【漫画】大切な人との別れを経て、新たな一歩を踏み出すまで。夕焼けに背中を押された主人公の思いとは【作者に聞く】
大切な人との生活が、必ずしも末永く続いていくわけではない。ヤングアニマルZEROで「ノラの家」を連載するほか、SNS上でも数々の漫画を投稿している夕海(@___yummi___)さんがマグコミに掲載しているショート漫画「夕焼けは晴れ」は、まさにパートナーとの別れを決意した女性の姿を描いている。夕海さんが本作に込めた想い、「自分を大切にする」ことの意味について話を聞いてみた。
【漫画】本編を読む
主人公の女性は、5年間共に過ごしたパートナーと別れた。自分から振ったのだから、「未練なんかじゃない」と、己に言い聞かせる日々。しかし、ふとした折に相手の面影がよぎり、そのたびに心がざわめく。そんな折、ある景色を見て主人公の気持ちが晴れやかになる。
傷を隠し持つ人間の葛藤を描いた「ひみつの花園さん」(第69回ちばてつや賞・大賞受賞作)など、幅広い作品を描いている夕海さん。本作を描いたきっかけついて、次のように語る。
「仕事で悩んでいたときに出先で夕焼けの富士山を見かけたんですが、その景色を見てる間は頭の中のモヤモヤを忘れることができて、帰るときには少し心が楽になっていたので、そのときのことを描きたいなと思ったのがきっかけでした。綺麗な景色を見て悩みがちっぽけに思えたり心洗われるような経験って、わりと共感してもらえるかなと思って」
別れた恋人に対する思いとして、「5年間一番近くにいて、親友でもあったし、家族でもあったのに」との台詞がある。この言葉から相手との絆の深さがうかがえるが、「別れ」を軸に置いて描こうと思ったのはなぜだったのか。
「過去に近しい経験をしたことがあって、そのときはこれより交際期間が短かったんですが、もしそれが長年付き合った、"恋人"の一言では表せない大きな存在だったら、と今になって想像したときに、なんだか想像だけで泣けてきてしまって。泣けるということは自分が感情を乗せて描ける題材なんだと思い、今回のテーマに選びました」
恋人との別れ、配偶者との離婚など、パートナーとの離別は珍しい体験ではない。だが、だからこそつらさや葛藤を口にできない人も多く、自分の気持ちを溜め込んでしまいがちだ。本作に対する読者さんからの反響についてうかがった。
「前向きな感情を受け取ってくださった方が多かったようで、よかったなと思いました。同じような経験がある方や、断ち切れない未練がある方などに、頑張ろうって言えるような作品にできたらいいなと思っていたので」
夕海さんご自身の恋愛感と本作の主人公の思いには、重なる部分があったのだろうか。
「年齢によって恋愛観も変わってきましたが、今の自分がもし同じ状況に陥ったら、というふうに感情移入しながら描いていたので、重ねていたとは思います」
自宅から恋人の面影を払拭すべく、断捨離をはじめた主人公は、次のような思いを語る。
「私が私のこと、大事にする道を選んだのだから」
この台詞に勇気をもらえた人が、たくさんいたのではないだろうか。
「個人的には、こういう状況で別れを選ぶことが必ずしも正解ではないと思っているので、選択内容どうこうではなく“自分のことを大事にできる選択を自分でした”という姿を見せたかったという思いがありました。その人が悩んだ結果自分のための選択をできたのだとしたら、それが正解になるし、きっと大丈夫だと思っています」
未練なんかじゃない。でも、面影を消せない。そんな主人公の心理描写が、夕焼けをきっかけに晴れやかに変化していく様は、同じような体験を持つ人の背中を優しく押してくれる。最後に、夕海さんから読者へのメッセージをいただいた。
「モヤモヤが晴れないときは、綺麗な景色を観に行ったり、断捨離してスッキリしましょう!皆さんの明日が晴れますように」
取材・文=碧月はる
主人公の女性は、5年間共に過ごしたパートナーと別れた。自分から振ったのだから、「未練なんかじゃない」と、己に言い聞かせる日々。しかし、ふとした折に相手の面影がよぎり、そのたびに心がざわめく。そんな折、ある景色を見て主人公の気持ちが晴れやかになる。
傷を隠し持つ人間の葛藤を描いた「ひみつの花園さん」(第69回ちばてつや賞・大賞受賞作)など、幅広い作品を描いている夕海さん。本作を描いたきっかけついて、次のように語る。
「仕事で悩んでいたときに出先で夕焼けの富士山を見かけたんですが、その景色を見てる間は頭の中のモヤモヤを忘れることができて、帰るときには少し心が楽になっていたので、そのときのことを描きたいなと思ったのがきっかけでした。綺麗な景色を見て悩みがちっぽけに思えたり心洗われるような経験って、わりと共感してもらえるかなと思って」
別れた恋人に対する思いとして、「5年間一番近くにいて、親友でもあったし、家族でもあったのに」との台詞がある。この言葉から相手との絆の深さがうかがえるが、「別れ」を軸に置いて描こうと思ったのはなぜだったのか。
「過去に近しい経験をしたことがあって、そのときはこれより交際期間が短かったんですが、もしそれが長年付き合った、"恋人"の一言では表せない大きな存在だったら、と今になって想像したときに、なんだか想像だけで泣けてきてしまって。泣けるということは自分が感情を乗せて描ける題材なんだと思い、今回のテーマに選びました」
恋人との別れ、配偶者との離婚など、パートナーとの離別は珍しい体験ではない。だが、だからこそつらさや葛藤を口にできない人も多く、自分の気持ちを溜め込んでしまいがちだ。本作に対する読者さんからの反響についてうかがった。
「前向きな感情を受け取ってくださった方が多かったようで、よかったなと思いました。同じような経験がある方や、断ち切れない未練がある方などに、頑張ろうって言えるような作品にできたらいいなと思っていたので」
夕海さんご自身の恋愛感と本作の主人公の思いには、重なる部分があったのだろうか。
「年齢によって恋愛観も変わってきましたが、今の自分がもし同じ状況に陥ったら、というふうに感情移入しながら描いていたので、重ねていたとは思います」
自宅から恋人の面影を払拭すべく、断捨離をはじめた主人公は、次のような思いを語る。
「私が私のこと、大事にする道を選んだのだから」
この台詞に勇気をもらえた人が、たくさんいたのではないだろうか。
「個人的には、こういう状況で別れを選ぶことが必ずしも正解ではないと思っているので、選択内容どうこうではなく“自分のことを大事にできる選択を自分でした”という姿を見せたかったという思いがありました。その人が悩んだ結果自分のための選択をできたのだとしたら、それが正解になるし、きっと大丈夫だと思っています」
未練なんかじゃない。でも、面影を消せない。そんな主人公の心理描写が、夕焼けをきっかけに晴れやかに変化していく様は、同じような体験を持つ人の背中を優しく押してくれる。最後に、夕海さんから読者へのメッセージをいただいた。
「モヤモヤが晴れないときは、綺麗な景色を観に行ったり、断捨離してスッキリしましょう!皆さんの明日が晴れますように」
取材・文=碧月はる