淡々と一人旅を続けていく四十男、イシコさん。ページを繰るたびに、そんなイシコさんの旅のよもやま話につい引き込まれ、だんだんこちらまでもがハラハラさせられながら、見知らぬ街をぶらりと歩くイシコさんに自分を重ねて、次第にほっこりとした安らぎを感じるような不思議な感覚にとらわれていく。
写真右上:プノンペンで出された生ビール。東南アジアでビールに氷が添えられることは珍しいことではないがストローは初めて。
イシコさんは本書の刊行に寄せて「本書は手にとった方が優しい笑顔になれるよう心をこめて綴りました。」という。33の小話に綴られた世界一周の旅のかけらには、一期一会の思い出を振り返るイシコさんの愛しげな眼差しが向けられている。本書を読み終わった後、その話の続きが知りたくなって、今度は自分が世界一周の旅に思わず出かけたくなってしまうのは私だけだろうか。日常にたゆたう"散歩"の感覚を、非日常のオンパレードである世界の国々にまで押し広げてしまったイシコさんのセカイサンポ。日常の見えない縛りから解放されて、いつ、どんな場所でも、ありのままの自分でいられることの身軽さを、本書を手に取りぜひあなたも感じてみて欲しい。
イシコさんの連載waperitivoのバックナンバーはこちら
イシコさん『世界一周ひとりメシ』読者プレゼント(5名様)
『世界一周ひとりメシ 』 (幻冬舎文庫)
639円(本体価格)
verita会員登録のうえ、以下のリンク先ページよりご応募ください。
※厳正な抽選の上、当選者には賞品の発送をもって発表にかえさせて頂きます。
※プレゼント応募期間:2012年7月11日(水)〜8月7日(火)まで
タイトルからも分かる通り、世界一周の旅に出かけたイシコさんは当然ながら各地でひとり飯をすることになった。ところが自身は、実はひとりでぶらりと旅に出かけるのを好みながらもひとりで飲食店に入って食事をとることが苦手なんだという。イシコさんはそれを「酢豚は好きだけれど、酢豚の中に入っているパイナップルは苦手なのと同じことである」と本書の中で語っている。数年前から「おひとりさま」という言葉が流行したように、男性に限らずverita世代の女性たちですら今やひとりでランチやディナーを楽しむことに抵抗がなくなったという方も多いのではないだろうか。ところがこれが土地勘もなく、見ず知らずの海外ともなれば、やはり話は違う。ガイドブックに載っていない現地のレストランのドアを叩くのには相当の勇気がいるはずだ。"セカイサンポ"という大それた旅に出かけた割には、人見知りに加えて、場所見知りをするイシコさんがハラハラ、ドキドキしながら異国の地で店を選んでひとり飯している姿にはどこか親しみが感じられ、私たちの心の奥に潜んでいる「ひとり飯苦手症」までがうっかり呼び起こされて「ああそれ、分かる分かる」と頷きながら、思わず笑みがこぼれてしまう。
写真左上:物売りから買い食いしたいが、なかなか声をかけられない…。
ある時は、食堂のおばさんの笑顔につられて入ったマレーシアの食堂で、それほど美味しくもないのになぜか通いつめてしまううちに現地の人々と交わした心の交流の様子が。またある時は、フランス語圏であることをすっかり忘れて立ち寄ったブリュッセルの小洒落た立ち飲み屋で、しどろもどろになりながらしゃべる英語とボディランゲージを交えてなんとか白ワインと食事にありつけたエピソードなど、一見"何の変哲もない"ような出来事の断片一つひとつが旅のリアルを伝えてくる。決して思うがまま器用に旅を進められているわけではないけれども、行く先々で出逢った異国の人々や、日本では到底お目にかかることのできそうにない驚きの料理の数々に、一喜一憂したり、感心したりしながら、淡々と一人旅を続けていく四十男、イシコさん。ページを繰るたびに、そんなイシコさんの旅のよもやま話につい引き込まれ、だんだんこちらまでもがハラハラさせられながら、見知らぬ街をぶらりと歩くイシコさんに自分を重ねて、次第にほっこりとした安らぎを感じるような不思議な感覚にとらわれていく。
写真右上:プノンペンで出された生ビール。東南アジアでビールに氷が添えられることは珍しいことではないがストローは初めて。
イシコさんは本書の刊行に寄せて「本書は手にとった方が優しい笑顔になれるよう心をこめて綴りました。」という。33の小話に綴られた世界一周の旅のかけらには、一期一会の思い出を振り返るイシコさんの愛しげな眼差しが向けられている。本書を読み終わった後、その話の続きが知りたくなって、今度は自分が世界一周の旅に思わず出かけたくなってしまうのは私だけだろうか。日常にたゆたう"散歩"の感覚を、非日常のオンパレードである世界の国々にまで押し広げてしまったイシコさんのセカイサンポ。日常の見えない縛りから解放されて、いつ、どんな場所でも、ありのままの自分でいられることの身軽さを、本書を手に取りぜひあなたも感じてみて欲しい。
イシコさんの連載waperitivoのバックナンバーはこちら
イシコさん『世界一周ひとりメシ』読者プレゼント(5名様)
『世界一周ひとりメシ 』 (幻冬舎文庫)
639円(本体価格)
verita会員登録のうえ、以下のリンク先ページよりご応募ください。
※厳正な抽選の上、当選者には賞品の発送をもって発表にかえさせて頂きます。
※プレゼント応募期間:2012年7月11日(水)〜8月7日(火)まで
イシコ
1968年、岐阜県生まれ。静岡大学理工学部卒。女性ファッション誌、Webマガジン編集長を経て、2003年(有 」ホワイトマンプロジェクト設立。50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動、環境教育などを行い話題となる。また、一カ月九十食寿司を食べ続けるブログや世界の美容室で髪の毛を切るエッセイなど独特な体験を元にした執筆活動多数。
イシコのセカイサンポ
ホワイトマン公式Webサイト